名簿を五十音順に並べたくて、Excelの「ふりがなの表示/非表示」ボタンを押した。なのに漢字の上には何も出ない……。
こんな症状に心当たりはありませんか。
- ボタンを押してもセルの上にふりがなが出ない
- 「ひらがな」に設定したのにカタカナのまま
- PHONETIC関数で漢字がそのまま返る、または空白になる
締め切り前の名簿作りで手が止まると焦りますよね。原因がわからないまま再入力を始めると、数百件の名簿なら半日仕事になってしまいます。
でも安心してください。これらの症状は、ほぼ1つの仕組みで説明がつきます。この記事では切り分け表で原因を絞り込み、手元のデータに合った直し方を選べるようにまとめました。
PHONETIC関数の構文や五十音順ソートの作り方は、PHONETIC関数の使い方で解説しています。ここでは「思いどおりに動かないときの原因と対処」に絞ってお届けします。
対応バージョン: 手順は Windows デスクトップ版 Excel(Microsoft 365 / 2021 / 2019 など)が基準です。Excel for the web はふりがなの表示・非表示はできますが、編集はできません。VBA も Web 版では実行できません。Mac 版はふりがなの編集に Option+Shift+↑ を使います。ボタンの配置は版によって異なることがあります。
まず知っておきたい:Excelのふりがなは入力時のIMEの読みを覚えているだけ
Excelのふりがなは、漢字から読みを調べて付けているわけではありません。セルに入力したときの、IME(日本語入力システム)の読みを記録しているだけなんです。
たとえば「いで」と打って「井出」に変換すると、セルは「イデ」という読みも一緒に覚えます。ふりがなボタンもPHONETIC関数も、この記録を表示したり取り出したりしているにすぎません。
公式ヘルプでも、ふりがなが自動で付くのは日本語版Excelで新しく入力したデータだけとされています。他のプログラムで作ったファイルには、自動では付きません。
この仕組みを踏まえて、症状ごとの原因と最初の確認ポイントを表にしました。
| 症状 | 考えられる主な原因 | 最初に確認すること |
|---|---|---|
| ボタンを押しても何も出ない | 貼り付け・CSV由来で読みの記録が無い | データをどこから持ってきたか |
| 一部のセルだけ出ない | 数値・日付・英数字だけのセルの可能性 | セルの中身が日本語か |
| ボタン自体が見当たらない | 日本語の編集言語が有効になっていない | Officeの言語設定 |
| ひらがなにしてもカタカナのまま | 数式セルに設定している可能性 | 設定したセルが数式かどうか |
| ひらがなとカタカナが混ざる | 設定した範囲が一部だけ | 設定時の選択範囲 |
| PHONETICで漢字が返る | 参照元に読みの記録が無い可能性 | データの出どころ |
| PHONETICが空白になる | 参照先が空・数値など | 参照先セルの中身 |
どこから手を付けるか迷ったら、次の順で確認すると早いです。
- データの出どころ: 自分でIME入力したのか、貼り付けやCSVなのか
- セルの中身: 日本語の文字か、数値・日付・数式か
- 設定したセル: ふりがなの設定を、読みを持つ参照元セルに行ったか
多くの場合、1つ目の確認で原因の見当がつくはず。順番に見ていきましょう。
ふりがなの表示/非表示ボタンを押しても何も出ない
Windows版では、ホームタブのフォントグループにある「ふりがなの表示/非表示」ボタンで表示を切り替えます。押しても漢字の上に何も出ないなら、次の3つを順に疑ってみてください。
原因1:コピペ・CSV・他システム由来でふりがな情報が無い
よくあるのがこのパターン。Webページや他のアプリからコピーした文字、CSVから取り込んだデータには、IMEの読みの記録がありません。
CSVは文字だけを保存するテキスト形式で、読みを持つ仕組みがないんです。基幹システムから書き出した顧客リストも、たいていこのケースに当てはまるでしょう。
記録が無い以上、表示ボタンを押しても出すものがありません。直し方は後半の「ふりがな情報が無いデータの直し方を選ぶ」で比較しています。
原因2:数値・日付・英数字だけのセル
ふりがなは日本語の読みを補うための機能です。数値や日付、英数字だけのセルでは、表示しても何も出ないことがあります。
名簿の一部の列だけ出ないときは、そのセルの中身を確かめてみてください。次の式で、数値かどうかを判定できます。
=ISNUMBER(A2)
TRUEなら数値です(日付も内部的には数値として扱われます)。社員番号や郵便番号の列なら、ふりがなが出なくても困ることはありません。
