毎月、各支店から送られてくるExcelブックを1つずつ開いて、中身をコピーして集計用シートに貼り付けて……という作業を繰り返していませんか。ファイルが5個、10個と増えるほど、この単純作業は時間を食ううえにミスの温床になります。
Power Queryには「フォルダから結合」という機能があり、決まったフォルダを指定するだけで、その中に入っている複数のExcelブックを縦にまとめて1つの表にしてくれます。しかも一度設定してしまえば、翌月は新しいファイルをフォルダに置いて「更新」ボタンを押すだけ。集約作業がほぼ自動化されます。
この記事では、複数の支店別・月別Excelブックをフォルダ指定で一括結合する手順を、前提条件から運用方法まで順を追って解説します。Power Queryそのものが初めての方は、先にPower Queryとは|モダンExcelの三本柱を完全解説で全体像をつかんでおくと、この記事の内容がよりスムーズに理解できます。
フォルダ結合がうまくいくための前提条件
フォルダ結合は強力な機能ですが、対象ファイルの中身がバラバラだと正しく結合できません。設定を始める前に、次の3つを揃えておくことが成功の鍵です。
1. 列構成(見出し)を全ファイルで統一する
A列が「日付」、B列が「商品名」、C列が「金額」というように、すべてのブックで列の順番と見出しが揃っている必要があります。ある支店だけ列の順番が違ったり、余計な列が混ざっていたりすると、結合後の表で値がずれてしまいます。
2. 取り込むシート名を統一する
各ブックでデータが入っているシートの名前を揃えておきます。たとえば全ブックで「売上」というシート名にしておけば、Power Query側で「売上シートだけを取り込む」という指定がしやすくなります。シート名がバラバラだと意図しないシートまで結合対象になることがあります。
3. 対象ファイルだけをフォルダに入れる
指定したフォルダの中にあるファイルは原則すべて結合対象になります。集計に関係ないメモ用ブックや一時ファイルが混ざっていると、それも取り込もうとしてエラーになります。結合用のフォルダは専用に1つ作り、対象ブックだけを入れておくのが安全です。
この「揃える」作業を最初に徹底しておくだけで、後の手順がぐっと楽になります。支店にファイルを送ってもらうときは、配布用のテンプレートを1つ用意して、それを各支店に記入してもらう運用にすると、列構成もシート名も自然に揃います。
フォルダから結合する基本手順
前提が整ったら、実際にPower Queryで結合していきます。Excelの「データ」タブから操作します。
- データタブ → データの取得 → ファイルから → フォルダーから を選びます。
- 結合したいExcelブックが入っているフォルダを指定します。
- フォルダ内のファイル一覧がプレビュー表示されます。ここで内容を確認したら、画面下の 結合 ボタンの右側にある三角を押し、データの結合と変換 を選びます。
- 「Filesの結合」ダイアログが開きます。サンプルファイルとして1つ目のブックの中身が表示されるので、取り込みたいシート(またはテーブル)を選んで OK を押します。
これだけで、フォルダ内の全ブックの同じシートが縦に連結された1つの表が、Power Queryエディターに表示されます。あとは右上の 閉じて読み込む を押せば、Excelのシートに結合結果が一括で書き出されます。
最初は手順が多く感じるかもしれませんが、実際にやってみると数クリックで終わります。重要なのは、3の「データの結合と変換」を選ぶことです。ここで単に「読み込む」を選ぶとファイルの一覧だけが取り込まれてしまうので注意してください。
ヘルパークエリの仕組みを理解する
フォルダ結合を実行すると、画面左のクエリ一覧に見慣れないクエリやフォルダーがいくつも自動生成されます。「サンプルファイル」「ファイルの変換」「パラメーター1」といったものです。これらをまとめてヘルパークエリと呼びます。
ヘルパークエリの役割は、ざっくり言うと「1つのファイルに対する処理手順をテンプレート化し、それをフォルダ内の全ファイルに自動で適用する」ことです。仕組みを分解すると次のようになります。
- サンプルファイル: フォルダ内の最初の1つを「お手本」として取り込んだもの。どのシートをどう読むかをここで定義します。
- ファイルの変換: サンプルファイルに対して行った処理(シートの選択など)を、1つの関数としてまとめたもの。
- メインのクエリ: フォルダ内の各ファイルに対して「ファイルの変換」関数を順番に適用し、結果をすべて縦に連結します。
つまり、お手本に対して1回だけ整形手順を作れば、同じ手順がフォルダ内の全ファイルに自動展開される、という設計です。最初は触らずに、まず結合結果を眺めてみるのがおすすめです。仕組みを把握したい場合は「サンプルファイル」クエリの整形手順を確認すると、どんな処理が全ファイルに適用されているかが見えてきます。
