「全社員の評価データがそろっているけど、ばらつきをどう数値化すればいいんだろう?」。こんな悩みを持ったことはありませんか?
平均値だけでは、データが均一なのかバラバラなのかが見えませんよね。全員分のデータがそろっているなら、母集団の標準偏差を正確に求められます。
そんなときに使うのがSTDEV.P関数です。この記事では基本の書き方から実務での活用例まで解説します。STDEV.S関数との違いや旧STDEVP関数との互換性もあわせて整理しました。
STDEV.P関数とは?母集団の標準偏差を求める関数
STDEV.P関数(読み方: エスティーデブ・ピー)は、データの母集団の標準偏差を返す関数です。「STDEV」は「Standard Deviation(標準偏差)」、「P」は「Population(母集団)」の頭文字です。
標準偏差とは、データが平均値からどれくらい離れているかを数値化した指標です。値が大きいほどデータのばらつきが大きく、小さいほど平均値の近くにデータが集まっています。
身近な例で考えてみましょう。全店舗の月間売上が手元にあるとします。平均が100万円でも、全店舗が90〜110万円に収まっているのか、50〜150万円までバラバラなのかで状況は大きく変わりますよね。この「ばらつきの大きさ」を数値で返してくれるのがSTDEV.P関数です。
STDEV.P関数にできることをまとめると、次のとおりです。
- 母集団全体のデータからばらつき(標準偏差)を正確に求める
- 全店舗・全社員・全製品など、データが全部そろっている場面で使う
- 複数のデータ群のばらつきを比較する
- AVERAGE関数と組み合わせて「平均 +/- 標準偏差」の範囲を求める
NOTE
STDEV.P関数はExcel 2010以降で使えます。Microsoft 365、Excel 2013〜2024のすべてのバージョンに対応しています。
STDEV.P関数の書き方(構文と引数)
基本構文
=STDEV.P(数値1, [数値2], ...)
カッコの中に、標準偏差を求めたいデータやセル範囲を指定します。
引数の説明
| 引数 | 必須/任意 | 説明 |
|---|---|---|
| 数値1 | 必須 | 標準偏差を求めたい最初の値またはセル範囲 |
| 数値2, … | 任意 | 追加の値またはセル範囲。最大253個まで指定可能 |
引数にはセル参照、セル範囲、数値を直接指定できます。
TIP
セル範囲に含まれる文字列・論理値(TRUE/FALSE)・空白セルは自動的に無視されます。数値だけが計算の対象になります。
「母集団」の標準偏差とは?
STDEV.P関数が返すのは母集団の標準偏差です。ちょっとむずかしく聞こえますが、考え方はシンプルです。
- 母集団: データが全部そろっている場合(例: クラス30人全員のテスト結果、全10店舗の売上)
- 標本: データの一部だけを取り出した場合(例: 社員1,000人のうち100人を抜き出して調査)
手元のデータが「全体そのもの」なら、STDEV.P関数を使います。計算では「n」で割って正確な標準偏差を求めます。
データが全体の一部だけなら、STDEV.S関数を使います。この違いについては後半の「使い分け」セクションで詳しく説明します。
STDEV.P関数の基本的な使い方
以下の売上データでSTDEV.P関数を使ってみましょう。
B2からB11に全10店舗の月間売上データ(万円)が入っているとします。
| A列(店舗名) | B列(売上) | |
|---|---|---|
| 2行目 | 渋谷店 | 120 |
| 3行目 | 新宿店 | 85 |
| 4行目 | 池袋店 | 200 |
| 5行目 | 横浜店 | 150 |
| 6行目 | 大宮店 | 95 |
| 7行目 | 千葉店 | 180 |
| 8行目 | 立川店 | 110 |
| 9行目 | 町田店 | 130 |
| 10行目 | 川崎店 | 160 |
| 11行目 | 吉祥寺店 | 140 |
標準偏差を求める
=STDEV.P(B2:B11)
結果は約 35.6 です。各店舗の売上が平均値(137万円)から、平均して約35.6万円離れていることを意味します。
