Excelで品質管理や検品の合格ラインを決めるとき、「不良品が何個までなら許容できるか」を統計的に決めたい場面がありますよね。手計算で二項分布の確率をひとつずつ足していくのは正直しんどいです。
そんなときに使えるのがCRITBINOM関数です。試行回数・成功率・基準値の3つを指定するだけで、累積二項分布が基準を満たす最小の成功回数をサッと返してくれますよ。
この記事では、ExcelのCRITBINOM関数の使い方を実例付きで解説します。後継のBINOM.INV関数との違いや使い分け、互換性関数の置き換え手順もあわせて紹介しますね。
ExcelのCRITBINOM関数とは?
CRITBINOM関数(読み方:クライテリア・バイノミアル)は、累積二項分布の確率が指定した基準値(α)以上になる最小の成功回数を返す関数です。関数名は「Criteria(基準)」と「Binomial(二項分布)」を組み合わせた名前ですよ。「二項分布の臨界値」を求めるのが役割です。
たとえば「不良率5%の製品を100個検査したとき、95%の確率で収まる不良品数の上限は?」といった問いに、統計的な裏付けで答えられます。品質管理や合否判定のしきい値設定に役立つ関数ですよ。
CRITBINOM関数はExcel 2010以降、互換性関数という扱いになっています。同じ機能を持つBINOM.INV関数が後継として用意されたためです。新しいシートを作るときはBINOM.INV関数を使いましょう。既存シートにCRITBINOM関数があれば、置き換えを検討してみてくださいね。
NOTE
CRITBINOM関数は将来のバージョンで削除される可能性があります。新規作成ではBINOM.INV関数を使うことが推奨されています。両関数の計算結果は同じです。
二項分布とは?(かんたんに)
二項分布(にこうぶんぷ)とは、「成功か失敗の2択になる試行をN回繰り返したとき、成功がX回になる確率の分布」のことです。
身近な例でいえば、コインを10回投げて表が出る回数の分布が二項分布にあたります。CRITBINOM関数は、この累積確率を内部で計算してくれます。そのため「成功(または不良品)が何回以下なら基準を満たすか」が一発でわかりますよ。
CRITBINOM関数の書き方(構文と引数)
基本構文
=CRITBINOM(試行回数, 成功率, α)
引数は3つあり、すべて必須です。
引数の説明
| 引数 | 必須 | 説明 |
|---|---|---|
| 試行回数 | 必須 | ベルヌーイ試行の回数を指定します(0以上の整数)。小数を指定した場合は整数部分のみ使われます |
| 成功率 | 必須 | 各試行が成功する確率を0以上1以下で指定します |
| α | 必須 | 基準となる累積確率の値を0以上1以下で指定します |
ポイントは、αの値が大きいほど返される成功回数も大きくなることです。α=0.95なら「95%の確率で収まる上限値」を求められますよ。
計算の中身
CRITBINOM関数は内部で次の処理を行っています。
P(X ≤ k) ≥ α を満たす最小の k を返す
P(X ≤ k) は二項分布の累積確率(成功回数がk回以下になる確率)です。Excelがαに到達する最小のkを探してくれるので、累積確率を手で計算する必要はありませんよ。
CRITBINOM関数の使い方(実践例)
値を直接入力する方法
もっともシンプルな使い方は、引数に数値を直接入力する方法です。
=CRITBINOM(100, 0.05, 0.95)
この式は「100回の試行で成功率5%のとき、累積確率が95%以上になる最小の成功回数」を返します。結果は 8 です。
つまり、不良率5%の製品を100個検査した場合、95%の確率で不良品は8個以下に収まる、という意味になります。検品の合格基準として使えますね。
セル参照を使う方法
実務ではセルに値を入力して参照する方法が便利です。条件を変えながらシミュレーションできますよ。
たとえば、A1に試行回数「100」、B1に成功率「0.05」、C1に基準値「0.95」と入力した場合:
=CRITBINOM(A1, B1, C1)
セル参照にしておけば、試行回数や成功率を変更するだけで結果が自動的に再計算されます。品質管理の基準を検討するときに重宝しますよ。
