スプレッドシートで「双曲線正弦(ハイパボリックサイン)」を計算したいとき、どの関数を使えばいいか迷っていませんか?
数学の教科書では見かけるけど、スプレッドシートでの書き方がわからないですよね。
そんなときに使うのがSINH関数です。=SINH(値) と書くだけで、双曲線正弦をかんたんに求められます。
この記事では基本の書き方から、EXP関数との関係、SIN関数との違い、カテナリー曲線への応用まで紹介します。
スプレッドシートのSINH関数とは?
SINH関数(読み方: ハイパボリックサイン関数)は、指定した値の双曲線正弦を返す関数です。名前は英語の「Hyperbolic Sine」の略に由来します。
たとえば =SINH(1) と入力すると「1.1752…」が返ります。これが1の双曲線正弦の値です。
双曲線正弦は、三角関数のサイン(正弦)とは異なる関数です。三角関数が「円」の性質をもとにしているのに対して、双曲線関数は「双曲線」の性質をもとにしています。
SINH関数にできることをまとめると、次のとおりです。
- 指定した値の双曲線正弦を返す
- カテナリー曲線(吊り橋や電線の形状)の計算に使う
- EXP関数と組み合わせて検算する
- 物理学・工学の計算に活用する
NOTE
SINH関数はGoogleスプレッドシートの全バージョンで使えます。Excelとも完全に互換性があるので、ファイルのやり取りでも安心です。
SINH関数の書き方(構文と引数)
基本構文
=SINH(値)
カッコの中に、双曲線正弦を求めたい数値を指定します。
引数の説明
| 引数 | 必須/任意 | 説明 |
|---|---|---|
| 値 | 必須 | 双曲線正弦を求めたい実数値 |
引数は1つだけです。SIN関数とは違い、ラジアンへの変換は不要です。そのまま数値を渡せばOKですよ。
TIP
SIN関数は引数に「角度(ラジアン)」を取りますが、SINH関数は「任意の実数値」を取ります。RADIANS関数での変換は必要ありません。
SINH関数の基本的な使い方
代表的な値でSINH関数の動きを確認してみましょう。
正の値を渡す
=SINH(1)
結果は「1.17520…」です。
もう少し大きい値も見てみます。
=SINH(2)
結果は「3.62686…」です。値が大きくなると結果も急激に大きくなるのが特徴ですね。
0を渡す
=SINH(0)
結果は「0」です。SINH(0)=0 は覚えておくと便利です。
負の値を渡す
=SINH(-1)
結果は「-1.17520…」です。SINH(1)の符号を反転した値になっています。
これはSINH関数が「奇関数」だからです。SINH(-x) = -SINH(x) が常に成り立ちます。
まとめると
代表的な入力値と結果を一覧にまとめます。
| 数式 | 結果 | 備考 |
|---|---|---|
| =SINH(0) | 0 | 原点は0 |
| =SINH(1) | 1.17520… | 基本値 |
| =SINH(2) | 3.62686… | 急激に増加 |
| =SINH(-1) | -1.17520… | 奇関数(符号反転) |
| =SINH(-2) | -3.62686… | 奇関数(符号反転) |
| =SINH(5) | 74.20321… | 大きい値は急増 |
値が大きくなるほど結果も急激に増えていくのがわかりますね。
セル参照を使う
もちろんセル参照も使えます。A1セルに数値が入っていれば、次のように書きます。
=SINH(A1)
A列に複数の値を入れて、B列にSINH関数を並べれば一括計算もできますよ。
SINH関数の数学的な仕組み
定義式とEXP関数での検算
SINH関数は数学的に次のように定義されています。
SINH(x) = (e^x - e^(-x)) / 2
ここでeはネイピア数(約2.71828)です。スプレッドシートではEXP関数を使って同じ計算ができます。
=(EXP(A1) - EXP(-A1)) / 2
この式とSINH(A1)は同じ結果を返します。実際にA1に「1」を入れて確認してみましょう。
| 数式 | 結果 |
|---|---|
| =SINH(1) | 1.17520… |
| =(EXP(1)-EXP(-1))/2 | 1.17520… |
どちらも同じ値ですね。SINH関数の結果が正しいか不安なときは、EXP関数を使った式で検算できます。
TIP
EXP関数はネイピア数eのべき乗を返す関数です。詳しくはEXP関数の記事をご覧ください。
SIN関数との違い
名前は似ていますが、SIN関数とSINH関数はまったく別の関数です。
