スプレッドシートで「双曲線余割(ハイパボリックコセカント)」を計算したいとき、どの関数を使えばいいか迷っていませんか?
双曲線関数の中でもコセカント系はなじみが薄くて、書き方がわからないですよね。
そんなときに使うのがCSCH関数です。=CSCH(値) と書くだけで、双曲線余割をかんたんに求められます。数学的にはSINH関数の逆数にあたる関数ですよ。
この記事では基本の書き方から、SINH関数との関係、CSC関数との違い、引数0でエラーになる注意点まで紹介します。
スプレッドシートのCSCH関数とは?
CSCH関数(読み方: ハイパボリックコセカント関数)は、指定した値の双曲線余割を返す関数です。名前は英語の「Hyperbolic Cosecant」の略に由来します。
たとえば =CSCH(1) と入力すると「0.85091…」が返ります。これが1の双曲線余割の値です。
CSCH関数の特徴は、SINH関数の逆数であることです。SINH(x)の値が大きくなるにつれて、CSCH(x)は0に近づいていきます。
CSCH関数にできることをまとめると、次のとおりです。
- 指定した値の双曲線余割を返す
- SINH関数の逆数として検算に使う
- EXP関数を使った定義式で計算する
- 物理学・工学の計算に活用する
NOTE
CSCH関数はGoogleスプレッドシートの全バージョンで使えます。Excelとも完全に互換性があるので、ファイルのやり取りでも安心です。
CSCH関数の書き方(構文と引数)
基本構文
=CSCH(値)
カッコの中に、双曲線余割を求めたい数値を指定します。
引数の説明
| 引数 | 必須/任意 | 説明 |
|---|---|---|
| 値 | 必須 | 双曲線余割を求めたい実数値(0以外) |
引数は1つだけです。CSC関数とは違い、ラジアンへの変換は不要です。そのまま数値を渡せばOKですよ。
ただし 引数に0は指定できません。CSCH(0)は数学的に定義されないため、エラーになります。
TIP
CSC関数は引数に「角度(ラジアン)」を取りますが、CSCH関数は「任意の実数値(0以外)」を取ります。RADIANS関数での変換は必要ありません。
CSCH関数の基本的な使い方
代表的な値でCSCH関数の動きを確認してみましょう。
正の値を渡す
=CSCH(1)
結果は「0.85091…」です。
もう少し大きい値も見てみます。
=CSCH(2)
結果は「0.27572…」です。値が大きくなるにつれて0に近づいていくのがポイントですね。
負の値を渡す
=CSCH(-1)
結果は「-0.85091…」です。CSCH(1)の符号を反転した値になっています。
これはCSCH関数が「奇関数」だからです。CSCH(-x) = -CSCH(x) が常に成り立ちます。
0を渡すとエラーになる
=CSCH(0)
この数式は #DIV/0! エラーになります。CSCH = 1/SINH で、SINH(0) = 0 なので「0で割る」ことになるためです。
これはCSCH関数で一番注意が必要なポイントですよ。
まとめると
代表的な入力値と結果を一覧にまとめます。
| 数式 | 結果 | 備考 |
|---|---|---|
| =CSCH(0) | #DIV/0! | 0は定義されない |
| =CSCH(0.5) | 1.91903… | 0に近いと大きい値 |
| =CSCH(1) | 0.85091… | 基本値 |
| =CSCH(2) | 0.27572… | 0に近づく |
| =CSCH(5) | 0.01348… | ほぼ0 |
| =CSCH(-1) | -0.85091… | 奇関数(符号反転) |
| =CSCH(-2) | -0.27572… | 0に近づく |
値が大きくなると0に近づきます。ただし、ちょうど0にはなりません。
セル参照を使う
もちろんセル参照も使えます。A1セルに数値が入っていれば、次のように書きます。
=CSCH(A1)
A列に複数の値を入れて、B列にCSCH関数を並べれば一括計算もできますよ。
CSCH関数の数学的な仕組み
定義式とSINH関数での検算
CSCH関数は数学的に次のように定義されています。
CSCH(x) = 1 / SINH(x)
つまり、SINH関数(双曲線正弦)の逆数です。スプレッドシートでは次のように検算できます。
=1/SINH(A1)
この式とCSCH(A1)は同じ結果を返します。実際にA1に「1」を入れて確認してみましょう。
| 数式 | 結果 |
|---|---|
| =CSCH(1) | 0.85091… |
| =1/SINH(1) | 0.85091… |
どちらも同じ値ですね。CSCH関数がないバージョンでも =1/SINH() で代用できますよ。
EXP関数を使った定義式
CSCH関数はEXP関数でも表現できます。
CSCH(x) = 2 / (e^x - e^(-x))
スプレッドシートの式にすると、次のとおりです。
=2/(EXP(A1)-EXP(-A1))
この式がCSCH(A1)と同じ結果になることも確認できます。CSCH関数の結果が正しいか不安なときは、EXP関数を使った式で検算してみてください。