αの値を変えて結果を比較する
同じデータでもαを変えると結果がどう変わるか、確認してみましょう。試行回数100・成功率0.05で固定したケースです。
| 数式 | α | 結果 | 意味 |
|---|---|---|---|
| =CRITBINOM(100, 0.05, 0.5) | 0.5 | 5 | 50%の確率で収まる上限 |
| =CRITBINOM(100, 0.05, 0.9) | 0.9 | 8 | 90%の確率で収まる上限 |
| =CRITBINOM(100, 0.05, 0.95) | 0.95 | 8 | 95%の確率で収まる上限 |
| =CRITBINOM(100, 0.05, 0.99) | 0.99 | 10 | 99%の確率で収まる上限 |
αを大きくするほど、許容する成功回数(不良品数)が増える関係がわかります。これは「より確実に基準内に収めようとすると、許容範囲を広くとる必要がある」という直感どおりの結果ですね。品質基準をどの程度厳しくするか検討するときの目安になりますよ。
実務で使えるCRITBINOM関数の活用例
CRITBINOM関数は、合否判定や許容範囲の設計が必要なあらゆる場面で力を発揮します。代表的な4つのシーンを紹介しますね。
製造業の検品基準の設定
製品の検品工程での活用例です。「1ロット200個で不良率3%のとき、95%の確率で不良品は何個以下か」を判定します。
=CRITBINOM(200, 0.03, 0.95)
結果は 9 です。不良品が9個以下であればロット全体を合格と判定できます。統計的な根拠にもとづいた品質管理ができますね。検品マニュアルの合格ラインに記載すれば、検査員ごとのバラつきを防げますよ。
A/Bテストの判定基準
Webマーケティングでの活用例です。「現行案のCV率が3%、テスト案を1000人に表示したとき、有意な改善とみなせる成功数の下限は?」を求めてみましょう。
=CRITBINOM(1000, 0.03, 0.95)
結果は 39 です。テスト案で40件以上のコンバージョンがあれば、上位5%の領域に入った成果と言えます。現行案より有意に改善した可能性が高い、と判断できますよ。仮説検定の前段の目安として便利ですよ。
アンケート回答数の下限予測
アンケートの最低回答数を見積もるケースです。「1000人に送って回答率15%のとき、回答数の下限(90%確率で集まる最低数)は?」を調べてみましょう。
αに「1 – 信頼度」を指定すると下限値が求められます。90%確率で集まる下限なら、α=0.1です。
=CRITBINOM(1000, 0.15, 0.1)
結果は 138 です。90%の確率で138件以上の回答が集まる見込み、と説明できます。「最低限これくらいは期待できる」という見積もりに使えますよ。
保険・金融リスクの上限見積もり
保険会社や金融機関でのリスク管理にも応用できます。「契約1000件で年間請求発生率2%のとき、95%の確率で収まる年間請求件数の上限は?」を試算します。
=CRITBINOM(1000, 0.02, 0.95)
結果は 28 です。準備金の上限見積もりや再保険ラインの設計の根拠資料として使えますよ。
TIP
「下限」を求めたいときはα=0.1や0.05のように小さい値、「上限」を求めたいときはα=0.95や0.99のように大きい値を指定します。意味の取り違いを防ぐため、セルの隣にαと信頼度の対応表を載せておくと安心ですよ。
CRITBINOM関数でよくあるエラーと対処法
CRITBINOM関数でエラーが出たときは、次の表で原因を確認してください。
| エラー | 原因 | 対処法 |
|---|---|---|
#NUM! | 試行回数が0未満 | 0以上の整数を指定する |
#NUM! | 成功率が0未満または1超 | 0以上1以下の値を指定する |
#NUM! | αが0未満または1超 | 0以上1以下の値を指定する |
#VALUE! | 引数に文字列が含まれている | 数値またはセル参照を指定する |
引数の範囲を確認すれば解決できることがほとんどです。よくある間違いとして、成功率を「5」のようにパーセント表記で入力してしまうケースがあります。正しくは小数で「0.05」ですよ。
NOTE
