「毎月3万円を20年積み立てたら、いくらになるんだろう?」
老後資金や教育資金の準備で、こんな疑問を持ったことはないでしょうか。電卓で複利計算(元利合計にも利息が付く仕組み)を一回ずつたたいていくのは、想像しただけでうんざりしますよね。
スプレッドシートのFV関数を使えば、利率・期間・毎月の積立額を入れるだけで、将来の受取額が一発で出ます。
この記事では、FV関数の基本構文から実務で使えるパターンまでをまとめて紹介します。教育資金・老後資金・住宅頭金などライフプラン別の実例も交えて解説していきますね。
FV関数とは?スプレッドシートで将来価値を計算する財務関数
FV関数(読み方:エフブイ)は、将来価値(Future Value)を計算する関数です。関数名はそのまま「Future Value(フューチャー・バリュー)」の頭文字に由来します。
将来価値とは「現在のお金が将来いくらになるか」を表す金額のこと。FV関数を使えば「毎月いくら積み立てたら、何年後にいくらになるか」が即座に分かります。
FV関数でできることをまとめると、次のとおりです。
- 積立投資の将来の受取額を計算する
- 定期預金の満期時の受取額を計算する
- 一括預入と毎月積立を組み合わせた計算をする
- 金利や積立額を変えたシミュレーションを比較する
- 教育資金・老後資金・住宅頭金などの目標貯蓄計画を立てる
NOTE
FV関数はGoogleスプレッドシートの全バージョンで使えます。ExcelのFV関数と完全互換なので、.xlsxファイルでやり取りしても数式はそのまま動きます。
FV関数の書き方(構文と引数)
基本構文
=FV(利率, 期間数, 定期支払額, [現在価値], [期首期末])
利率・期間数・定期支払額の3つが必須引数です。現在価値と期首期末は省略できます。
内部では複利計算式を使って算出しています。利率が0の場合は複利計算をせず、「定期支払額 × 期間数」の単純計算に切り替わります。
引数の意味
| 引数 | 必須/任意 | 説明 |
|---|---|---|
| 利率 | 必須 | 1期間あたりの利率。年利を月利に変換して指定する(年利/12) |
| 期間数 | 必須 | 支払い回数の合計。年数を月数に変換して指定する(年数*12) |
| 定期支払額 | 必須 | 毎期の積立額。マイナスで指定すると結果がプラス(受取額)で返る |
| 現在価値 | 任意 | 現時点の預入額。省略時は0として扱われる |
| 期首期末 | 任意 | 0=期末払い(既定)、1=期首払い |
月利・月数への変換ルール(最重要)
FV関数で最も多いミスが「年利・年数のまま指定してしまう」パターンです。
毎月積み立てる場合は、利率も期間も「月単位」に変換します。
| 入力する単位 | 変換式 | 例(年利3% / 5年) |
|---|---|---|
| 利率 → 月利 | 年利 / 12 | 3%/12 |
| 期間 → 月数 | 年数 * 12 | 5*12 |
WARNING
年利のまま指定すると、結果が数十倍に膨らむ致命的なミスになります。年利3%・5年積立なのに「2,000万円になります!」という数式が出てきたら、まず月利変換を疑ってください。
TIP
引数の構造はPMT関数とそっくりです。PMTは「毎月の支払額」を求め、FVは「将来の受取額」を求めます。引数の意味を覚えれば両方使いこなせますよ。
FV関数の基本的な使い方
まずはシンプルな例で動きを確かめましょう。
毎月の積立で将来額を求める
毎月1万円を年利3%で5年間積み立てた場合の将来額を計算します。
=FV(3%/12, 5*12, -10000)
結果は 646,467円 です。元本60万円(1万円 × 60か月)に利息46,467円が上乗せされます。
定期支払額をマイナスにする理由(符号ルール)
FV関数の定期支払額にマイナスを付けるのは、「支出(出金)」を表すためです。
スプレッドシートの財務関数は、お金の流れを符号で区別しています。
| お金の方向 | 符号 | 例 |
|---|---|---|
| 支払う(出金) | マイナス | 毎月の積立額・初期預入額 |
| 受け取る(入金) | プラス | 将来の受取額 |
積立額をマイナスで入れると結果がプラスで返り、プラスで入れると結果がマイナスになります。
「マイナスを付けるのが面倒」という場合は、数式全体の符号を反転させる方法もあります。
=-FV(3%/12, 5*12, 10000)
どちらでも結果は同じ646,467円です。ただし、符号ルールを意識する習慣をつけたほうが、PMTやPVと組み合わせるときに混乱しません。
期首払いと期末払いの違い
5つ目の引数で積立のタイミングを変えられます。
=FV(3%/12, 5*12, -10000, 0, 0) → 646,467円(期末払い)
=FV(3%/12, 5*12, -10000, 0, 1) → 648,083円(期首払い)
期首払いのほうが将来額が約1,600円多くなります。各期の初めに積み立てることで、運用期間が1期分長くなるためです。