もし結合後に「不要な行を消したい」「列を1つ削除したい」といった共通の整形をしたい場合は、メインのクエリ側で追加するのが基本です。各ファイル共通の前処理(ヘッダー行の調整など)はサンプルファイル側で行います。データの整形そのものの基本操作はPower Queryでデータクレンジングを始める基本ステップで詳しく扱っているので、合わせて読んでみてください。
ファイルを追加したら「更新」ボタンで取り込む運用
フォルダ結合の最大のメリットは、ここからの運用にあります。翌月、新しい支店ブックが届いたときの作業はとてもシンプルです。
- 届いたExcelブックを、結合用フォルダに保存する。
- 集計用のExcelファイルを開き、データタブ → すべて更新 を押す。
たったこれだけで、新しく追加したファイルの中身が自動的に結合結果に追加されます。クエリを作り直す必要は一切ありません。フォルダの中身を見て、新しいファイルがあれば自動で取り込んでくれるからです。
この運用に乗せると、毎月の集約作業は「ファイルをフォルダに入れる → 更新を押す」だけになります。手作業のコピペが消えるので、貼り付け漏れや行ずれといったミスも起きません。
注意点として、追加するファイルも前提条件(列構成・シート名の統一)を必ず満たしている必要があります。新しいファイルだけ列構成が違うと、その分だけ値がずれたりエラーになったりします。配布テンプレートを使い回すルールを徹底しておきましょう。
ファイル名を列として残すテクニック(Source.Name)
複数ファイルを結合すると、どの行がどのファイル(=どの支店・どの月)から来たのかが分からなくなってしまいます。そこで役立つのが Source.Name 列です。
フォルダ結合を行うと、Power Queryは自動的に Source.Name という列を生成し、各行の出どころとなったファイル名をそこに記録してくれます。たとえばファイル名を「2026-05_東京支店.xlsx」のように決めておけば、Source.Name列を見るだけで月と支店が一目で分かります。
このSource.Name列を活用すると、結合後にできることが一気に広がります。
- ファイル名から「支店名」や「年月」を別の列に切り出す(区切り文字での列分割)。
- 切り出した支店名や年月を使って、ピボットテーブルやPower Queryのグループ化で集計する。
もしSource.Name列が表示されていない、あるいは結合の過程で消してしまった場合は、メインのクエリの整形ステップを見直すと復活させられます。ファイル名の付け方を「年月_支店名」のように統一しておくことが、後の分析のしやすさを大きく左右します。命名ルールは最初に決めておくのがおすすめです。
CSV結合との違いと使い分け
フォルダ結合はCSVファイルに対しても使えますが、Excelブックの結合とは少し勝手が違います。違いを押さえておくと、トラブルを避けられます。
CSVの場合: 1ファイル=1つの表というシンプルな構造なので、フォルダを指定すればほぼそのまま縦結合できます。シート選択の手間がなく、設定は最も簡単です。文字コードや区切り文字さえ揃っていれば、サクッと結合できます。
Excelブックの場合: 1ファイルの中に複数シートが存在しうるため、「どのシートを取り込むか」をサンプルファイルで指定する必要があります。その分ひと手間増えますが、シート名を統一しておけば問題なく扱えます。
使い分けの目安としては、データの配布元がCSVを出せるならCSVのほうが結合は手軽です。一方、支店側が普段からExcelで入力していて書式やシート構成を保ちたい場合は、Excelブックのまま結合するのが現実的です。どちらの形式でも「列構成を揃える」という前提は共通なので、まずはそこを最優先で整えましょう。
なお、結合したいデータがWeb上の表として公開されている場合は、フォルダではなくPower QueryでWebサイトのデータを取得する方法が使えます。データの所在に応じて取得方法を選び分けると、Power Queryの活用幅がさらに広がります。
まとめ
Power Queryのフォルダ結合を使えば、複数の支店別・月別Excelブックを、フォルダ指定だけで縦に一括結合できます。要点を整理します。
- 結合前に列構成とシート名を全ファイルで統一し、専用フォルダに対象ブックだけを入れておく。
- データタブの「フォルダーから」→「データの結合と変換」で結合する。
- 自動生成されるヘルパークエリが、お手本の整形手順を全ファイルに展開してくれる。
- 翌月以降はファイルをフォルダに置いて「すべて更新」を押すだけで取り込める。
- Source.Name列でファイル名(支店・年月)を保持し、後の集計に活かす。
最初の設定さえ済ませれば、毎月のコピペ集約作業から解放されます。まずは数個のサンプルブックで一度試してみて、更新ボタンで新ファイルが取り込まれる感覚をつかんでみてください。Power Query全体の使い方をさらに深めたい方は、Power Queryとは|モダンExcelの三本柱を完全解説やはじめてのPower Queryも参考になります。
