「100件のアンケートを送ったら、60件以上返ってくる確率はどのくらいだろう?」。こんな疑問を感じたことはありませんか?
回収率の目安はあっても、実際に何件返ってくるかの確率はカンでしか語れません。手計算で求めるのも現実的ではないですよね。
そんなときに使うのがBINOM.DIST関数です。この記事ではGoogleスプレッドシートでのBINOM.DIST関数の使い方を、基本構文から実務活用まで解説します。TRUE/FALSEの違いや、COMBIN関数との関係もあわせて紹介しますよ。
BINOM.DIST関数とは
BINOM.DIST関数(読み方: バイノム・ディスト関数)は、二項分布にもとづいて確率を返す関数です。二項分布とは、「成功か失敗か」の2択を繰り返したときに、成功が何回起きるかの確率分布です。「BINOM」は「Binomial(二項)」、「DIST」は「Distribution(分布)」の略です。
たとえば「不良品率5%の製品を20個検査したとき、不良品が2個以下になる確率」を1つの数式で求められます。
BINOM.DIST関数にできることをまとめると、次のとおりです。
- ちょうどx回成功する確率を求める(確率質量)
- x回以下成功する確率を求める(累積確率)
- 品質検査で合格ラインに収まる確率を計算する
- アンケートの回収数や営業の成約件数を確率で予測する
NOTE
BINOM.DIST関数はGoogleスプレッドシートの全バージョンで使えます。Excelにも同名の関数があり、動作は同じです。
二項分布が成り立つ3つの条件
BINOM.DIST関数を使うには、データが二項分布の前提を満たしている必要があります。
- 結果が2択: 各試行の結果は「成功」か「失敗」のどちらか
- 成功確率が一定: 毎回の試行で成功する確率が変わらない
- 各試行が独立: ある試行の結果が、次の試行の結果に影響しない
製品の検査、アンケートの回収、コイン投げなどは、この3条件を満たす典型的な場面です。
基本構文と4つの引数
=BINOM.DIST(成功回数, 試行回数, 成功確率, 累積)
カッコの中に4つの引数を指定します。
| 引数 | 必須/任意 | 説明 |
|---|---|---|
| 成功回数(number_s) | 必須 | 成功と判定する回数(0以上の整数) |
| 試行回数(trials) | 必須 | 試行の合計回数(1以上の整数) |
| 成功確率(probability_s) | 必須 | 各試行で成功する確率(0〜1の範囲) |
| 累積(cumulative) | 必須 | TRUEで累積確率、FALSEで確率質量 |
TIP
成功回数に小数を指定すると、小数部分は切り捨てられます。たとえば2.7は2として処理されます。
BINOMDIST(旧関数名)との関係
GoogleスプレッドシートにはBINOMDISTという関数もあります。これはBINOM.DISTの旧バージョンで、計算結果は同じです。
=BINOMDIST(2, 20, 0.05, TRUE) ← 旧関数名(動作は同じ)
=BINOM.DIST(2, 20, 0.05, TRUE) ← 新関数名(推奨)
どちらを使っても問題ありませんが、Googleの公式ドキュメントではBINOM.DISTが推奨されています。新しく数式を書くときはBINOM.DISTを使いましょう。
TRUE/FALSEで何が変わる?累積か確率質量かを選ぼう
BINOM.DIST関数の4番目の引数「累積」は、TRUEかFALSEで結果がまったく変わります。この違いを押さえておくことが、BINOM.DIST関数を使いこなすポイントです。
FALSE(確率質量関数)——ちょうどx回成功する確率
FALSEを指定すると確率質量関数(PMF: ちょうどx回成功する確率)の値を返します。
=BINOM.DIST(3, 10, 0.5, FALSE)
この数式は「10回コインを投げて、ちょうど3回表が出る確率」を返します。結果は約0.1172(11.7%) です。
TRUE(累積分布関数)——x回以下成功する確率
TRUEを指定すると累積分布関数(CDF: x回以下成功する確率の合計)の値を返します。
=BINOM.DIST(3, 10, 0.5, TRUE)
