ExcelのSYD関数の使い方|級数法の減価償却費

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「IT機器の減価償却費を初年度に多めに計上したいけど、Excelでどう計算したらいいの…」。そんな経理担当者は多いですよね。陳腐化が早い資産は、初期に大きく償却して、後年は少しずつ減らしていくのが経済的実態に近いです。でも年数合計法(級数法)の計算式を毎期手で叩くのは大変ですよ。

ExcelのSYD関数を使えば、級数法による減価償却費をセル1つで自動計算できます。この記事では、SYD関数の使い方を構文・引数・実例で解説します。SLN関数・DB関数・DDB関数との比較表もあわせて紹介しますので、減価償却関数の使い分けに迷わなくなりますよ。

ExcelのSYD関数とは?年数合計法(級数法)で減価償却費を求める財務関数

ExcelのSYD関数は、年数合計法(ねんすうごうけいほう、級数法とも呼ばれる)で1期あたりの減価償却費を求める財務関数です。年数合計法とは、耐用年数の数字を1から順に足した合計を分母にして、毎期の償却費を逓減させる方法を指します。

初年度が最も大きく、最終年度が最も小さくなるのが特徴です。そして、各期の償却費の合計は必ず「取得価額 – 残存価額」と一致します。

対応バージョンはExcel 2007以降・Microsoft 365です。Googleスプレッドシートでも同じ構文で使えますよ。

SYD関数の読み方と名前の由来

読み方は「シド」または「エスワイディー」です。英語の「Sum-of-Years’ Digits(年数の数字の合計)」の頭文字が由来になっています。耐用年数の数字を全部足した値を分母にする計算方法を表した名前ですね。

年数合計法(級数法)とは

年数合計法は、加速償却(初期に多く償却する方法)の一種です。耐用年数を1から順に足した「年数合計」を分母として、毎期の償却費の比率を決めます。

計算式はこのようになります。

年数合計    = 耐用年数 × (耐用年数 + 1) ÷ 2
減価償却費  = (取得価額 - 残存価額) × (耐用年数 - 期 + 1) ÷ 年数合計

耐用年数5年なら、年数合計は「5×6÷2=15」です。1年目の分子は「5-1+1=5」、2年目は「4」、3年目は「3」と1ずつ減っていきます。

SYD関数の構文と引数

SYD関数の構文は、減価償却関連の関数のなかでもシンプルです。

=SYD(取得価額, 残存価額, 耐用年数, 期)

英語表記だとこのようになります。

=SYD(cost, salvage, life, per)

引数は4つすべてが必須です。

引数必須説明制約
取得価額(cost)必須資産の取得時の価額数値、0より大きい
残存価額(salvage)必須耐用年数経過後の価額数値、0以上、取得価額以下
耐用年数(life)必須償却期間(年数)整数、0より大きい
期(per)必須計算する期1以上、耐用年数以下

残存価額は「ゼロ」でも指定する

日本の現行税法では残存価額は1円(備忘価額)まで償却できます。SYD関数で残存価額を「ゼロ」にする場合は、第2引数に0を入れればOKです。残存価額を引数として明示する点が、SLN関数と共通の作法ですよ。

期(per)は整数で指定する

第4引数の「期」は1から耐用年数までの整数を指定します。小数や0、耐用年数を超える値を入れると#NUM!エラーになります。年度の途中取得には対応していないので、その場合はVDB関数やAMORLINC関数の利用を検討してくださいね。

SYD関数の基本的な使い方

シンプルな例で動きを確認していきましょう。取得価額1,000,000円、残存価額100,000円、耐用年数5年の機械設備を想定します。

1年目の減価償却費を計算する

セルA2に取得価額、A3に残存価額、A4に耐用年数を入力した状態で、セルA5に1年目の償却費を求める数式を入れます。

=SYD(A2, A3, A4, 1)

結果は 300,000円 になります。手計算で検算してみましょう。年数合計は5×6÷2=15です。分子は5-1+1=5なので、(1,000,000-100,000)×5÷15=300,000円ですね。一致しました。

全期間の償却スケジュールを作る

償却スケジュール表を作るときは、第4引数だけを変えていきます。期の列を作って絶対参照と相対参照を使い分けると効率的です。

=SYD($A$2, $A$3, $A$4, B2)

B列に1〜5を入れて下にコピーすれば、各年度の償却費が一気に求められます。耐用年数5年の例だと次のような結果になりますよ。

計算式(分数)償却費
1年目900,000 × 5/15300,000円
2年目900,000 × 4/15240,000円
3年目900,000 × 3/15180,000円
4年目900,000 × 2/15120,000円
5年目900,000 × 1/1560,000円
合計900,000円

合計が必ず「取得価額-残存価額=900,000円」と一致しているのが確認できますね。SYD関数のメリットは、この合計が予測可能で残存価額にぴたりと着地する点です。

SLN関数・DB関数・DDB関数との比較

減価償却関数は複数あって、最初は使い分けに迷いますよね。代表的な4つを並べて比較しましょう。

関数償却方法計算特性主な用途
SLN定額法毎期同額建物・備品など寿命が長い資産
DB旧定率法(固定率)期初に多く逓減旧来の日本税法準拠
DDB倍額定率法DBよりさらに加速米国会計基準ベース
SYD年数合計法(級数法)加速償却・合計が予測可能陳腐化が早い資産