試行回数に小数を指定した場合は、自動的に整数部分だけが使われます。たとえば100.7と入力しても100として計算されます。意図しない丸めを避けるため、整数で指定する習慣をつけましょう。
エラー値の種類と対処法をもっと詳しく知りたい方は「セルに表示されるエラーの種類と原因」も参考にしてみてください。
BINOM.INV関数との違い・使い分け
CRITBINOM関数とBINOM.INV関数はまったく同じ計算結果を返します。違いは関数の世代だけです。
| 項目 | CRITBINOM(互換性) | BINOM.INV |
|---|---|---|
| 登場バージョン | Excel 2007以前 | Excel 2010以降 |
| 分類 | 互換性関数 | 統計関数 |
| 構文 | =CRITBINOM(試行回数, 成功率, α) | =BINOM.INV(試行回数, 成功率, α) |
| 計算結果 | 同じ | 同じ |
| 将来の削除リスク | あり | なし |
使い分けのフロー
実務での使い分けは、次のフローで判断すれば迷いません。
- 新規でシートを作る → BINOM.INV関数を使う
- 既存シートにCRITBINOMを見つけた → BINOM.INVへの置き換えを検討する
- Excel 2007以前との互換が必要 → CRITBINOM関数のまま使う
Excel 2007以前を業務で使っている職場は今ではほとんどありません。そのため、基本的にはBINOM.INVへの置き換えがおすすめですよ。
互換性関数を置き換える手順
既存のExcelファイルでCRITBINOM関数の前に黄色い三角マークが表示されることがあります。これは「互換性関数なので新しい関数への置き換えを推奨」というサインです。
置き換え手順(CRITBINOM → BINOM.INV)
- シート全体を「Ctrl + F」で検索します
- 検索キーワードに
CRITBINOM(を入力します(カッコまで含めるのがコツ) - 「すべて検索」で対象セルを一覧表示します
- 「Ctrl + H」で置換ダイアログに切り替えます
- 検索文字列に
CRITBINOM(、置換文字列にBINOM.INV(を入れて「すべて置換」します
TIP
検索時に
CRITBINOM(のようにカッコ付きで指定するのがコツです。BINOM.INVがすでに使われているセルを誤って書き換えずに済みますよ。
置き換え後は、必ず数値結果が変わっていないことを確認してください。CRITBINOMとBINOM.INVは同じ計算式なので、結果が変わらないのが正しい動作です。
関連する二項分布・確率の関数
二項分布や確率に関連するExcel関数もあわせて覚えておくと便利です。役割の違いを表にまとめておきますね。
| 関数名 | 機能 |
|---|---|
| CRITBINOM / BINOM.INV | 累積二項分布がα以上になる最小の成功回数(本記事) |
| BINOM.DIST | 二項分布の確率(個別 or 累積) |
| BINOM.DIST.RANGE | 成功回数が指定範囲に収まる確率 |
| COMBIN関数 | 組み合わせの数(nCr)を計算 |
| PROB関数 | 値が指定範囲に収まる確率 |
| PERMUT関数 | 順列の数(nPr)を計算 |
「確率を求めたい」のか「臨界値(しきい値)を求めたい」のかで関数を選ぶのがコツです。CRITBINOM/BINOM.INVは後者、BINOM.DIST系は前者ですよ。
まとめ
CRITBINOM関数は、累積二項分布が基準値以上になる最小の成功回数を返す関数です。
- 構文:
=CRITBINOM(試行回数, 成功率, α)で、引数は3つとも必須 - 使いどころ: 品質管理の検品基準、A/Bテスト判定、リスク上限見積もりなど
- αの意味: 大きくするほど許容範囲が広がる(0.95なら「95%の確率で収まる上限」)
- 後継関数: Excel 2010以降はBINOM.INV関数が推奨。計算結果は同じ
- 既存シートのCRITBINOMは置換機能でBINOM.INVに統一していくとよい
合否判定のしきい値を統計的に決めたいときに、ぜひ活用してみてくださいね。
関数の一覧は「アルファベット順 Excel関数一覧」からご覧いただけます。
