ExcelのLOGNORMDIST関数の使い方|対数正規分布を求める(旧: LOGNORM.DIST)
「取引先からもらったExcelファイルに =LOGNORMDIST(...) という見慣れない関数があった」。あるいは「統計の課題で対数正規分布を計算したい」。そんなとき活躍するのが LOGNORMDIST関数です。
LOGNORMDIST関数は、「対数正規分布」の確率を計算する関数です。対数正規分布は、株価リターン・所得分布・部品寿命など、現実世界でよく現れます。Excel 2010以降では LOGNORM.DIST という新関数に置き換わっていますが、互換性関数として今でも使えます。
この記事では、LOGNORMDIST関数の構文と対数正規分布の概念をまず整理します。そのうえで、新関数LOGNORM.DISTとの違いや株価分析・品質管理での実例まで、丁寧に解説していきます。
LOGNORMDIST関数とは?
LOGNORMDIST関数(読み方:ログノーマル・ディストリビューション)は、対数正規分布の累積分布関数を返すExcel関数です。関数名は「LOG(対数)+ NORMAL(正規)+ DIST(分布)」に由来します。
確率変数 X の自然対数 ln(X) が正規分布に従うとき、X は対数正規分布に従う、と表現します。要するに「対数を取ると正規分布になる分布」です。
LOGNORMDIST関数は Excel 2010 で LOGNORM.DIST 関数に置き換えられた旧関数です。ただし、互換性関数として現在のExcelでも引き続き利用できます。
LOGNORMDIST関数の構文と引数
LOGNORMDIST関数の構文は次のとおりです。
=LOGNORMDIST(x, mean, standard_dev)
| 引数 | 説明 | 必須 |
|---|---|---|
| x | 評価する値(必ず正の数) | 必須 |
| mean | ln(x) の平均値(対数を取った後の正規分布の平均) | 必須 |
| standard_dev | ln(x) の標準偏差(正の数) | 必須 |
ここで注意してほしいのは、mean と standard_dev は「x そのもの」の値ではない点です。「ln(x)(自然対数を取った値)」の平均・標準偏差を渡します。元データを対数変換してから、その統計量を計算してください。
LOGNORMDIST関数は累積分布関数(CDF)の値のみを返します。確率密度関数(PDF)は計算できません。確率密度も使いたい場合は、後述するLOGNORM.DIST関数を使う必要があります。
対数正規分布とは?正規分布との違い
対数正規分布は、正の値しか取らず、右側に長い裾を引く歪んだ分布です。たとえば株価・所得・部品寿命など、「マイナスにならないが、たまに極端に大きい値が出る」現象によく当てはまります。
正規分布との違いを表にまとめます。
| 項目 | 正規分布 | 対数正規分布 |
|---|---|---|
| 定義域 | 全実数(マイナスもOK) | 正の数のみ(x > 0) |
| 形状 | 左右対称(ベル型) | 右に裾を引く(歪み正) |
| 平均と中央値 | 一致 | 平均 > 中央値 |
| 該当する現象 | 身長・測定誤差 | 株価・所得・寿命 |
| Excel関数 | NORM.DIST | LOGNORM.DIST |
正規分布は身長や測定誤差のように「平均値の周りに対称に散らばる」データに使います。一方、対数正規分布は「ゼロより小さくならず、たまに大きな値が出る」データに使うのが基本です。
LOGNORMDIST関数の基本的な使い方
実際にLOGNORMDIST関数を使ってみましょう。値が x = 4、対数の平均 mean = 1.0、対数の標準偏差 standard_dev = 0.5 とします。このときの累積確率を求めます。
=LOGNORMDIST(4, 1, 0.5)
この式は約 0.7197 を返します。これは「対数正規分布から取り出した値が 4 以下になる確率は約 71.97%」という意味です。
セル参照を使う場合は次のようになります。
=LOGNORMDIST(A2, B2, C2)
A2 にデータの値、B2 に ln(x) の平均、C2 に ln(x) の標準偏差を入れて使います。
実務での活用例
株価リターンの分析
