「この数式、長すぎて何をやってるかわからない…」「同じVLOOKUPを3回も書いてしまった」。複雑な数式を組んでいると、こんな場面によく出くわしますよね。
LET関数を使うと、数式の中で「変数」を定義して繰り返し使い回せます。 同じ計算を何度も書かなくてよくなるうえ、変数名を付けることで数式の意味が一目でわかるようになります。
この記事では、LET関数の基本構文から、実務で役立つパターン6選、パフォーマンス改善の仕組み、よくあるエラーの対処法まで解説します。
スプレッドシートのLET関数とは?
LET関数(読み方: れっと)は、数式の中で変数を定義し、その変数を使って計算できる関数です。名前は英語の「let(〜を〜とする)」からきています。
たとえば VLOOKUP(A2,商品マスタ!A:C,3,FALSE) の結果を何度も使いたいとします。LET関数で price という変数に入れておけば、数式の中で price と書くだけで参照できます。
LET関数にできることをまとめると、次のとおりです。
- 数式の中で変数(名前と値のペア)を定義する
- 同じ計算を何度も書かずに済むので数式が短くなる
- 変数名を付けることで数式の意味が読み取りやすくなる
- 同じ計算は内部的に1回だけ実行されるためパフォーマンスが向上する
NOTE
LET関数はGoogleスプレッドシートの全アカウントで使えます。ExcelにもLET関数はありますが、Microsoft 365またはExcel 2021以降が必要です。
LET関数の書き方(構文と引数)
基本構文
=LET(名前1, 値1, [名前2, 値2, ...], 数式)
「名前」と「値」をペアで指定し、最後に「数式」を書きます。数式の中で定義した名前を変数として使えるのがポイントです。
引数の説明
| 引数 | 必須/任意 | 説明 |
|---|---|---|
| 名前1 | 必須 | 変数の名前。アルファベット・数字・アンダースコアで構成する |
| 値1 | 必須 | 名前1に割り当てる値。セル参照・数式・直接値のいずれも可 |
| 名前2, 値2〜 | 任意 | 2組目以降の変数定義。最大126組まで指定可能 |
| 数式 | 必須 | 定義した変数を使った計算式。最後の引数が数式になる |
変数名にはセル参照と同じ名前(A1やB2など)は使えません。price や total のように、中身がわかる名前を付けておくと読みやすくなりますよ。
TIP
引数の数は必ず 奇数 になります。「名前, 値」のペアが1組以上 + 最後の「数式」で、最低3つです。偶数個を指定するとエラーになるので注意してください。
LET関数の基本的な使い方
変数を1つ定義する
税込価格を計算する例です。
=LET(tax, 1.1, A2 * tax)
tax という変数に 1.1 を代入し、A2 に掛けています。A2 が 1000 なら結果は 1100 です。
変数を複数定義する
本体価格と税率をそれぞれ変数にして、税込価格を計算する例です。
=LET(price, A2, tax, 1.1, price * tax)
price に A2 の値、tax に 1.1 を代入し、最後の price * tax で計算しています。
変数を複数使うと「どの値が何を意味しているか」が明確になります。数式だけ見ても意味がわかるのがLET関数の大きなメリットですよ。
変数に数式の結果を代入する
変数の「値」には数式を直接書くこともできます。
=LET(total, SUM(B2:B10), avg, total / COUNTA(B2:B10), avg)
total に合計値を代入し、avg に平均値を代入しています。total を avg の計算で再利用しているのがポイントです。
先に定義した変数を後の変数で使えるので、段階的に計算を組み立てられます。
LET関数の実務パターン6選
パターン1: IF + VLOOKUP 数式をLETで整理する
LET関数が最も威力を発揮するのは、同じ計算が数式内で繰り返されるケースです。
Before(LETなし):
=IF(VLOOKUP(A2,商品マスタ!A:C,3,FALSE)>=1000, VLOOKUP(A2,商品マスタ!A:C,3,FALSE)*0.9, VLOOKUP(A2,商品マスタ!A:C,3,FALSE))
同じ VLOOKUP が3回も登場していて読みにくいですよね。
After(LETあり):
=LET(price, VLOOKUP(A2,商品マスタ!A:C,3,FALSE), IF(price>=1000, price*0.9, price))
VLOOKUPの結果を price に1回だけ代入しています。数式の長さが半分以下になり、何をしているかも一目でわかります。
パターン2: 同じ計算を繰り返さずパフォーマンスを改善する
LET関数を使うと、変数に代入した計算は内部的に 1回だけ 実行されます。
先ほどのBefore版ではVLOOKUPが3回実行されますが、After版のLET関数では1回で済みます。データ量が多いシートでは、この差が処理速度に影響してきます。数千行のデータでVLOOKUPやSUMIFSを繰り返している場合は要注意ですよ。
パターン3: FILTER + SORT の組み合わせ
FILTER関数の結果を変数に入れて、さらに加工する例です。
=LET(filtered, FILTER(A2:C20, B2:B20="東京"), SORT(filtered, 3, FALSE))
