「スプレッドシートでCRITBINOMという関数を見つけたけど、BINOM.INVと何が違うの?」「どちらを使えば正しい計算結果になるんだろう?」と迷ったことはありませんか。
結論から言うと、スプレッドシートのCRITBINOM関数はBINOM.INV関数の互換版で、計算結果は完全に同じです。 この記事ではCRITBINOM関数の構文と引数、品質管理やアンケートでの実務活用例まで解説します。BINOM.INV関数との使い分けもはっきりさせますよ。
スプレッドシートのCRITBINOM関数とは
CRITBINOM関数(読み方: クリットバイノム関数)は、Googleスプレッドシートで二項分布の逆関数を計算する互換関数です。累積確率を指定すると、その確率以上になる最小の成功回数を返してくれます。
関数名の「CRIT」はCritical(臨界値)、「BINOM」はBinomial(二項)の略です。「臨界となる二項分布の値」を返す関数、と覚えると意味と直結しますよ。
二項分布の逆関数とは「確率から回数を逆算する」計算のことです。たとえば次のような場面で活用できます。
- 不良品率2%の製品を500個検査したとき、99%の確率で不良品の上限は何個に収まるか
- 500人にアンケートを送ったとき、90%の確率で少なくとも何件は回収できるか
- 成約率30%の営業が月20件商談したとき、90%の確率で確実に取れる成約数の下限は何件か
NOTE
CRITBINOM関数はBINOM.INV関数の互換関数です。両者は計算アルゴリズムが同じで、結果も完全に一致します。Googleの公式ドキュメントではBINOM.INVが推奨されているので、新しく数式を書くときはBINOM.INVを選んでおきましょう。
なぜCRITBINOMとBINOM.INVの2つがあるのか
CRITBINOMはExcel 2007以前から使われていた古い関数名です。Excel 2010で統計関数の命名規則が整理され、「分布名.動詞」という形式(BINOM.INV、NORM.INV、CHISQ.INVなど)に統一されました。
Googleスプレッドシートは互換性のために両方をサポートしているので、古いExcelファイルをインポートしても数式が壊れない仕組みになっています。
CRITBINOM関数の書き方(構文と引数)
基本構文
=CRITBINOM(試行回数, 成功確率, 累積確率)
カッコの中に3つの引数を、カンマ区切りで指定します。
引数の意味
| 引数 | 必須/任意 | 値の範囲 | 説明 |
|---|---|---|---|
| 試行回数(trials) | 必須 | 0以上の整数 | 試行を繰り返す合計回数。小数を指定した場合は切り捨て |
| 成功確率(probability_s) | 必須 | 0以上1以下 | 各試行で成功する確率。50%なら0.5と入力 |
| 累積確率(alpha) | 必須 | 0より大きく1以下 | この確率以上になる最小の成功回数を求める基準値 |
引数の並びも意味も、BINOM.INV関数とまったく同じです。
TIP
累積確率に0.95を指定すると「95%の確率で収まる成功回数の上限」が返ります。品質管理で使われる95%信頼水準なら、そのまま0.95を入れればOKです。
戻り値の意味を正しく理解する
CRITBINOM関数が返すのは「累積確率P(X≤k) が指定したalpha以上になる、最小の整数k」です。
たとえば=CRITBINOM(10, 0.5, 0.95)が8を返すのは、「コインを10回投げて表が8回以下になる確率」が0.9893で初めて0.95を超えるためです。7回以下では0.9453で0.95に届かないので、関数は8を返します。
CRITBINOM関数の基本的な使い方
コインを10回投げる場面を想定します。成功確率は0.5(表が出る確率)です。
=CRITBINOM(10, 0.5, 0.5)
結果は 5 です。10回中5回はちょうど期待値(10×0.5)と一致します。
累積確率を変えた例です。
| 累積確率 | 数式 | 結果 | 意味 |
|---|---|---|---|
| 0.05 | =CRITBINOM(10, 0.5, 0.05) | 2 | 5%水準の下限 |
| 0.25 | =CRITBINOM(10, 0.5, 0.25) | 4 | 25%水準の境界値 |
| 0.5 | =CRITBINOM(10, 0.5, 0.5) | 5 | 50%水準(期待値付近) |
| 0.75 | =CRITBINOM(10, 0.5, 0.75) | 6 | 75%水準の境界値 |
| 0.95 | =CRITBINOM(10, 0.5, 0.95) | 8 | 95%水準の上限 |
実務活用パターン3選
パターン1: 品質管理で不良品の許容上限を求める
不良品率2%の製品を500個検査するとき、99%の確率で不良品がこの個数以下に収まる上限を求めます。
=CRITBINOM(500, 0.02, 0.99)
結果は 18 です。500個中18個以下に不良品が収まる確率が99%という意味になります。検査ロットでこの数値を超える不良品が出たら「異常」と判断する基準作りに使えますよ。
パターン2: アンケート回収の見込み数を計算する
500人にアンケートを送り、回答率の見込みが40%のとき、90%の確率で少なくとも何件回収できるかを求めます。下限を知りたいときは、累積確率に小さい値(0.1)を指定するのがポイントです。
=CRITBINOM(500, 0.4, 0.1)
結果は 186 です。「90%の確率で186件以上は回収できる見込み」と解釈できます。
パターン3: 営業の成約見込み数を計算する
成約率30%の営業担当者が月20件商談する場合、90%の確率で確実に取れる成約数の下限を求めます。
=CRITBINOM(20, 0.3, 0.1)
結果は 3 です。期待値は20×0.3=6件ですが、90%の確率で3件以上は成約する計算になります。月次の最低目標を設定する際の科学的な根拠として使えますよ。
BINOM.INV関数との違い・どちらを使うべき?