金融の世界では、株価のリターン(ln(P_t / P_t-1))が正規分布に従うと仮定するモデルがよく使われます。これは株価そのものが対数正規分布に従うことを意味します。
たとえば銘柄Aの月次対数リターンが平均0.5%、標準偏差5%の正規分布に従うとします。1ヶ月後の株価が現在の1.1倍以下になる確率は次の式で求められます。
=LOGNORMDIST(1.1, 0.005, 0.05)
結果は約 0.970 となり、「97.0%の確率で株価は1.1倍以下に収まる」と読み取れます。
部品寿命の分析
製造業では、LED照明やベアリングなどの部品寿命が対数正規分布に従うケースが多くあります。LED照明の寿命について、自然対数が平均9.5、標準偏差0.3の正規分布に従うとします。10,000時間以内に故障する確率は次の式で求められます。
=LOGNORMDIST(10000, 9.5, 0.3)
この値が大きいほど早期故障の確率が高い、と判断できます。
所得分布の分析
世帯年収などの所得分布も、対数正規分布で近似されることが知られています。地域住民の年収のlnが平均15.5、標準偏差0.7に従うとき、年収500万円以下の世帯割合は次の式で求められます。
=LOGNORMDIST(5000000, 15.5, 0.7)
格差分析や市場規模の推計に活用できます。
LOGNORM.DIST関数との違いと使い分け
Excel 2010以降では、新関数として LOGNORM.DIST関数が追加されました。構文は次のとおりです。
=LOGNORM.DIST(x, mean, standard_dev, cumulative)
LOGNORMDIST関数との違いは、第4引数 cumulative が追加された点です。
| cumulative | 計算内容 |
|---|---|
| TRUE | 累積分布関数(CDF)。x 以下になる確率 |
| FALSE | 確率密度関数(PDF)。x 地点での確率密度 |
つまり、LOGNORM.DIST関数では累積分布と確率密度の両方を1つの関数で扱えます。LOGNORMDIST関数は累積分布しか返せないので、確率密度を使いたい場合はLOGNORM.DIST一択です。
使い分けの目安は次のとおりです。
- Excel 2010以降を使っている: LOGNORM.DIST関数を推奨(新関数の方が機能豊富)
- 確率密度関数(PDF)も使いたい: LOGNORM.DIST関数必須
- 古いExcelとの互換性が必要: LOGNORMDIST関数を継続使用
新規でファイルを作るなら、特別な理由がない限りLOGNORM.DIST関数を選ぶのがおすすめです。
よくあるエラーと対処法
| エラー | 原因 | 対処法 |
|---|---|---|
| #NUM! | x ≦ 0 を指定した | x には必ず正の数を指定する |
| #NUM! | standard_dev ≦ 0 を指定した | standard_dev には正の数を指定する |
| #VALUE! | 引数に文字列が入っている | 数値またはセル参照に修正する |
特に #NUM! エラーは、x や standard_dev に 0 や負の値が入ったときに発生します。対数正規分布は正の数の範囲でしか定義されないため、データの整合性を確認してください。
データを対数変換するときに =LN(値) 関数を使えば、正規分布の平均・標準偏差を求める前処理が簡単になります。
まとめ
LOGNORMDIST関数は、対数正規分布の累積分布関数を計算する旧関数です。要点を整理します。
- 構文:
=LOGNORMDIST(x, mean, standard_dev)で累積確率を返す - 引数の注意: mean と standard_dev は「ln(x)」の統計量(元データそのものではない)
- 対数正規分布の特徴: 正の値のみ・右に裾を引く・株価や所得などに頻出
- 新関数LOGNORM.DIST: 第4引数 cumulative で累積/確率密度を切り替え可能
- 使い分け: Excel 2010以降ならLOGNORM.DIST、確率密度も使うなら新関数必須
対数正規分布は統計分析や金融モデリングで欠かせません。LOGNORMDIST関数とLOGNORM.DIST関数の関係をしっかり押さえておきましょう。
関連する統計関数も合わせて活用してみてください。
