ExcelのBINOM.DIST.RANGE関数の使い方|「○回以上○回以下」の確率を求める方法

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「100個中、不良品が3個以上7個以下に収まる確率を出してほしい」と上司から振られたとします。BINOM.DISTで一個ずつ足し算するのは面倒ですし、引き算式は間違えやすいですよね。

そんなときに便利なのが、ExcelのBINOM.DIST.RANGE関数です。試行回数と成功確率さえわかれば、「○回以上○回以下成功する確率」を一発で計算できる二項分布の専用関数です。

この記事では、Excel BINOM.DIST.RANGE関数の使い方を、基本構文から実務での使いどころまで丁寧に紹介します。BINOM.DIST関数との違いもあわせて整理するので、どちらを使えばよいか迷っている方もぜひ参考にしてください。

BINOM.DIST.RANGE関数とは?

BINOM.DIST.RANGE関数は、二項分布における「s回以上s2回以下成功する確率」を求める関数です。BINOM.DIST関数の発展形で、範囲指定の累積確率に特化しています。

二項分布が使えるのは、次の3つの条件を満たす試行に限ります。

  • 結果が「成功」か「失敗」の2択である
  • 各試行の成功確率が一定である
  • 各試行が他の試行に影響されない(独立試行)

サイコロで1の目が出る回数や、不良率2%の製品から抽出した不良品の数などが典型例ですね。

二項分布の基本や「ちょうどx回」「x回以下」の確率計算については、ExcelのBINOM.DIST関数の使い方で詳しく解説しています。本記事と合わせて読むと理解が深まります。

BINOM.DIST.RANGE関数の基本構文

=BINOM.DIST.RANGE(試行回数, 成功確率, 成功回数, [成功回数の上限])

英語表記の引数名と日本語の対応は次のとおりです。

引数英語名内容必須/省略可
第1引数trials独立試行の回数(n)必須
第2引数probability_s1回の試行で成功する確率(0以上1以下)必須
第3引数number_s成功回数の下限(s)必須
第4引数number_s2成功回数の上限(s2)省略可

第4引数(s2)が省略可能な点が、この関数の大きな特徴です。省略時の挙動は後ほど詳しく説明します。

引数の詳細

第1引数の試行回数は0以上の整数を指定します。小数を入れると自動で切り捨てられます。

第2引数の成功確率は0以上1以下の小数で指定します。たとえば不良率2%なら「0.02」、確率50%なら「0.5」と入力します。

第3引数の成功回数(下限)は、0以上「試行回数」以下の整数を指定します。第4引数の成功回数の上限は、第3引数以上「試行回数」以下の整数です。

BINOM.DIST関数との違い

BINOM.DISTとBINOM.DIST.RANGEは、どちらも二項分布の確率を求める関数ですが、得意な計算が違います。

やりたいことBINOM.DISTBINOM.DIST.RANGE
ちょうどx回成功する確率=BINOM.DIST(x,n,p,FALSE)=BINOM.DIST.RANGE(n,p,x)
x回以下成功する確率=BINOM.DIST(x,n,p,TRUE)=BINOM.DIST.RANGE(n,p,0,x)
s回以上s2回以下成功する確率=BINOM.DIST(s2,n,p,TRUE)-BINOM.DIST(s-1,n,p,TRUE)=BINOM.DIST.RANGE(n,p,s,s2)

ざっくりまとめると、「範囲を指定したいときはBINOM.DIST.RANGE」「累積確率や確率質量だけならBINOM.DIST」と覚えておくとよいでしょう。

BINOM.DIST.RANGE関数の基本的な使い方

実際の数値を入れて、BINOM.DIST.RANGE関数の動きを見ていきます。サンプルは「コインを10回投げて表が出る回数」の例です。1回の試行で表が出る確率は0.5、試行回数は10回とします。

例1:ちょうどx回成功する確率

第4引数を省略すると、「ちょうどx回成功する確率」になります。

=BINOM.DIST.RANGE(10, 0.5, 5)

このとき返ってくる値は約0.246です。「コインを10回投げて、表がちょうど5回出る確率は約24.6%」という意味になります。

これはBINOM.DIST関数のFALSEモード(確率質量)と同じ結果です。

=BINOM.DIST(5, 10, 0.5, FALSE)