実務では、給料日直後に積立する場合は期首払い(type=1)を使います。月末に余ったお金を積立する場合は期末払い(type=0)を選ぶと、リアルなシミュレーションになりますよ。
FV関数の実践パターン(積立・預金・複合)
積立投資の将来額を計算する
毎月3万円を年利5%で20年間積み立てた場合の将来額を求めます。
=FV(5%/12, 20*12, -30000)
結果は 12,331,010円 です。元本720万円に対して、複利の効果で約513万円の利息がつきます。
積立額を変えて比較したい場合は、定期支払額をセル参照にすると便利です。
| 毎月の積立額 | 20年後の将来額 | 元本との差(利息分) |
|---|---|---|
| 1万円 | 約411万円 | 約171万円 |
| 3万円 | 約1,233万円 | 約513万円 |
| 5万円 | 約2,055万円 | 約855万円 |
積立額が増えるほど利息の恩恵も大きくなります。セルに積立額を入れておけば、条件を変えるだけで結果が自動更新されますよ。
金利比較表を作る
金利の違いで将来額がどう変わるかを一覧表にすると、資産運用の判断材料になります。毎月3万円を10年間積み立てた場合の比較です。
| 年利 | 10年後の将来額 | うち利息分 |
|---|---|---|
| 0.5% | 約369万円 | 約9万円 |
| 3.0% | 約419万円 | 約59万円 |
| 5.0% | 約466万円 | 約106万円 |
元本はどのケースも360万円(3万円 × 120か月)です。年利が上がるほど利息の差が大きくなります。こうした比較表はFV関数ならすぐに作れますよ。
定期預金の満期額を計算する
100万円を年利0.5%の定期預金に5年間預けた場合の満期額を求めます。
一括預入で毎月の積立はないので、定期支払額を0にし、現在価値(pv)に預入額をマイナスで指定します。
=FV(0.5%/12, 5*12, 0, -1000000)
結果は 1,025,310円 です。5年後に約102.5万円を受け取れます(利息約2.5万円)。
一括預入+毎月積立の複合パターン
初期に50万円を預入し、さらに毎月2万円を年利2%で10年間積み立てるケースです。
=FV(2%/12, 10*12, -20000, -500000)
結果は 3,264,993円 です。初期預入50万円と毎月積立240万円(合計290万円)に複利が効いて、10年後に約326万円になります。
NOTE
現在価値(初期預入額)もマイナスで指定する点に注意してください。「お金を支払う方向」なのでマイナスです。プラスで指定すると結果がおかしな値になります。
ボーナス併用積立をシミュレーションする
「毎月3万円 + 年2回ボーナス月15万円」のように、通常月とボーナス月で積立額を分けたい場合もありますよね。このときはFV関数を2回使って合算します。
毎月3万円・年利3%・20年(月単位):
=FV(3%/12, 20*12, -30000) → 約9,856,166円
年2回ボーナス15万円・年利3%・20年(半期単位):
=FV(3%/2, 20*2, -150000) → 約8,201,925円
両者を合計すると、約1,805万円になります。
ボーナス積立は「期間=年×2」「利率=年利/2」と半期換算する点に注意してください。
ライフプラン別の活用例
教育資金(子供の進学費用)を準備する
子供の0歳から18歳までの18年間、毎月2万円を年利1%で積み立てた場合の進学資金を計算します。
=FV(1%/12, 18*12, -20000)
結果は 約471万円。元本432万円(2万円 × 216か月)に利息約39万円が上乗せされます。私立大学4年間の授業料目安(約400万円)をカバーできる水準ですね。
老後資金を積立NISAで準備する
30歳から60歳までの30年間、毎月3万円を年利4%で運用した場合の老後資金を計算します。
=FV(4%/12, 30*12, -30000)
結果は 約2,082万円。よく言われる「老後2000万円問題」の目安にちょうど到達します。
WARNING
あくまで複利計算上のシミュレーション値です。実際の投資信託は利回りが変動し、税金(NISA枠外なら約20.315%)や信託報酬がかかります。インフレで実質購買力が下がる点も含め、余裕を持った計画にしてくださいね。
住宅頭金を5年で貯める
「5年後に500万円の住宅頭金を貯めたい」というケースは、目標額が決まっているのでFV関数ではなくPMT関数の出番です。
=PMT(2%/12, 5*12, 0, 500000)
結果は 月々約-79,287円。年利2%で運用すれば、毎月約7.9万円の積立で目標達成できます。
FV関数とPMT関数を使い分けるコツは、「将来額を知りたい→FV」「目標から逆算したい→PMT」と覚えるとシンプルです。
年次推移をテーブルで可視化する
複利の効果は、年次推移をテーブルにすると一目瞭然です。毎月3万円・年利5%・20年積立を例にしてみましょう。
A列に経過年(1〜20)を入れ、B列に次の数式を入れます。
