「固定資産の減価償却費を毎年手計算するのが面倒…」と感じたことはありませんか。電卓で割り算すれば出る計算でも、資産が増えると管理が大変です。計算ミスが税務書類に影響するリスクもあります。
ExcelのSLN関数を使えば、定額法の減価償却費をセル1つで自動計算できます。この記事では、SLN関数の基本的な使い方から固定資産台帳の作り方、DB・DDB関数との違いまでわかりやすく解説していきますよ。
SLN関数とは?定額法で減価償却費を求めるExcelの財務関数
SLN関数は、定額法(ていがくほう)で1期あたりの減価償却費を求める関数です。取得価額から残存価額を引いた金額を、耐用年数で均等に割って計算します。
SLN関数の読み方と名前の由来
読み方は「エスエルエヌ」です。英語の「Straight Line(直線)」の略で、毎年同じ金額を償却する直線的なイメージが名前の由来になっています。
対応バージョンはExcel 2003以降・Microsoft 365です。Googleスプレッドシートでも同じ構文で使えますよ。
定額法のしくみ(毎年同額を償却する考え方)
定額法は、固定資産の価値を毎年同じ金額ずつ減らしていく方法です。計算式はとてもシンプルです。
減価償却費 = (取得価額 - 残存価額) / 耐用年数
たとえば100万円のPCを4年で償却する場合、毎年25万円ずつ費用計上します。金額が一定なので、予算の見通しが立てやすいのが特徴です。
「残存価額(ざんぞんかがく)」とは、耐用年数が終わったあとに残る資産の価値のことです。「耐用年数(たいようねんすう)」は、その資産を使える期間の目安を指します。どちらも減価償却の基本用語なので覚えておいてくださいね。
SLN関数の書き方(構文と引数)
基本構文
=SLN(取得価額, 残存価額, 耐用年数)
引数は3つだけです。シンプルなので覚えやすいですよ。
引数一覧(表で整理)
| 引数 | 必須/省略可 | 説明 |
|---|---|---|
| 取得価額(cost) | 必須 | 資産の購入金額を指定する |
| 残存価額(salvage) | 必須 | 耐用年数経過後の資産価値を指定する |
| 耐用年数(life) | 必須 | 資産を償却する期間(年数)を指定する |
SLN関数が内部で行っている計算はこちらです。
SLN = (cost - salvage) / life
単純な引き算と割り算ですが、関数を使えばセル参照で一括管理できます。複数の資産をまとめて計算するときに便利ですよ。
SLN関数の基本的な使い方
固定資産の年間償却費を求める
取得価額100万円、残存価額10万円、耐用年数5年のケースで基本的な使い方を確認しましょう。
| セル | 内容 | 値 |
|---|---|---|
| B2 | 取得価額 | 1,000,000 |
| B3 | 残存価額 | 100,000 |
| B4 | 耐用年数 | 5 |
=SLN(B2, B3, B4)
結果は180,000円です。(1,000,000 – 100,000)÷ 5 = 180,000 なので、計算が合っていますね。
値を直接指定する場合はこのように書きます。
=SLN(1000000, 100000, 5)
結果は同じ180,000円です。毎年同じ金額が返るのが定額法の特徴です。
残存価額を1円にするケース(現行定額法)
2007年4月以降に取得した資産には、現行の定額法が適用されます。現行定額法では、残存価額を1円(備忘価額)とします。
=SLN(1000000, 1, 5)
結果は199,999.8円です。旧定額法(2007年3月以前取得)では残存価額を取得価額の10%としていました。旧定額法で計算する場合はこちらです。
=SLN(1000000, 1000000*0.1, 5)
結果は180,000円になります。取得時期によって残存価額の設定が異なるので、対象資産がどちらに該当するか確認してみてください。
【実務例】固定資産ごとの減価償却費を計算する
ここでは、よくある固定資産3種類の償却費をSLN関数で求めてみましょう。いずれも現行定額法(残存価額1円)で計算します。耐用年数は国税庁の「耐用年数等に関する省令」別表に基づいています。
PC(耐用年数4年)
取得価額30万円のノートPCを4年で償却する例です。
=SLN(300000, 1, 4)
結果は74,999.75円です。毎年約7.5万円を経費計上できます。
車両(耐用年数6年)
取得価額300万円の社用車を6年で償却する例です。
=SLN(3000000, 1, 6)
結果は499,999.83円です。毎年約50万円の償却費になります。
機械設備(耐用年数10年)
取得価額500万円の機械設備を10年で償却する例です。
=SLN(5000000, 1, 10)
結果は499,999.9円です。耐用年数が長いほど1年あたりの償却費は小さくなります。
このように資産ごとにSLN関数を設定しておけば、取得価額や耐用年数を変えるだけで自動再計算されますよ。
減価償却費の年次計算表をExcelで作る
1資産の年次推移表(期首帳簿価額・償却費・期末帳簿価額)
SLN関数を使って、年ごとの帳簿価額の推移を表にしてみましょう(償却費はROUND後の整数値)。取得価額100万円、残存価額1円、耐用年数5年の例です。
| 年度 | 期首帳簿価額 | 償却費 | 期末帳簿価額 |
|---|---|---|---|
| 1年目 | 1,000,000 | 200,000 | 800,000 |
| 2年目 | 800,000 | 200,000 | 600,000 |
| 3年目 | 600,000 | 200,000 | 400,000 |
| 4年目 | 400,000 | 200,000 | 200,000 |