第4引数を省略したBINOM.DIST.RANGEは、BINOM.DIST(FALSE)と同等です。この点は後の「第5引数を省略するとどうなる?」セクションで詳しく見ていきます。

例2:s回以上s2回以下成功する確率(メイン用途)

BINOM.DIST.RANGE関数の真価が発揮されるのは、範囲指定をしたときです。

=BINOM.DIST.RANGE(10, 0.5, 3, 5)

返ってくる値は約0.568です。「コインを10回投げて、表が3回以上5回以下出る確率は約56.8%」と読みます。

同じことをBINOM.DISTで計算するとこうなります。

=BINOM.DIST(5, 10, 0.5, TRUE) - BINOM.DIST(2, 10, 0.5, TRUE)

引き算する側の第1引数が「2」になっている点に注目してください。「3回以上」を含めるためには、「2回以下の確率」を引かないといけないからです。「3回以下を引いたら3回ちょうどの分が消える」と覚えておくと間違いません。

BINOM.DIST.RANGEを使えば、こうした「マイナス1」の調整を意識せずに済むのが大きなメリットです。

第5引数(s2)を省略するとどうなる?

第5引数(成功回数の上限、s2)は省略可能ですが、ここに大きな勘違いポイントがあります。

省略時は「ちょうどs回」と同じ結果になる

第5引数を省略したBINOM.DIST.RANGEは、「s回以下」の累積確率にはなりません。「ちょうどs回」の確率質量 が返ります。

=BINOM.DIST.RANGE(10, 0.5, 3)

これは「成功が3回以上か?」ではなく、「ちょうど3回成功する確率」を返します。値は約0.117です。

BINOM.DISTとの結果比較

引数の指定方法と結果の対応関係を整理します。

数式意味値(10回試行・確率0.5の場合)
=BINOM.DIST.RANGE(10, 0.5, 3)ちょうど3回成功する確率約0.117
=BINOM.DIST(3, 10, 0.5, FALSE)ちょうど3回成功する確率約0.117
=BINOM.DIST(3, 10, 0.5, TRUE)3回以下成功する累積確率約0.172
=BINOM.DIST.RANGE(10, 0.5, 0, 3)0回以上3回以下成功する確率約0.172

「s2を省略すると累積確率が出る」と思い込んでいると、まったく違う数字が返ってきて慌てます。「s2省略 = ちょうどs回」 とセットで覚えておきましょう。

「s回以下」を求めたいときは、第3引数に0、第5引数に上限値を指定します。

BINOM.DIST.RANGEを実務で使う3つのシーン

ここからは、BINOM.DIST.RANGE関数が業務で活きる場面を3つ紹介します。

シーン1:品質管理(不良品が許容範囲に収まる確率)

製造ラインで、製品100個を抜き取って検査するとします。不良率は過去実績から2%とわかっています。「不良品が0〜3個に収まる確率」を出したい場合の数式がこちらです。

=BINOM.DIST.RANGE(100, 0.02, 0, 3)

返ってくる値は約0.859です。「100個中、不良品が0〜3個で済む確率は約85.9%」となります。逆に「4個以上の不良品が出る確率」は約14.1%です。

抜き取り検査の合格基準を「不良品3個以下なら合格」と決めた場合、その基準で約86%のロットが合格になる、という設計判断ができます。

シーン2:アンケート集計(回収数が見込み幅に入る確率)

200件のアンケートを発送し、過去実績から回収率は35%と想定します。「回収数が60〜80件の範囲に入る確率」を計算するとこうなります。

=BINOM.DIST.RANGE(200, 0.35, 60, 80)

返ってくる値は約0.880です。「回収数が60〜80件に収まる確率は約88.0%」です。

「最低60件は欲しい」というKPIを設定するなら、「60件未満になる確率」を別途計算して、配布数を増やすかどうかの判断材料にできます。

シーン3:営業KPI(成約数の達成確率帯)

商談50件、成約率25%の営業チームで、「成約数が10〜15件に収まる確率」を出します。

=BINOM.DIST.RANGE(50, 0.25, 10, 15)

返ってくる値は約0.595です。「50商談中、成約数が10〜15件に収まる確率は約59.5%」となります。

「目標の12件に達する確率は?」を別途調べたければ、=BINOM.DIST.RANGE(50, 0.25, 12, 50) で「12件以上の確率」が出ます。シナリオ分析を関数1つで完結できる点が、BINOM.DIST.RANGEの強みです。