| 項目 | CRITBINOM | BINOM.INV |
|---|---|---|
| 種類 | 互換関数(旧バージョン) | 現行関数(推奨) |
| 構文 | =CRITBINOM(試行回数, 成功確率, 累積確率) | =BINOM.INV(試行回数, 成功確率, 累積確率) |
| 計算結果 | BINOM.INVと完全一致 | CRITBINOMと完全一致 |
| Googleの推奨 | 非推奨(互換のみ) | 推奨 |
新しく数式を書くときはBINOM.INVを使いましょう。 既存のスプレッドシートでCRITBINOMが使われている場合は、そのまま動き続けるので急いで書き換える必要はありません。
書き換えるなら、関数名を置き換えるだけでOKです。引数の数も並びも同じです。
=CRITBINOM(100, 0.05, 0.95) ← 互換関数
=BINOM.INV(100, 0.05, 0.95) ← 推奨関数(引数はそのまま)
TIP
スプレッドシートの「検索と置換」(Ctrl+H、Macは⌘+H)を使えば、シート内のCRITBINOMをBINOM.INVに一括で書き換えることもできますよ。
BINOM.DISTとの関係(順方向と逆方向)
CRITBINOM関数(=BINOM.INV関数)は、BINOM.DIST関数の逆関数にあたります。
| 関数 | 入力 | 出力 | 方向 |
|---|---|---|---|
| BINOM.DIST | 成功回数(x) | 累積確率(p) | 回数 → 確率 |
| CRITBINOM / BINOM.INV | 累積確率(p) | 成功回数(x) | 確率 → 回数 |
- 「5個以下になる確率は?」 → BINOM.DIST(回数がわかっていて確率を知りたい)
- 「95%に収まる上限は何個?」 → CRITBINOM / BINOM.INV(確率がわかっていて回数を知りたい)
よくあるエラーと対処法
| エラー | 原因 | 対処法 |
|---|---|---|
| #NUM! | 成功確率や累積確率が0〜1の範囲外 | 50%は「0.5」と指定する。「50」はエラー |
| #NUM! | 試行回数に負の値を指定 | 0以上の整数を指定する |
| #VALUE! | 引数に文字列が入っている | セル参照先が数値書式か確認する |
| #N/A | 引数の数が足りない | 3つの引数すべてを指定する |
よくある質問
CRITBINOMとBINOM.INVはどちらを使えばいいですか?
新しく数式を書くときはBINOM.INVを使いましょう。計算結果は同じですが、Googleの公式ドキュメントではBINOM.INVが推奨されています。既存のCRITBINOM数式はそのままで問題ありません。
累積確率(第3引数)に0.9を指定するとどういう意味ですか?
「この成功回数以下になる確率が、初めて90%以上になる最小の成功回数」を返します。品質管理の「90%の確率で収まる不良品の上限」を求めるときは0.9、99%の信頼水準なら0.99を指定します。
CRITBINOM関数で下限値を求めることはできますか?
直接「下限値」を返す引数はありませんが、累積確率に小さい値(例: 0.1)を指定することで「90%の確率でこの回数以上になる最小値」を求められます。上の「アンケート回収」のパターン2で解説した方法ですね。
まとめ
スプレッドシートのCRITBINOM関数は、二項分布の累積確率から成功回数を逆算する互換関数です。
- BINOM.INV関数の旧バージョンで、計算結果は完全に同じ
- 3つの引数(試行回数・成功確率・累積確率)を指定するだけで使える
- 品質管理の不良品許容上限、アンケート回収の見込み数、営業の最低成約数などに活用できる
- 新しく数式を書くときはBINOM.INVを使うのがおすすめ
- 既存のCRITBINOM数式はそのまま動くので、急いで書き換えなくてOK
