「CRITBINOMって関数を見つけたけど、BINOM.INVとどう違うの?」。スプレッドシートで統計関数を使おうとして、こんな疑問を持ったことはありませんか?
名前がよく似た関数が2つあると、どちらを使えばいいか迷いますよね。間違えたら計算結果が変わるのでは、と不安にもなります。
結論から言うと、CRITBINOM関数はBINOM.INV関数の互換バージョンです。この記事ではGoogleスプレッドシートでのCRITBINOM関数の使い方を、構文・引数から実務活用まで解説します。BINOM.INV関数との関係もはっきりさせますよ。
スプレッドシートのCRITBINOM関数とは
CRITBINOM関数(読み方: クリットバイノム関数)は、二項分布の逆関数を求める互換関数です。累積確率を指定すると、その確率以上になる最小の成功回数を返します。「CRIT」は「Critical(臨界)」、「BINOM」は「Binomial(二項)」の略です。
二項分布の逆関数とは「確率から回数を逆算する」計算のことです。たとえば次のような場面で使います。
- 不良品率5%の製品を100個検査して、95%の確率で収まる不良品の上限は何個か
- アンケートを500人に送って、90%の確率で少なくとも集まる回収数は何件か
- 成約率30%の営業が月20件商談して、確実にこの件数は取れるという下限
NOTE
CRITBINOM関数はBINOM.INV関数の互換関数です。計算結果は完全に同じですが、Googleの公式ドキュメントではBINOM.INVが推奨されています。新しく数式を書くときはBINOM.INVを使いましょう。
CRITBINOM関数の書き方(構文と引数)
基本構文
=CRITBINOM(試行回数, 成功確率, 累積確率)
カッコの中に3つの引数を指定します。
引数の意味
| 引数 | 必須/任意 | 説明 |
|---|---|---|
| 試行回数(trials) | 必須 | 試行の合計回数(0以上の整数) |
| 成功確率(probability_s) | 必須 | 各試行で成功する確率(0〜1の範囲) |
| 累積確率(alpha) | 必須 | この確率以上になる最小の成功回数を求める基準値(0〜1の範囲) |
引数の並びも意味も、BINOM.INV関数とまったく同じです。「何回やって」「成功率がいくつで」「何%に収めたいか」の流れで覚えると迷いにくいですよ。
TIP
累積確率に0.95を指定すると「95%の確率で収まる成功回数の上限」が返ります。品質管理の「95%信頼水準」なら、そのまま0.95を入れればOKです。
CRITBINOM関数の基本的な使い方
まずはシンプルな例で動きを確認しましょう。コインを10回投げる場面を想定します。成功確率は0.5(表が出る確率)です。
=CRITBINOM(10, 0.5, 0.5)
結果は5です。10回中5回はちょうど期待値(試行回数 x 成功確率)ですね。
累積確率を変えて、いくつかの値を見てみましょう。
| 累積確率 | 数式 | 結果 | 意味 |
|---|---|---|---|
| 0.05 | =CRITBINOM(10, 0.5, 0.05) | 2 | 5%水準の下限(これ以下は稀) |
| 0.25 | =CRITBINOM(10, 0.5, 0.25) | 4 | 25%水準の境界値 |
| 0.5 | =CRITBINOM(10, 0.5, 0.5) | 5 | 50%水準(期待値付近) |
| 0.75 | =CRITBINOM(10, 0.5, 0.75) | 6 | 75%水準の境界値 |
| 0.95 | =CRITBINOM(10, 0.5, 0.95) | 8 | 95%水準の上限(ほぼこの範囲内) |
累積確率が大きくなるほど、返される成功回数も大きくなります。「○%の確率で収まる上限を知りたい」ときは、目的の確率をそのまま第3引数に入れればOKですよ。
品質管理で不良品の許容上限を求める
不良品率2%の製品を500個検査するとき、99%の確率で不良品がこの個数以下に収まる上限を求めます。
=CRITBINOM(500, 0.02, 0.99)
結果は16です。500個中16個以下に不良品が収まる確率が99%ということです。この数値を品質基準にすれば、統計的な根拠をもって判断できますよね。
アンケート回収の見込み数を計算する
500人にアンケートを送り、回答率が40%のとき、90%の確率で少なくとも集まる件数を求めます。下限を知りたいときは、累積確率に小さい値(0.1)を指定します。
=CRITBINOM(500, 0.4, 0.1)
結果は186です。90%の確率で186件以上は回収できる見込みです。報告書に記載する回収見込みの根拠として使えますよ。
BINOM.INV関数との違い・どちらを使うべき?