BINOM.DISTで代替する方法と比較

BINOM.DIST.RANGEと同じ計算は、BINOM.DISTの引き算でも実現できます。それぞれの特徴を整理しておきます。

引き算で求める方法

「s回以上s2回以下の確率」を BINOM.DIST で出す数式はこちらです。

=BINOM.DIST(s2, n, p, TRUE) - BINOM.DIST(s-1, n, p, TRUE)

第1引数の s-1 がポイントです。「s回以上」を含めるためには、s-1回以下の累積確率を引く必要があります。たとえば「3回以上5回以下」なら、BINOM.DIST(5,...,TRUE) - BINOM.DIST(2,...,TRUE) です。

どちらを使うべきか

観点BINOM.DIST.RANGEBINOM.DIST 引き算
数式の短さ短い(関数1つ)長い(関数2つ + 引き算)
「s-1」の調整不要必要(間違えやすい)
確率質量も出せるs2省略で可FALSEモードで可
対応バージョンExcel 2010以降Excel 2010以降

範囲指定で確率を出す場面では、シンプルなBINOM.DIST.RANGEを使うのが安全です。BINOM.DISTの引き算は、検算用や、複数の確率を組み合わせて条件分岐したいときの選択肢として覚えておくとよいでしょう。

BINOM.DIST.RANGE関数のよくあるエラーと対処法

BINOM.DIST.RANGEを使っているとき、エラーが出るパターンと対処法をまとめます。

エラー主な原因対処法
#NUM!試行回数が負の数0以上の整数に修正する
#NUM!成功確率が0未満または1超過0以上1以下に修正する
#NUM!成功回数(下限)が負またはtrials超過0以上trials以下に修正する
#NUM!成功回数の上限が下限より小さいs ≦ s2 になるよう修正する
#NUM!成功回数の上限がtrials超過trials以下に修正する
#VALUE!引数のいずれかが数値以外セル参照先のデータ型を確認する

#NUM! エラーで一番多いのは、「成功回数の下限と上限を逆に指定した」パターンです。=BINOM.DIST.RANGE(10, 0.5, 5, 3) のように下限5・上限3と指定するとエラーになります。

成功確率を「2%」と入力したつもりで「2」と入れてしまうケースもあります。確率は0以上1以下の小数で指定するので、2%は「0.02」と書く必要があります。

二項分布関連関数との使い分け

二項分布まわりの関数は複数あります。それぞれの役割を整理しておきましょう。

関数主な用途使う場面
BINOM.DISTちょうどx回 / x回以下の確率単点・累積確率を出したいとき
BINOM.DIST.RANGEs回以上s2回以下の確率範囲指定で確率を出したいとき(本記事)
BINOM.INV累積確率からの逆算「90%確率で達成できる成功回数は?」を逆引き
CRITBINOMBINOM.INVの旧名(互換性関数)古いブックの保守時のみ
COMBIN組み合わせ数 nCr二項分布の数学的検算用

確率の方向(質量・累積・逆算)と引数の数で、自然と使い分けが決まります。BINOM.DISTの基本を押さえたうえで、範囲ならBINOM.DIST.RANGE、逆算ならBINOM.INVと階段状に覚えていくのがおすすめです。

まとめ

ExcelのBINOM.DIST.RANGE関数は、「s回以上s2回以下成功する確率」を一発で計算できる二項分布の専用関数です。BINOM.DISTでも同じ結果を出せますが、引き算の調整(s-1)が不要で、数式がシンプルになるのが大きな魅力です。

この記事のポイントを振り返ります。

  • BINOM.DIST.RANGEは範囲指定の確率計算に特化した関数
  • 第5引数(s2)を省略すると「ちょうどs回」の確率になる(累積確率にはならない点に注意)
  • 品質管理・アンケート集計・営業KPIなど、業務での活用範囲は広い
  • BINOM.DIST引き算式の代替として使うと、計算ミスを防げる

二項分布関連の関数は、セットで覚えると理解が一気に深まります。基本のBINOM.DISTがまだの方はExcelのBINOM.DIST関数の使い方を、累積確率からの逆算が必要な方はBINOM.INV関数の解説記事もチェックしてみてください。

確率にもとづいた業務判断を、関数1つで素早く出せるようにしておくと、データに強い同僚として頼られる場面がきっと増えますよ。

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