=FV(5%/12, A2*12, -30000)
| 経過年 | 元本累計 | FV関数の結果 | 利息分 |
|---|---|---|---|
| 5年 | 180万円 | 約204万円 | 約24万円 |
| 10年 | 360万円 | 約466万円 | 約106万円 |
| 15年 | 540万円 | 約801万円 | 約261万円 |
| 20年 | 720万円 | 約1,233万円 | 約513万円 |
経過年が長くなるほど、利息分の伸びが加速していくのがわかります。これが複利のパワーです。スプレッドシートのグラフ機能で折れ線グラフにすれば、上司や家族へのプレゼンにも使えますよ。
財務関数ファミリーとの使い分け(PV/PMT/NPER/RATE)
FV関数は「財務関数ファミリー」の1つです。利率・期間・支払額・現在価値・将来価値の5変数のうち、何を求めたいかによって使う関数が変わります。
| 関数 | 求めるもの | 使う場面 |
|---|---|---|
| FV | 将来価値 | 積立・預金の満期額を知りたいとき |
| PV | 現在価値 | 将来の受取額が今いくらに相当するかを知りたいとき |
| PMT | 定期支払額 | 毎月いくら積み立てればよいかを求めたいとき |
| NPER | 期間数 | 何年後に目標額に達するかを求めたいとき |
| RATE | 利率 | 目標額に達するために必要な利率を求めたいとき |
5つの関数は引数の構造が共通しています。FV関数を覚えれば、他の関数も理解しやすくなります。
不規則なキャッシュフローを扱う場合は、NPV関数(正味現在価値)も活用できます。FVが「一定の積立額の将来価値」を求めるのに対し、NPVは「金額が変動する現金収支」を扱います。
TIP
PV関数はFVの「逆算版」です。「10年後に500万円受け取るために、今いくら預ければいいか」を計算できます。詳しくはPV関数の使い方をご覧ください。
よくあるエラーと対処法
FV関数で「思った結果にならない」ケースをまとめました。
| 症状 | 原因 | 対処法 |
|---|---|---|
| 将来額が異常に大きい | 年利をそのまま指定している | 月利に変換する(年利/12) |
| 将来額が異常に大きい | 期間数を年数で指定している | 月数に変換する(年数*12) |
| 結果がマイナスになる | 定期支払額をプラスで入れている | 支出はマイナスで指定する。または =-FV(...) で符号を反転 |
| #NUM! エラーが出る | 利率にマイナスを指定している | 利率は正の数で指定する |
| #VALUE! エラーが出る | 引数に文字列を指定している | 数値のみ指定する |
| 結果が0になる | 定期支払額と現在価値の両方が0 | どちらかに金額を指定する |
TIP
最も多いミスは「年利と月利の変換忘れ」です。年利3%なら
3%/12と書くのを忘れずに。期間数も「年数 × 12」で月数に変換してください。結果が想定と桁違いに大きい場合は、まずこの2点を確認しましょう。
Excelとの違い
FV関数はExcelとGoogleスプレッドシートで完全に同じ動作をします。
| 項目 | Excel | Googleスプレッドシート |
|---|---|---|
| 構文 | =FV(利率, 期間, 定期支払額, [現在価値], [支払期日]) | =FV(利率, 期間数, 定期支払額, [現在価値], [期首期末]) |
| 動作 | 将来価値を返す | 将来価値を返す |
| 結果の符号 | プラス(受取)/ マイナス(支出) | プラス(受取)/ マイナス(支出) |
| 省略時の動作 | 現在価値=0, 支払期日=0 | 現在価値=0, 期首期末=0 |
引数名の表記が若干違うだけで、機能は完全に同じです。.xlsxファイルをGoogleスプレッドシートで開いても、FVの数式はそのまま動作します。チーム内でExcelとGoogleスプレッドシートが混在していても、FV関数で書いた家計簿や投資シミュレーションをそのまま共有できますよ。
まとめ
FV関数は、積立や預金の将来の受取額を計算する財務関数です。
ポイントを整理します。
- 構文は
=FV(利率, 期間数, 定期支払額, [現在価値], [期首期末]) - 利率は月利(年利/12)、期間数は月数(年数*12)で指定する
- 定期支払額はマイナスで入れると結果がプラス(受取額)になる
- 一括預入のみの場合は「現在価値」に預入額を指定し、定期支払額を0にする
- 一括預入+毎月積立の複合パターンも1つの式で計算できる
- ボーナス併用は通常月とボーナス月で2回計算して合算する
- 教育資金・老後資金・住宅頭金などのライフプラン設計に使える
- PV/PMT/NPER/RATEなど財務関数ファミリーと組み合わせると応用範囲が広がる
まずは =FV(3%/12, 5*12, -10000) で「毎月1万円・5年積立・年利3%」の将来額を試してみてください。自分の積立計画に置き換えて数値を変えるだけで、お金の見通しが一気にクリアになりますよ。