原因3:一部の文字だけ読みが無い/環境による差(版差)
表示はされるのに、一部の文字だけ読みが欠けていることもあります。セルに記録された読み自体が不完全なのかもしれません。後述のShift+Alt+↑で、記録されている読みを開いて確認してみてください。
ボタン自体が見つからないなら、環境の問題を疑いましょう。公式ヘルプによると、ふりがなのボタンを使うには日本語の編集言語を有効にする必要があります。Officeの言語設定を確認してみてください。
版によっても扱いが変わります。
- Windows版: ホーム > フォントグループのボタン。版によって配置や見た目が異なることがある
- Mac版: ホームタブのふりがなボタンから表示を切り替える
- Web版: 表示・非表示はできるが、ふりがなの編集はできない
ひらがなに設定してもカタカナのまま・半角カナで返る
ふりがなの種類は「ひらがな」「全角カタカナ」「半角カタカナ」の3つから選べます。ふりがなボタンの▼から「ふりがなの設定」を開き、「種類」で切り替える流れです。
設定したのに結果が変わらないときは、次の2点を確認してください。
原因1:数式セルに設定している(設定は参照元セルに行う)
PHONETIC関数でフリガナ列を作っている人に多いつまずき。数式が入ったフリガナ列を選んで「ひらがな」にしても、結果がカタカナのまま変わらないことがあります。
PHONETICが返すのは、参照元セルに記録された読みです。そのため種類の設定は、漢字を入力した参照元のセルに行うよう案内されるのが一般的。選んでいるセルが数式かどうかは、次の式で確かめられます。
=ISFORMULA(B2)
TRUEなら数式セルです。参照元(たとえば氏名が入ったA列)を選び直し、ふりがなの設定をやり直してみてください。
半角カナで返る場合も、参照元セルの種類が「半角カタカナ」になっていないかを見ましょう。結果を後から揃えたいなら、JIS関数で全角に、ASC関数で半角に変換する方法もあります。
原因2:選択範囲が一部だけで混在している
ひらがなとカタカナが行ごとに混ざっているなら、設定したときの選択範囲を確かめてみてください。ふりがなの設定は選択中のセルが対象なので、範囲が名簿の一部だけだった可能性があります。
対処は、参照元の列見出しをクリックして列全体を選ぶところから。そのうえで、もう一度ふりがなの設定で種類を選び直します。後から追加した行も含めて揃えたいときにも使える手順です。
PHONETICで漢字がそのまま返る・空白になる
PHONETIC関数は、参照したセルの読みの記録を取り出す関数です。記録が無いセルを参照したときの戻り値は、公式ヘルプに記載がありません。実際には漢字がそのまま返るケースが多いようです。原因の候補を、確認しやすい順に並べました。
確認順1:データの出どころ(IME入力か貼り付けかCSVか)
まずは、参照元の漢字がどこから来たかを思い出してみてください。自分でIME入力したデータなら読みの記録があります。一方、貼り付けやCSV由来のデータには記録がありません。
同じ列の中で、手入力した行と貼り付けた行が混ざっていることもあります。漢字が返る行だけ出どころが違わないか、数行見比べると判断しやすいでしょう。
確認順2:参照先セルの中身(空・数値・直書き文字列)
空白が返るときは、参照先のセルそのものを確認します。チェックしたいのは次の3点。
- 参照先が空のセルになっていないか(行ずれ・列ずれも含む)
- 数値や日付のセルを参照していないか
- 引数に文字列を直接書いていないか(PHONETICはセル参照で使うのが基本)
公式ヘルプによると、PHONETICを使うには地域設定が日本語・中国語・韓国語のいずれかである必要があります。離れた複数のセルを指定すると#N/Aになる点も覚えておきましょう。
確認順3:CSVで保存し直していないか
自分で入力したはずなのに漢字が返るなら、ファイルの保存形式を見てください。一度CSV形式で保存して開き直すと、読みの記録は残りません。CSVは文字だけを保存する形式だからです。
作業用のファイルは、Excelブック(.xlsx)で保存しておくと安心。CSVで読みが消える理由は、PHONETIC関数の使い方でも詳しく解説しています。
ふりがな情報が無いデータの直し方を選ぶ
読みの記録が無いデータを直す方法は、大きく4つ。件数と、読みの正確さをどこまで求めるかで選ぶと迷いません。
| 方法 | 向いている件数 | 読みの正確さ | 手間 |
|---|---|---|---|
| Shift+Alt+↑で編集 | 数件〜数十件 | 1件ずつ確認できる | 件数に比例して増える |