同じ条件(取得価額1,000,000円、残存価額100,000円、耐用年数5年)で4関数を比べると次のようになります。

SLNDB(率0.369)DDB(率0.4)SYD
1年目180,000369,000400,000300,000
2年目180,000232,839240,000240,000
3年目180,000146,921144,000180,000
4年目180,00092,70786,400120,000
5年目180,00058,49829,60060,000
合計900,000899,965900,000900,000

DB関数は微妙に端数が残り、DDB関数は最終年で残存価額に到達しないことがあります。SYD関数は分数比率なので合計が必ず「償却対象額」と一致するのが見て取れますよ。

SYDが向いている資産の特徴

SYD関数(級数法)が経済的実態とよくマッチするのは、次のような資産です。

  • 陳腐化が早い資産(IT機器・コンピュータ・通信設備)
  • 初期に高い生産性を持つ資産(新品時の効率が高い機械設備)
  • 後年に修繕費が増える資産(償却費+修繕費の合計を平準化したい場合)
  • 管理会計上、資産の実質価値の減少パターンに合わせたい場合

新車のIT機器は買った瞬間から型落ちが始まりますよね。級数法は、こうした資産価値の変化曲線とよく一致するんですよ。

SYDとAMORLINCの違い

国際会計関連でよく比較される関数にAMORLINC関数(フランス会計向け定額法)があります。日本の経理部門でも、海外子会社の決算で目にすることがありますね。

観点SYDAMORLINC
償却方法加速償却(級数法)定額法(日割り対応)
初年度の扱い期単位(フル償却)取得日ベースの日割り
用途IFRS・米国会計基準・管理会計フランス会計基準
引数の数4個7個

SYDは「いつ取得したか」を考慮しません。一方AMORLINCは取得日と決算日を引数に取って、初年度の日割り計算ができます。中途取得が多い実務ではAMORLINC、加速償却が必要な場合はSYDという使い分けになりますよ。

よくあるエラーと対処法

SYD関数の引数は数値型のみ受け付けます。エラーが出たときは、引数の値と型を確認しましょう。

#NUM!エラー

引数の値が制約を満たしていないときに出ます。具体的には次のケースです。

  • 残存価額がマイナス(salvage < 0)
  • 耐用年数が0以下(life <= 0)
  • 期が1未満、または耐用年数を超えている(per < 1 または per > life)

例えば=SYD(1000000, 100000, 5, 6)は耐用年数5年に対して期が6なので#NUM!エラーになります。期の上限を確認してくださいね。

#VALUE!エラー

引数に文字列など数値以外が含まれているときに出ます。セル参照先のセルに「-」や「#N/A」が入っていないか確認しましょう。

計算結果がマイナスになる

取得価額が残存価額より小さい場合、償却対象額がマイナスになるので結果もマイナスになります。cost >= salvageを満たすよう値を見直してくださいね。

期に小数を指定したい場合

SYD関数の第4引数は整数のみです。「半期償却」や「四半期償却」を求めたい場合は、VDB関数(可変定率法)の使用を検討しましょう。VDB関数は期間の小数指定に対応しています。

日本の税務実務での扱いに注意

最後に注意点をひとつ。日本の法人税法における 法定償却方法は定額法・定率法のみ です。年数合計法(級数法)は法定償却方法ではないんですよ。

そのため、SYD関数を使う場面は次のようなケースに限られます。

  • 国際財務報告基準(IFRS)に基づく連結財務諸表での計算
  • 米国会計基準(US GAAP)参考資料の作成
  • 管理会計(経済的実態反映)目的の試算
  • 海外子会社の決算サポート

税務申告の確定計算では、原則として SLN・DB のいずれかを使うことになります。SYD関数はあくまで管理会計・連結会計での補助的な計算手段として使うのが安全ですよ。

関連する減価償却関数

SYD関数だけでなく、Excelには複数の減価償却関数があります。それぞれの特徴を押さえておくと、案件ごとの使い分けがスムーズになりますよ。

  • SLN関数: 定額法(毎期同額)。日本の法定償却方法のひとつ
  • DB関数: 旧定率法(固定率)。旧来の日本税法準拠の計算
  • DDB関数: 倍額定率法(200%定率法)。米国会計基準でよく使われる
  • VDB関数: 可変定率法。期間の指定が柔軟で部分期償却に対応
  • AMORLINC関数: フランス会計向け定額法。取得日の日割り対応
  • AMORDEGRC関数: フランス会計向け定率法

定額法ならSLN、加速償却で合計を予測したいならSYD、米国基準ならDDB、フランス会計ならAMORLINC系という流れで覚えておくと迷わなくなります。

まとめ

ExcelのSYD関数は、年数合計法(級数法)による減価償却費を1セルで計算できる財務関数でしたね。

  • 構文は =SYD(取得価額, 残存価額, 耐用年数, 期) の4引数
  • 計算式は「(cost-salvage) × (life-per+1) ÷ (life×(life+1)/2)」
  • 各期の償却費合計が必ず「取得価額-残存価額」と一致するのが特徴
  • 初年度に多く償却したい資産(IT機器・陳腐化が早い設備)に向く
  • #NUM!エラーは引数の制約違反、#VALUE!エラーは型違いが原因
  • 日本の法定償却方法ではないので、管理会計・連結会計での利用が中心

加速償却が必要な場面で、合計が予測可能な計算をしたいときに SYD関数は強い味方になりますよ。今回紹介した比較表も、関連関数の使い分け判断に活用してみてくださいね。

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