STDEV.S関数との結果の違い
同じデータでSTDEV.S関数を使うと約 37.5 になります。STDEV.P関数のほうが値がやや小さくなります。
| 関数 | 結果 | 割る数 |
|---|---|---|
| STDEV.P | 約35.6 | n(10) |
| STDEV.S | 約37.5 | n-1(9) |
全店舗のデータがそろっているこの場面では、STDEV.P関数が正確な値を返します。
TIP
標準偏差を平均値で割った値を変動係数(CV)と呼びます。
=STDEV.P(B2:B11)/AVERAGE(B2:B11)で求められ、単位が違うデータ同士のばらつきも比較できますよ。
STDEV.P関数の実践的な使い方・応用例
全店舗の売上ばらつきを月ごとに比較する
「月によって店舗間のばらつきが変わるかどうか」を分析したい場面です。
B2からB11に1月の売上、C2からC11に2月の売上が入っているとします。
=STDEV.P(B2:B11)
=STDEV.P(C2:C11)
| 月 | 平均売上 | 標準偏差 |
|---|---|---|
| 1月 | 137万円 | 35.6 |
| 2月 | 142万円 | 18.2 |
2月のほうがばらつきが小さいですね。つまり2月は各店舗の売上が平均値に近く、全体的に安定していたことがわかります。季節ごとの傾向を把握して、ばらつきが大きい月に重点的な施策を打つ判断に使えますよ。
全社員の評価点でばらつきを分析する
人事評価で「評価のばらつきが部署によって異なるか」を確認する場面です。
D2からD31にA部署30人全員の評価点、E2からE21にB部署20人全員の評価点が入っているとします。
=STDEV.P(D2:D31)
=STDEV.P(E2:E21)
結果を比較して、ばらつきが大きい部署は評価基準の運用にばらつきがある可能性を検討できます。全社員のデータがそろっている場面なので、STDEV.P関数が適切です。
「平均 +/- 標準偏差」で標準的な範囲を求める
データの約68%は「平均 +/- 1標準偏差」の範囲に収まるといわれています(正規分布の場合)。この性質を使って「標準的な範囲」を算出してみましょう。
=AVERAGE(B2:B11) - STDEV.P(B2:B11)
=AVERAGE(B2:B11) + STDEV.P(B2:B11)
先ほどの売上データなら、結果は約 101.4〜172.6 万円です。この範囲から外れている店舗は「特に好調」か「てこ入れが必要」と判断する目安になります。
TIP
管理上限・管理下限を「平均 +/- 3倍の標準偏差」で設定すれば、品質管理で使われる3シグマルールが適用できます。全数検査のデータならSTDEV.P関数がぴったりですよ。
よくあるエラーと対処法
#DIV/0!エラー
STDEV.P関数で最もよく見るエラーです。以下の原因が考えられます。
| 原因 | 対策 |
|---|---|
| 範囲内に数値が含まれていない | 文字列ばかりの範囲を指定していないか確認する |
| 空のセル範囲を指定している | データが入力されているセル範囲を確認する |
STDEV.S関数とは異なり、STDEV.P関数は数値が1個でも計算できます(結果は0)。ただし数値がゼロ個だとエラーになります。
#VALUE!エラー
引数に文字列を直接入力すると発生します。
=STDEV.P("100", "200") → #VALUE!エラー
=STDEV.P(100, 200) → 正常に計算される
セル範囲内に文字列がある場合は自動で無視されますが、引数として直接文字列を渡すとエラーになります。
結果が0になるケース
すべてのデータが同じ値の場合、標準偏差は0になります。これはエラーではなく「ばらつきがまったくない」という正しい結果です。
また、数値が1個しかない場合も結果は0になります。STDEV.S関数では#DIV/0!エラーになる場面なので、挙動の違いに注意してください。
TIP