| 区切り位置で再付与 | 多い | 自動推測のため要確認 | 少ない |
| SetPhoneticマクロ | 多い | 自動推測のため要確認 | 少ない(VBEの操作あり) |
| 再入力・IME再変換 | 数件 | 入力した読みになる | 中程度 |
人名のように読みが何通りもある名簿では、一括で付けてからShift+Alt+↑で直す組み合わせが現実的でしょう。
Shift+Alt+↑(数件・読みを確実に)
セルを選んでShift+Alt+↑を押すと、ふりがなの編集状態になると広く紹介されています。リボンなら、ふりがなボタンの▼から「ふりがなの編集」を選んでもかまいません。
編集状態になったら、表示された読みを確かめます。違っていれば打ち直してEnterで確定しましょう。Mac版ではOption+Shift+↑が公式に案内されており、Web版ではふりがなの編集ができません。
区切り位置で再付与(件数が多いとき)
件数が多いときの選択肢として、「区切り位置」を使う方法があります。ただし公式には載っていない裏ワザ的な手順なので、効果が出るかは手元のファイルで試して判断してください。
- ふりがなを付けたい列を選択する
- データタブの「区切り位置」をクリックする
- 何も変更せずに「完了」を押す
付く読みは自動推測になるため、結果は必ず確認してください。うまく付かない場合は次のSetPhoneticを試しましょう。詳しい手順はPHONETIC関数の使い方で紹介しています。
SetPhoneticマクロ(VBAを1行だけ実行)
VBA(Excelを操作するプログラム)のSetPhoneticを使うと、選んだ範囲にまとめて読みを付けられます。マクロを書いた経験がなくても、実行するのは1行だけ。ちょっとむずかしく見えますが、やっていることはシンプルです。
- 読みを付けたいセル範囲を選択する
- Alt+F11でVBE(VBAの編集画面)を開く
- Ctrl+Gでイミディエイトウィンドウを表示する
- 次の1行を入力してEnterを押す
Selection.SetPhonetic
注意点は2つあります。公式リファレンスによると、SetPhoneticは範囲内の既存のふりがなを上書きします。手で直した読みも置き換わるので、実行前にファイルのコピーを取っておきましょう。
もう1つは読みの正確さ。公式にも精度についての記載はないため、人名などは結果を必ず確認してください。Web版ではVBAが使えないので、この方法はデスクトップ版限定です。
それでも読みが違うとき(再入力・IME再変換)
一括で付けた読みが違うセルは、Shift+Alt+↑でそのセルだけ直すのが手軽です。件数が少なければ、正しい読みで入力し直すのも確実な方法。
セルの文字を消し、正しい読みをIMEで打って変換すると、その読みが記録されます。珍しい読みの名前が変換候補に出ないときは、近い読みで入力してからShift+Alt+↑で読みだけ直しましょう。
まとめ:Excelでふりがなが表示されないときのチェックリストとFAQ
Excelのふりがなは、入力時のIMEの読みを記録しているだけ。症状が出たら、次の順で確認してみてください。
- データの出どころは貼り付けやCSVではないか
- セルの中身は日本語か(数値・日付・数式ではないか)
- ふりがなの設定は参照元セルに、必要な範囲全体で行ったか
- 読みが無ければ、件数に合わせて直し方を選ぶ
読みが揃ったら、SORTBY関数で五十音順に並べ替えられます。姓と名の分割など名簿の整形は、フラッシュフィルとPower Queryで名簿を整える方法も参考にしてみてください。
Q. Mac版やWeb版でもふりがなは表示できますか?
Mac版は、ホームタブのふりがなボタンから表示できます。編集はOption+Shift+↑で行うと公式に案内されています。
Web版は表示・非表示はできるものの、ふりがなの編集はできません。PHONETICの結果は、この記事では確認できていません。読みを整える作業は、編集できるデスクトップ版で行うのがおすすめ。
Q. ふりがなの文字が小さくて読みにくいときは?
「ふりがなの設定」のフォントタブで、ふりがなの文字サイズを変えられます。同じ画面の「配置」では、左揃え(既定)・中央揃え・均等割り付けなどから表示位置を選べます。
Q. 新しく追加した行だけふりがなが付かないのはなぜ?
追加した行を、別のファイルやシステムから貼り付けていないか確認してください。貼り付けたデータには読みの記録が無く、ふりがなは表示されません。PHONETICでも漢字のまま返る可能性があります。追加分だけ、この記事の直し方で読みを付けてあげましょう。
