「上位10%のボーダーラインは何点だろう?」。成績評価や品質管理で、こんな疑問を感じたことはありませんか?
平均や標準偏差はわかっていても、「何点以上なら上位○%」を手計算するのは大変ですよね。
そんなときに使うのがNORM.INV関数です。この記事ではGoogleスプレッドシートでのNORM.INV関数の使い方を、基本構文から実務活用まで解説します。NORM.DISTとの関係やエラー対処法もあわせて紹介しますよ。
スプレッドシートのNORM.INV関数とは
NORM.INV関数(読み方: ノーム・インバース関数)は、正規分布の逆関数です。確率を指定すると、その確率に対応する値を返してくれます。「NORM」は「Normal(正規)」、「INV」は「Inverse(逆)」の略です。
たとえば「平均60点・標準偏差10点のテストで、上位5%に入るには何点必要か」を1つの数式で求められます。
NORM.INV関数にできることをまとめると、次のとおりです。
- 確率(パーセンタイル)から対応する値を逆算する
- 成績評価のグレード境界値(上位10%、上位30%など)を算出する
- 品質管理で規格の上限・下限値を設定する
- 売上予測で信頼区間の上限・下限を求める
NOTE
NORM.INV関数はGoogleスプレッドシートの全バージョンで使えます。Excelにも同名の関数があり、動作は同じです。
NORM.INV関数の基本構文と引数
基本構文
=NORM.INV(確率, 平均, 標準偏差)
カッコの中に3つの引数を指定します。
引数の意味
| 引数 | 必須/任意 | 説明 |
|---|---|---|
| 確率(probability) | 必須 | 0より大きく1より小さい確率値 |
| 平均(mean) | 必須 | 正規分布の平均値 |
| 標準偏差(standard_deviation) | 必須 | 正規分布の標準偏差(0より大きい値) |
確率には0と1そのものは指定できません。0や1を入力すると#NUM!エラーになります。
TIP
確率に0.9を指定すると「下位90%の境界値」、つまり「上位10%のボーダーライン」が返ります。「上位○%」で考えるときは「1 – 上位の割合」を確率に指定すると覚えておきましょう。
NORMINVとの違い
GoogleスプレッドシートにはNORMINVという関数もあります。これはNORM.INVの旧バージョンで、計算結果は同じです。
=NORMINV(0.9, 60, 10) ← 旧関数名(動作は同じ)
=NORM.INV(0.9, 60, 10) ← 新関数名(推奨)
どちらを使っても結果は変わりませんが、Googleの公式ドキュメントではNORM.INVが推奨されています。新しく数式を書くときはNORM.INVを使いましょう。
NORM.INV関数の使い方(基本例)
まずはシンプルな例で動きを確認してみましょう。平均60点・標準偏差10点のテストを想定します。
=NORM.INV(0.5, 60, 10)
結果は60です。確率0.5(50%)を指定すると、ちょうど平均値が返ります。正規分布は左右対称なので、真ん中が平均値になるわけですね。
確率を変えて、いくつかの値を見てみましょう。
| 確率 | 数式 | 結果 | 意味 |
|---|---|---|---|
| 0.1 | =NORM.INV(0.1, 60, 10) | 約47.2 | 下位10%の境界値 |
| 0.25 | =NORM.INV(0.25, 60, 10) | 約53.3 | 下位25%の境界値(第1四分位) |
| 0.5 | =NORM.INV(0.5, 60, 10) | 60.0 | ちょうど平均値 |
| 0.75 | =NORM.INV(0.75, 60, 10) | 約66.7 | 上位25%のボーダー |
| 0.9 | =NORM.INV(0.9, 60, 10) | 約72.8 | 上位10%のボーダー |
確率が大きくなるほど、返される値も大きくなります。確率0.5で平均値、それより小さいと平均以下、大きいと平均以上の値が返りますよ。
NORM.INV関数の実務活用3パターン
基本がわかったところで、実際の業務で使えるパターンを3つ紹介します。
成績評価のグレード境界値を算出する
テストや人事評価で「上位10%をA評価、上位30%をB評価」とグレード分けしたいときに使えます。
評価スコアの平均が70点、標準偏差が15点の場合です。
=NORM.INV(0.9, 70, 15)
結果は約89.2です。つまり89点以上が上位10%(A評価)のボーダーラインです。
同じ要領で各グレードの境界値をまとめると、次のようになります。
| 評価 | 確率 | 数式 | 境界値 |
|---|---|---|---|
| A(上位10%) | 0.9 | =NORM.INV(0.9, 70, 15) | 約89.2 |
| B(上位30%) | 0.7 | =NORM.INV(0.7, 70, 15) | 約77.9 |