この数式は「10回コインを投げて、3回以下表が出る確率」を返します。結果は約0.1719(17.2%) です。
つまり0回+1回+2回+3回の確率を合計した値ですね。
2つを比較してみる(サンプルデータつき)
10回試行・成功確率50%の場合で、成功回数ごとの結果を比べてみましょう。
| 成功回数 | FALSE(ちょうどx回) | TRUE(x回以下) |
|---|---|---|
| 0 | 0.0010(0.1%) | 0.0010(0.1%) |
| 1 | 0.0098(1.0%) | 0.0107(1.1%) |
| 2 | 0.0439(4.4%) | 0.0547(5.5%) |
| 3 | 0.1172(11.7%) | 0.1719(17.2%) |
| 4 | 0.2051(20.5%) | 0.3770(37.7%) |
| 5 | 0.2461(24.6%) | 0.6230(62.3%) |
FALSE列は成功回数5回(ちょうど半分)で最大になります。TRUE列は成功回数が増えるほど1に近づいていきます。
「x回以上の確率」を求めたいときは、=1 - BINOM.DIST(x-1, n, p, TRUE) と書きます。たとえば「6回以上成功する確率」なら =1 - BINOM.DIST(5, 10, 0.5, TRUE) です。
BINOM.DIST関数の実務活用3パターン
基本がわかったところで、実際の業務で使えるパターンを3つ紹介します。
品質管理——不良品が基準以下に収まる確率
製造業の品質検査で「不良品率5%の製品を50個検査したとき、不良品が3個以下になる確率」を求めてみましょう。
=BINOM.DIST(3, 50, 0.05, TRUE)
結果は約0.7604(76.0%) です。約76%の確率で不良品が3個以下に収まることがわかります。
もう少し厳しく「不良品が1個以下」の確率も出してみましょう。
=BINOM.DIST(1, 50, 0.05, TRUE)
結果は約0.2794(27.9%) です。品質管理の合格基準を設定するときの目安として使えますよ。
アンケート回収——目標回収数に届く確率を予測
「回収率40%のアンケートを100人に送った場合、50件以上回収できる確率は?」。この疑問にも答えられます。
=1 - BINOM.DIST(49, 100, 0.4, TRUE)
結果は約0.0271(2.7%) です。回収率40%では、100人中50件以上の回収はかなり難しいことがわかります。
では目標を45件に下げるとどうでしょうか。
=1 - BINOM.DIST(44, 100, 0.4, TRUE)
結果は約0.1356(13.6%) です。このように目標ラインを変えながら確率を試算すると、現実的な回収目標を設定できますよ。
営業成約——目標達成確率のシミュレーション
「成約率30%の営業担当が月20件商談して、8件以上成約する確率は?」。こんな場面でも使えます。
=1 - BINOM.DIST(7, 20, 0.3, TRUE)
結果は約0.2277(22.8%) です。目標8件の達成確率は約23%だとわかります。
目標を6件に下げてみましょう。
=1 - BINOM.DIST(5, 20, 0.3, TRUE)
結果は約0.6080(60.8%) です。KPIの設定や商談数の目標を決めるときに、数字で根拠を示せるのがBINOM.DIST関数の強みですね。
COMBIN関数との関係を理解しよう
BINOM.DIST関数のFALSE(確率質量)の結果は、実はCOMBIN関数を使った次の数式と同じ値になります。
=COMBIN(試行回数, 成功回数) * 成功確率^成功回数 * (1-成功確率)^(試行回数-成功回数)
たとえば「10回中3回成功、成功確率50%」の場合です。
=COMBIN(10, 3) * 0.5^3 * 0.5^7
結果は0.1172で、=BINOM.DIST(3, 10, 0.5, FALSE) とぴったり一致します。
COMBIN関数は「10個から3個を選ぶ組み合わせの数」を返す関数です。二項分布の確率は「組み合わせ数 x 成功確率 x 失敗確率」で成り立っています。BINOM.DIST関数はこの計算を1つの関数にまとめてくれているわけですね。
TIP