CRITBINOM関数とBINOM.INV関数の関係を整理しましょう。
| 項目 | CRITBINOM | BINOM.INV |
|---|---|---|
| 種類 | 互換関数(旧バージョン) | 現行関数(推奨) |
| 構文 | =CRITBINOM(試行回数, 成功確率, 累積確率) | =BINOM.INV(試行回数, 成功確率, 累積確率) |
| 引数 | 3つ(同一) | 3つ(同一) |
| 計算結果 | 同じ | 同じ |
| Googleの推奨 | 非推奨 | 推奨 |
結論としては、新しく数式を書くときはBINOM.INVを使いましょう。理由は次の3つです。
- Googleの公式ドキュメントでBINOM.INVが推奨されている
- ExcelでもBINOM.INVが標準で、互換性が高い
- 将来的にCRITBINOMが廃止される可能性がゼロではない
ただし、既存のスプレッドシートでCRITBINOMが使われている場合、慌てて書き換える必要はありません。計算結果は同じなので、そのまま動き続けますよ。
TIP
BINOM.INV関数の詳しい使い方(実務活用3パターン、BINOM.DISTとの逆関数の関係など)はBINOM.INV関数の解説記事で詳しく紹介しています。
CRITBINOMからBINOM.INVへの書き換え
既存の数式を書き換えるなら、関数名を置き換えるだけです。引数はそのままで問題ありません。
=CRITBINOM(100, 0.05, 0.95) ← 互換関数
=BINOM.INV(100, 0.05, 0.95) ← 推奨関数(引数はそのまま)
スプレッドシートの「検索と置換」機能(Ctrl+H)を使えば、シート内のCRITBINOMをBINOM.INVに一括で書き換えることもできますよ。
BINOM.DISTとの関係(順方向と逆方向)
CRITBINOM関数(= BINOM.INV関数)は、BINOM.DIST関数の逆関数にあたります。2つの関数は「入力と出力が逆」の関係です。
| 関数 | 入力 | 出力 | 方向 |
|---|---|---|---|
| BINOM.DIST | 成功回数(x) | 確率(p) | 回数 → 確率 |
| CRITBINOM / BINOM.INV | 確率(p) | 成功回数(x) | 確率 → 回数 |
使い分けのポイントは次のとおりです。
- 「5個以下になる確率は?」 → BINOM.DIST(回数がわかっていて確率を知りたい)
- 「95%に収まる上限は何個?」 → CRITBINOM / BINOM.INV(確率がわかっていて回数を知りたい)
どちらの方向で計算したいかで使い分けてくださいね。
よくあるエラーと対処法
CRITBINOM関数でつまずきやすいポイントをまとめました。
#NUM! エラー: 成功確率や累積確率が0〜1の範囲外
成功確率と累積確率は、どちらも0以上1以下の値でなければなりません。範囲外の値を指定すると#NUM!エラーになります。
=CRITBINOM(10, -0.1, 0.5) ← #NUM! エラー(成功確率が負の値)
=CRITBINOM(10, 0.5, 1.5) ← #NUM! エラー(累積確率が1を超えている)
50%を指定するなら「50」ではなく「0.5」と入力してくださいね。
#NUM! エラー: 試行回数に負の値を指定
試行回数は0以上の整数が必要です。負の値を指定するとエラーになります。小数を指定した場合は、小数部分が切り捨てられます。
=CRITBINOM(-5, 0.3, 0.5) ← #NUM! エラー
=CRITBINOM(10.7, 0.3, 0.5) ← 10として計算される(エラーにはならない)
#VALUE! エラー: 引数に文字列が入っている
数値であるべき引数にテキストが入ると#VALUE!エラーになります。セル参照を使うときは、参照先が数値になっているか確認しましょう。
関連する二項分布関数の一覧
二項分布に関連するスプレッドシートの関数を一覧にまとめました。目的に応じて使い分けてください。
| 関数 | 用途 | 使うタイミング |
|---|---|---|
| CRITBINOM | 累積確率から成功回数を逆算(互換) | BINOM.INVの旧バージョンを使いたいとき |
| BINOM.INV | 累積確率から成功回数を逆算(推奨) | 「○%に収まる上限は何回?」 |
| BINOM.DIST | 成功回数から確率を求める(推奨) | 「x回以下になる確率は?」 |
| BINOMDIST | 成功回数から確率を求める(互換) | BINOM.DISTの旧バージョンを使いたいとき |
新しく数式を書くときは「推奨」と書かれた関数を選んでおけば間違いありません。互換関数は既存ファイルの読み解きに役立ちますよ。
まとめ
CRITBINOM関数は、二項分布の累積確率から成功回数を逆算する互換関数です。
- BINOM.INV関数の旧バージョンで、計算結果は完全に同じ
- 3つの引数(試行回数・成功確率・累積確率)を指定するだけで使える
- 品質管理の不良品許容上限やアンケート回収の見込み数の算出に活用できる
- 新しく数式を書くときはBINOM.INVを使うのがおすすめ
- 既存のCRITBINOM数式はそのまま動くので、急いで書き換えなくてOK
- 成功確率・累積確率は0〜1の範囲内で指定すること
- BINOM.DIST関数とは「逆関数」の関係。確率→回数の逆算ならCRITBINOM / BINOM.INV
CRITBINOMとBINOM.INVで迷ったら、BINOM.INVを選んでおけば間違いありません。既存ファイルのCRITBINOMも問題なく動くので、安心してくださいね。