東京のデータだけをFILTERで抽出し、その結果を3列目(売上など)の降順でソートしています。FILTERとSORTを別々に書くと入れ子が深くなりますが、LET関数で段階的に処理すると読みやすくなります。
パターン4: IFS関数の条件をLETで整理する
IFS関数で複数条件を判定する数式をLETで整理する例です。
=LET(score, B2, IFS(score>=90,"S", score>=70,"A", score>=50,"B", TRUE,"C"))
B2 を score という変数に代入しています。IFS関数の中で score を4回参照していますが、変数名のおかげで「何を判定しているか」が明確です。
パターン5: 中間計算を変数にして段階的に処理する
複数ステップの計算を変数で整理する例です。
=LET(
raw_total, SUMIF(A:A, "東京", C:C),
target_count, COUNTIF(A:A, "東京"),
avg_sales, raw_total / target_count,
avg_sales * 1.05
)
東京の合計売上を raw_total、件数を target_count、平均を avg_sales と段階的に定義し、最後に5%増しの値を返しています。計算の流れが一目でわかりますよ。
パターン6: XMATCH + INDEX の動的参照をLETで整理する
XMATCH関数とINDEX関数の組み合わせをLETで整理する例です。
=LET(
row_pos, XMATCH(G2, A:A),
col_pos, XMATCH(H2, 1:1),
INDEX(A:Z, row_pos, col_pos)
)
行方向・列方向のマッチ位置をそれぞれ変数に入れてから、INDEXで値を取り出しています。変数名がないと何を意味するのか読み解くのが大変になりますよ。
よくあるエラーと対処法
| 症状 | 原因 | 対処法 |
|---|---|---|
| #NAME? エラーが出る | 変数名にセル参照と同じ名前(A1, B2など)を使っている | セル参照と重複しない名前に変更する(例: val, x) |
| #NAME? エラーが出る | 変数名にスペースや記号を含めている | アルファベット・数字・アンダースコアのみ使用する |
| #VALUE! エラーが出る | 引数の数が偶数になっている(数式が抜けている) | 最後に数式を追加する。引数の数は奇数が正しい |
| 変数が認識されない | 数式の中でスペルミスがある | 変数名の大文字小文字を含めて正確に一致させる |
TIP
変数名はシンプルに短く付けるのがおすすめです。
x,val,priceのように意味がわかる最小限の名前にしておくと、数式全体が読みやすくなります。
ExcelとGoogleスプレッドシートの違い
| 項目 | Excel | Googleスプレッドシート |
|---|---|---|
| 対応バージョン | Microsoft 365 / Excel 2021以降 | 全アカウント対応 |
| 構文 | =LET(名前1, 値1, …, 数式) | =LET(名前1, 値1, …, 数式) |
| 変数ペアの上限 | 126組 | 126組 |
| パフォーマンス最適化 | あり(1回だけ計算) | あり(1回だけ計算) |
構文も動作もほぼ同じです。Excelのファイルをスプレッドシートで開いてもLET関数はそのまま動作します。ただし、Excel 2021より前のバージョンでは #NAME? エラーになります。
よくある質問
LET関数とLAMBDA関数の違いは何ですか?
LET関数は「数式の中で変数を定義する」関数です。LAMBDA関数は「再利用可能なカスタム関数を定義する」関数で、別のセルから呼び出せる点が異なります。「数式を読みやすくしたい」ならLET、「同じ処理を複数の場所で使い回したい」ならLAMBDAが適しています。
変数に範囲(配列)を代入できますか?
できます。=LET(data, A2:C20, SORT(data, 1)) のように、セル範囲やFILTER関数の結果など配列を変数に代入して使えます。
引数の最大数はありますか?
名前と値のペアを最大126組(252引数)と、最後の数式を合わせた253引数まで指定できます。実務ではここまで使うことはほとんどありませんが、上限として覚えておくとよいですね。
まとめ
LET関数は、数式の中で変数を定義して再利用できる関数です。
- 構文は
=LET(名前1, 値1, ..., 数式)で、名前と値をペアで指定する - 同じ計算を何度も書かなくて済むので、数式が短くなる
- 変数名を付けることで、数式の意味が読み取りやすくなる
- 同じ計算は内部的に1回だけ実行されるため、パフォーマンスも向上する
- 引数の数は必ず奇数。偶数だとエラーになる
- 変数名にセル参照と同じ名前(A1など)は使えない
まずは =LET(x, 10, x*2) で「変数 x に10を入れて2倍 = 20」から試してみてください。慣れてきたら、長いVLOOKUPやFILTER式を変数で整理することから始めると、数式の見通しが格段によくなりますよ。
関連記事: スプレッドシートのLAMBDA関数の使い方 / スプレッドシートのFILTER関数の使い方 / スプレッドシートのXMATCH関数の使い方