仕組みを理解しておくと、BINOM.DIST関数の結果を検算したいときに役立ちます。ただし実務では、BINOM.DIST関数をそのまま使うのが圧倒的に簡単です。
二項分布関連の関数ファミリー
Googleスプレッドシートには、二項分布に関連する関数がいくつかあります。目的に応じて使い分けましょう。
| 関数 | 用途 | 特徴 |
|---|---|---|
| BINOM.DIST | 成功回数から確率を求める | 最も汎用的。実務のメイン関数 |
| BINOM.INV | 累積確率から成功回数を逆算する | BINOM.DISTの逆関数。「確率80%以内に収まる成功回数」の算出に便利 |
| COMBIN | 組み合わせの数を求める | 二項分布の数学的な背景を理解するときに使う |
| NORM.DIST | 正規分布にもとづく確率を求める | 連続データ向け。試行回数が大きいとき二項分布の近似に使える |
使い分けのポイントはシンプルです。
- 成功/失敗の2択で確率を知りたい → BINOM.DIST
- 確率から成功回数を逆算したい → BINOM.INV
- 連続データの確率を知りたい → NORM.DIST
迷ったらBINOM.DIST関数を使えば、「成功/失敗」型のデータにはほとんど対応できますよ。
よくある間違いと注意点
BINOM.DIST関数でつまずきやすいポイントをまとめました。
成功回数が試行回数を超えて#NUM!エラー
成功回数は試行回数以下でなければなりません。たとえば「10回の試行で15回成功」は起こりえないので、エラーになります。
=BINOM.DIST(15, 10, 0.5, TRUE) ← #NUM! エラー
成功確率が0〜1の範囲外で#NUM!エラー
成功確率は0から1の間で指定します。50%なら「50」ではなく「0.5」と入力してください。
=BINOM.DIST(3, 10, 50, TRUE) ← #NUM! エラー(50ではなく0.5)
引数に文字列を渡して#VALUE!エラー
数値であるべき引数にテキストが入ると#VALUE!エラーになります。セル参照を使うときは、参照先が数値であることを確認しましょう。
TRUE/FALSEの指定を間違える
4番目の引数を省略することはできません。TRUEとFALSEでは結果がまったく異なります。「ちょうどx回の確率」を求めたいのにTRUEを指定すると、累積値が返ってきてしまいます。目的に合った値を選んでくださいね。
「x回以上」の確率を求めるときの計算
BINOM.DIST関数のTRUEは「x回以下」の確率を返します。「x回以上」の確率が欲しいときは、次のように書きます。
=1 - BINOM.DIST(x-1, 試行回数, 成功確率, TRUE)
「x-1」にする点がポイントです。「x回以上」には「ちょうどx回」も含まれるため、x-1回以下の累積確率を1から引きます。
Excelとの違い
BINOM.DIST関数は、GoogleスプレッドシートとExcelで構文・動作ともにほぼ同じです。
=BINOM.DIST(3, 10, 0.5, TRUE)
この数式はどちらの環境でも同じ結果を返します。Excelでも旧関数名BINOMDISTが使えますが、Microsoftの公式ドキュメントではBINOM.DISTが推奨されています。
ExcelとGoogleスプレッドシートを併用している方は、BINOM.DISTで統一しておけば問題ありませんよ。
まとめ
BINOM.DIST関数は、二項分布(成功/失敗の2択)にもとづいて確率を求める関数です。
- 4番目の引数にFALSEで「ちょうどx回成功する確率」が返る
- TRUEで「x回以下成功する確率」が返る
- 品質管理・アンケート回収予測・営業成約シミュレーションなど幅広く活用できる
- COMBIN関数で手計算した結果と一致する(仕組みの理解に役立つ)
- 成功回数 > 試行回数や、成功確率が0〜1の範囲外だと
#NUM!エラー - 「x回以上」を求めるには
=1 - BINOM.DIST(x-1, n, p, TRUE)と書く - 連続データの確率にはNORM.DIST関数が向いている
「この条件でうまくいく確率はどのくらい?」を数字で答えられるようになると、意思決定の質がぐっと上がります。ぜひ実際のデータで試してみてくださいね。