TIP
EXP関数はネイピア数eのべき乗を返す関数です。詳しくはEXP関数の記事をご覧ください。
CSC関数との違い
名前は似ていますが、CSC関数とCSCH関数はまったく別の関数です。
| 項目 | CSC関数 | CSCH関数 |
|---|---|---|
| 正式名称 | 余割(コセカント) | 双曲線余割(ハイパボリックコセカント) |
| 数学的な背景 | 円(三角関数) | 双曲線(双曲線関数) |
| 引数 | 角度(ラジアン) | 任意の実数値(0以外) |
| RADIANS変換 | 必要 | 不要 |
| 周期性 | あり(2piごとに繰り返す) | なし |
| 逆数の関係 | 1/SIN(x) | 1/SINH(x) |
| 0での挙動 | #DIV/0!(SIN(0)=0) | #DIV/0!(SINH(0)=0) |
一番大きな違いは「数学的な背景」です。CSC関数は三角関数で円に基づく計算をしますが、CSCH関数は双曲線関数で双曲線に基づく計算をします。
もうひとつの違いは「引数」です。CSC関数はラジアン単位の角度を受け取るのでRADIANS関数での変換が必要ですが、CSCH関数はそのまま数値を渡せます。
共通点もあります。どちらも引数が0のときは #DIV/0! エラーになります。CSC(0)はSIN(0)=0、CSCH(0)はSINH(0)=0 が原因で、いずれも「0で割る」ことになるためです。
詳しくはCSC関数の記事も参考にしてみてください。
よくあるエラーと対処法
CSCH関数でよくあるトラブルをまとめます。
| 症状 | 原因 | 対処法 |
|---|---|---|
| #DIV/0! エラー | 引数に0を渡した | 0以外の値を指定する。IF関数で0を除外する |
| #VALUE! エラー | 引数に文字列を渡した | 数値またはセル参照を指定する |
| CSC関数と結果が違う | 関数を間違えている | CSCは三角関数、CSCHは双曲線関数。目的に合った方を使う |
| 結果が0に近すぎる | 入力値が大きすぎる | CSCH関数は値が大きくなると0に近づく性質がある |
引数に0を渡したとき
=CSCH(0)
結果は #DIV/0! エラーです。CSCH(0)は数学的に定義されないため、このエラーは正しい動作です。
セルの値が0になる可能性がある場合は、IF関数で事前にチェックしましょう。
=IF(A1=0, "定義なし", CSCH(A1))
この式なら、A1が0のときはエラーにならず「定義なし」と表示されます。
文字列を渡したとき
=CSCH("abc")
結果は #VALUE! エラーです。引数には必ず数値を渡してください。セル参照の場合は、参照先が数値であることを確認しましょう。
結果が0に近すぎるとき
=CSCH(10)
結果は「0.00009…」で、ほぼ0です。CSCH関数は入力が大きくなると急速に0に近づくため、差が見えにくくなることがあります。
この性質はCSCH関数の正常な動作です。細かい差が必要な場合は、入力値の範囲を小さくするか、別の関数を検討してみてください。
似た関数との違い・使い分け
| 関数 | 動作 | 引数 | 用途 |
|---|---|---|---|
| CSCH | 双曲線余割を返す | 実数値(0以外) | SINH関数の逆数計算 |
| SINH | 双曲線正弦を返す | 実数値 | カテナリー曲線・物理計算 |
| COSH | 双曲線余弦を返す | 実数値 | カテナリー曲線のy座標 |
| TANH | 双曲線正接を返す | 実数値 | 正規化・スコアリング |
| COTH | 双曲線余接を返す | 実数値(0以外) | TANH関数の逆数計算 |
| CSC | 余割(コセカント)を返す | 角度(ラジアン) | 三角関数・斜辺の長さの計算 |
| EXP | eのべき乗を返す | 指数 | 指数関数・成長率計算 |
SINH・COSH・TANH・COTH・CSCHは双曲線関数の仲間です。三角関数のSIN・COS・TAN・COT・CSCに対応する関係ですね。
双曲線関数の間には次の関係が成り立ちます。
CSCH(x) = 1 / SINH(x)
COTH(x) = COSH(x) / SINH(x) = 1 / TANH(x)
COSH(x)^2 - SINH(x)^2 = 1
三角関数では CSC = 1/SIN ですが、双曲線関数でも CSCH = 1/SINH と同じ構造になっています。
まとめ
CSCH関数は、指定した値の双曲線余割(ハイパボリックコセカント)を返す関数です。
ポイントを整理します。
- 構文は
=CSCH(値)で、引数は0以外の実数値 - CSC関数と違い、ラジアン変換は不要
- CSCH(1)=0.85091 が代表的な値
- 定義式は 1/SINH(x) で、SINH関数の逆数
- 引数に0を渡すと #DIV/0! エラーになるので注意
- 値が大きくなると0に近づく
- COTH関数と同様に、双曲線関数の逆数系として覚えておくと便利
まずは =CSCH(1) で0.85091が返ることを確認してみてください。