| C(上位70%) | 0.3 | =NORM.INV(0.3, 70, 15) | 約62.1 |
| D(下位10%) | 0.1 | =NORM.INV(0.1, 70, 15) | 約50.8 |
実際のデータで使うなら、AVERAGE関数とSTDEV関数を組み合わせるのがおすすめです。
=NORM.INV(0.9, AVERAGE(B2:B31), STDEV(B2:B31))
データが変わっても境界値が自動更新されるので便利ですよ。
品質管理の規格値を設定する
製造業で「不良率を1%以内に抑えたい」ときの規格上限・下限を求められます。
部品の重量が平均500g・標準偏差5gの場合です。不良率1%以内ということは、下位0.5%と上位0.5%を規格外にします。
=NORM.INV(0.005, 500, 5) ← 規格下限
=NORM.INV(0.995, 500, 5) ← 規格上限
結果は下限が約487.1g、上限が約512.9gです。この範囲に収まる製品は全体の99%になります。
規格値をこのように統計的に設定すると、「なぜこの数値なのか」を根拠をもって説明できますよね。
売上予測の信頼区間を求める
月間売上の平均が800万円、標準偏差が120万円のとき、「95%の確率で収まる範囲」を求めてみましょう。
=NORM.INV(0.025, 800, 120) ← 下限(下位2.5%)
=NORM.INV(0.975, 800, 120) ← 上限(上位2.5%)
結果は下限が約564.8万円、上限が約1035.2万円です。95%信頼区間(両端2.5%ずつを除外した範囲)を求められました。
予算策定やリスク評価の資料で「この範囲に収まる可能性が95%」と提示できるので、説得力のある分析になりますよ。
NORM.DISTとの関係(順方向と逆方向)
NORM.INV関数は、NORM.DIST関数の逆関数です。2つの関数は「入力と出力が逆」の関係にあります。
| 関数 | 入力 | 出力 | 方向 |
|---|---|---|---|
| NORM.DIST | 値(x) | 確率(p) | 値 → 確率 |
| NORM.INV | 確率(p) | 値(x) | 確率 → 値 |
具体例で確認してみましょう。平均60・標準偏差10の場合です。
=NORM.DIST(72.8, 60, 10, TRUE) → 約0.9(90%)
=NORM.INV(0.9, 60, 10) → 約72.8
NORM.DISTに72.8を入れると確率0.9が返り、NORM.INVに0.9を入れると72.8が返ります。お互いの結果を入れ替えても元に戻るということですね。
使い分けのポイントは次のとおりです。
- 「80点は上位何%?」 → NORM.DIST(値がわかっていて確率を知りたい)
- 「上位10%は何点から?」 → NORM.INV(確率がわかっていて値を知りたい)
データを標準化したい場合はSTANDARDIZE関数も便利ですよ。「値から確率」か「確率から値」か、どちらの方向で計算したいかで使い分けてください。
NORM.INV関数でエラーが出るときの対処法
NORM.INV関数でよくあるエラーと、その対処法をまとめました。
確率に0以下や1以上を指定して#NUM!エラー
確率は「0より大きく1より小さい値」でなければなりません。0や1、負の数を指定すると#NUM!エラーになります。
=NORM.INV(0, 60, 10) ← #NUM! エラー
=NORM.INV(1, 60, 10) ← #NUM! エラー
=NORM.INV(-0.5, 60, 10) ← #NUM! エラー
他のセルの計算結果を確率として渡すときは、値が0〜1の範囲内か確認しておきましょう。
標準偏差に0以下を指定して#NUM!エラー
標準偏差は0より大きい値が必要です。データがすべて同じ値のとき、STDEV関数は0を返します。その結果をそのままNORM.INVに渡すとエラーになるので注意してください。
=NORM.INV(0.9, 60, 0) ← #NUM! エラー
引数に文字列を渡して#VALUE!エラー
数値であるべき引数にテキストが入ると#VALUE!エラーになります。セル参照を使うときは、参照先が数値になっているか確認してくださいね。
まとめ
NORM.INV関数は、正規分布で確率から値を逆算する関数です。
- 3つの引数(確率・平均・標準偏差)を指定するだけで使える
- 確率0.5を指定すると平均値が返る。確率が大きいほど大きな値が返る
- 成績評価のグレード境界値、品質管理の規格値設定、売上予測の信頼区間の算出に活用できる
- NORM.DIST関数の逆関数。「確率→値」の方向で計算したいときに使う
- AVERAGE関数とSTDEV関数を組み合わせると、データ更新に自動対応できる
- 確率に0や1を指定すると
#NUM!エラー。範囲は0より大きく1より小さい値
「上位○%のボーダーラインはいくつ?」を即座に答えられるようになると、評価基準の策定や品質管理がぐっとラクになります。ぜひ実際のデータで試してみてくださいね。