期待した結果にならないときは、セル範囲に文字列が混ざっていないか確認してください。STDEV.P関数は文字列を無視するため、データ件数が想定より少なくなっている可能性があります。COUNT関数で数値の個数を確認するのがおすすめです。
STDEV.S関数・旧STDEVP関数との違い・使い分け
STDEV.P関数とSTDEV.S関数の違い
STDEV.P関数とSTDEV.S関数は、どちらも標準偏差を求める関数ですが、計算方法が異なります。
| 項目 | STDEV.P | STDEV.S |
|---|---|---|
| 正式名称 | 母集団の標準偏差 | 標本標準偏差 |
| 割る数 | n | n – 1(不偏推定) |
| 使う場面 | データが全部そろっているとき | データが全体の一部のとき |
| 結果 | やや小さくなる | やや大きくなる |
同じデータでもSTDEV.S関数のほうが値がやや大きくなります。これは「一部のデータから全体のばらつきを推定する」ための補正です。
どちらを使えばいいか迷ったら
以下の基準で判断してみてください。
- STDEV.P関数を使う場面: クラス全員のテスト結果、全社員の売上データ、全店舗の月間売上、全製品の検査データ
- STDEV.S関数を使う場面: アンケート結果(回答者は全体の一部)、サンプル検査、一部の顧客データの分析
判断のポイントは「手元のデータが対象の全数かどうか」です。
- 全店舗10店のデータを10店分持っている → STDEV.P
- 全社員500人のうち50人だけ調査した → STDEV.S
NOTE
データ件数が30を超えると、STDEV.P関数とSTDEV.S関数の差はほとんどなくなります。どちらを使っても実務上の問題はありません。迷ったらSTDEV.S関数を選んでおけば安全です。
旧STDEVP関数との互換性
STDEV.P関数はExcel 2010で導入された「新しい名前」の関数です。旧STDEVP関数と計算結果はまったく同じです。
| 項目 | STDEV.P | STDEVP(旧) |
|---|---|---|
| 導入バージョン | Excel 2010 | Excel 2003以前 |
| 計算結果 | 同一 | 同一 |
| 今後のサポート | 推奨 | 互換性のために残存 |
Microsoftは新しい関数名(STDEV.P / STDEV.S)の使用を推奨しています。既存のブックで旧STDEVP関数を使っていても問題はありませんが、新規で数式を作るときはSTDEV.P関数を使いましょう。
TIP
旧STDEVP関数で作られたブックをSTDEV.Pに書き換える必要はありません。結果は変わらないので、そのまま使い続けて大丈夫です。
関連関数の一覧
| 関数 | 説明 | 計算方法 |
|---|---|---|
| STDEV.P | 母集団の標準偏差(数値のみ) | nで割る |
| STDEV.S | 標本標準偏差(数値のみ) | n-1で割る |
| STDEVP | STDEV.Pの旧名称 | nで割る |
| STDEV | STDEV.Sの旧名称 | n-1で割る |
| STDEVPA | 母集団の標準偏差(文字列・論理値も含む) | nで割る |
| VAR.P | 母分散 | nで割る |
| VAR.S | 標本分散 | n-1で割る |
| AVERAGE | 平均値を求める | — |
まとめ
STDEV.P関数は、母集団全体のデータから標準偏差を返す関数です。
この記事のポイント
- 構文は
=STDEV.P(数値1, [数値2], ...)で、セル範囲を指定するだけ - 標準偏差はデータのばらつきを数値化した指標。値が大きいほどばらつきが大きい
- データが「全部そろっている」→ STDEV.P関数、「全体の一部」→ STDEV.S関数
- 旧STDEVP関数と計算結果は同じ。新規で作るならSTDEV.Pを使う
- 全店舗の売上分析や全社員の評価分析など、全数データの場面で活躍する
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STDEV.P関数の使い方がわかったら、以下の関数もあわせて覚えてみてください。データ分析の幅が広がりますよ。