| 項目 | SIN関数 | SINH関数 |
|---|---|---|
| 正式名称 | 正弦(サイン) | 双曲線正弦(ハイパボリックサイン) |
| 数学的な背景 | 円(三角関数) | 双曲線(双曲線関数) |
| 引数 | 角度(ラジアン) | 任意の実数値 |
| 値の範囲 | -1 から 1 | 制限なし(-無限大 から +無限大) |
| RADIANS変換 | 必要 | 不要 |
| 周期性 | あり(2πごとに繰り返す) | なし |
一番大きな違いは「値の範囲」です。SIN関数の結果は必ず-1から1の間に収まります。一方、SINH関数には上限がなく、入力が大きくなるほど結果も大きくなります。
もうひとつの違いは「周期性」です。SIN関数は360度(2πラジアン)ごとに同じ値を繰り返しますが、SINH関数は繰り返しません。
詳しくはSIN関数の記事も参考にしてみてください。
実務での活用例
カテナリー曲線(吊り橋・電線の形状)
SINH関数の代表的な応用が「カテナリー曲線」です。カテナリーとは、両端を固定した鎖やロープが自重で垂れ下がるときにできる曲線のこと。吊り橋のケーブルや、電柱間の電線の形がこれにあたります。
カテナリー曲線の弧の長さは、SINH関数で計算できます。
弧の長さ = a × SINH(x / a)
たとえば、パラメータa=10として、x=0から各地点までの弧長を求めてみましょう。
A列にxの値、B1に次の式を入力します。
=10*SINH(A1/10)
| x(A列) | 弧の長さ(B列) |
|---|---|
| 0 | 0 |
| 5 | 5.21095… |
| 10 | 11.75201… |
| 20 | 36.26860… |
xが大きくなるほど、弧の長さも急激に長くなります。ケーブルや電線の設計で必要な長さを見積もるとき、こうした計算が役立ちますよ。
よくあるエラーと対処法
SINH関数でよくあるトラブルをまとめます。
| 症状 | 原因 | 対処法 |
|---|---|---|
| #VALUE! エラー | 引数に文字列を渡した | 数値またはセル参照を指定する |
| #NUM! エラー | 指数が大きすぎる | 引数の値を小さくする(約710が上限) |
| SIN関数と結果が違う | 関数を間違えている | SINは三角関数、SINHは双曲線関数。目的に合った方を使う |
文字列を渡したとき
=SINH("abc")
結果は #VALUE! エラーです。引数には必ず数値を渡してください。セル参照の場合は、参照先が数値であることを確認しましょう。
指数が大きすぎるとき
=SINH(1000)
結果は #NUM! エラーです。SINH関数は内部で e^x を計算するため、引数が大きすぎるとオーバーフローします。実用上は引数を710以下に抑えれば問題ありません。
似た関数との違い・使い分け
| 関数 | 動作 | 引数 | 用途 |
|---|---|---|---|
| SINH | 双曲線正弦を返す | 実数値 | カテナリー曲線・物理計算 |
| COSH | 双曲線余弦を返す | 実数値 | カテナリー曲線のy座標 |
| TANH | 双曲線正接を返す | 実数値 | 機械学習の活性化関数 |
| SIN | 正弦(サイン)を返す | 角度(ラジアン) | 三角関数・座標計算 |
| ASINH | 逆双曲線正弦を返す | 実数値 | SINH値から元の値を逆算 |
| EXP | eのべき乗を返す | 指数 | 指数関数・成長率計算 |
SINH・COSH・TANHは双曲線関数の仲間です。三角関数のSIN・COS・TANに対応する関係ですね。
双曲線関数にも三角関数と似た性質があります。
COSH(x)² - SINH(x)² = 1
TANH(x) = SINH(x) / COSH(x)
三角関数の SIN²+COS²=1 に対して、双曲線関数では COSH²-SINH²=1 になる点が違いです。
まとめ
SINH関数は、指定した値の双曲線正弦(ハイパボリックサイン)を返す関数です。
ポイントを整理します。
- 構文は
=SINH(値)で、引数は任意の実数値 - SIN関数と違い、ラジアン変換は不要
- SINH(0)=0、SINH(1)=1.1752 が代表的な値
- 定義式は (e^x – e^(-x))/2 で、EXP関数で検算できる
- カテナリー曲線(吊り橋・電線の形状)の計算に活用できる
まずは =SINH(1) で1.1752が返ることを確認してみてください。