| 5年目 | 200,000 | 199,999 | 1 |
償却費のセルには =SLN($B$2, $B$3, $B$4) を入れます。期末帳簿価額は「期首帳簿価額 – 償却費」で求めます。
最終年度は端数調整が必要です。5年目の償却費を199,999円にして、期末帳簿価額がちょうど1円(備忘価額)になるようにします。最終年度だけ =期首帳簿価額 - 1 とするのがポイントです。
NOTE
SLN関数は端数を含む値を返します。実務では
ROUND関数で丸めてから使うのが一般的です。=ROUND(SLN(B2, B3, B4), 0)のように整数に丸めておくと、帳簿との照合がスムーズですよ。
複数資産を並べた固定資産一覧表の構成
複数の固定資産をまとめて管理するには、次のような一覧表が便利です。
| 資産名 | 取得日 | 取得価額 | 残存価額 | 耐用年数 | 年間償却費 |
|---|---|---|---|---|---|
| ノートPC | 2024/4/1 | 300,000 | 1 | 4 | 74,999.75 |
| 社用車 | 2024/4/1 | 3,000,000 | 1 | 6 | 499,999.83 |
| 機械設備 | 2024/4/1 | 5,000,000 | 1 | 10 | 499,999.9 |
年間償却費の列に =SLN(C2, D2, E2) と入力し、下方向にコピーするだけで全資産の償却費が求まります。資産が増えても行を追加するだけで対応できるので、固定資産台帳の管理がとても楽になりますよ。
SLN・DB・DDB関数の違いと使い分け
Excelには定額法以外の減価償却関数もあります。目的に応じて使い分けましょう。
3つの償却方法の比較表
| 項目 | SLN(定額法) | DB(定率法) | DDB(二重定率法) |
|---|---|---|---|
| 構文 | =SLN(cost, salvage, life) | =DB(cost, salvage, life, period) | =DDB(cost, salvage, life, period) |
| 償却パターン | 毎年同額 | 初年度が大きく徐々に減少 | 初年度が最大で急速に減少 |
| 計算方法 | (cost – salvage) / life | 帳簿価額 × 逓減率 | 帳簿価額 × (2 / life) |
| 向いている場面 | 均等に費用配分したいとき | 早期に多く償却したいとき | 最も早く償却したいとき |
SLN関数だけが period(期)の引数を持ちません。毎年同額なので、期を指定する必要がないためです。
同じ条件での償却額シミュレーション
取得価額100万円、残存価額10万円、耐用年数5年で比較します。
| 年度 | SLN(定額法) | DB(定率法) | DDB(二重定率法) |
|---|---|---|---|
| 1年目 | 180,000 | 369,000 | 400,000 |
| 2年目 | 180,000 | 232,839 | 240,000 |
| 3年目 | 180,000 | 146,922 | 144,000 |
| 4年目 | 180,000 | 92,698 | 86,400 |
| 5年目 | 180,000 | 58,471 | 29,600 |
=SLN(1000000, 100000, 5) → 180,000(毎年同額)
=DB(1000000, 100000, 5, 1) → 369,000(1年目)
=DDB(1000000, 100000, 5, 1) → 400,000(1年目)
定額法は毎年フラットで予算管理がしやすいのが特徴です。定率法・二重定率法は初年度に大きく償却するため、利益を早く圧縮したい場合に向いています。自社の会計方針に合わせて使い分けてみてください。
SLN関数でよくあるエラーと対処法
#VALUE! エラー
引数に文字列や空白セルを指定すると発生します。セル参照先が数値になっているか確認しましょう。
=SLN("百万", 1, 5) → #VALUE! エラー
対処法は、引数に正しい数値を指定することです。セル参照を使っている場合は、参照先のセルの表示形式が「文字列」になっていないかもチェックしてください。
#DIV/0! エラー
耐用年数に0を指定すると、ゼロ除算になるため発生します。
=SLN(1000000, 1, 0) → #DIV/0! エラー
耐用年数は必ず1以上の値を指定してください。耐用年数のセルが空白の場合も0と見なされてこのエラーが出るので注意しましょう。
#NUM! エラー
耐用年数に負の値を指定すると #NUM! エラーになります。
=SLN(1000000, 1, -3) → #NUM! エラー
耐用年数は正の数を指定してください。
計算結果が税務書類と一致しないケース
SLN関数の結果と税務申告書の金額がずれることがあります。主な原因は次の3つです。
- 端数処理の違い: SLN関数は小数を含む値を返しますが、税務では円未満を切り捨てるのが一般的です。
=ROUNDDOWN(SLN(...), 0)で切り捨てましょう - 事業年度の月数按分: 年度途中で取得した資産は、使用月数で按分が必要です。SLN関数は年額を返すため、
=SLN(...) * 使用月数 / 12で調整します - 残存価額の設定ミス: 旧定額法(取得価額の10%)と現行定額法(1円)を取り違えると金額が変わります
税務書類との照合でずれが出たら、まずこの3点を確認してみてくださいね。
まとめ
ExcelのSLN関数は、定額法で1期あたりの減価償却費を求める関数です。
ポイントをおさらいしておきましょう。
- SLN関数は「取得価額」「残存価額」「耐用年数」の3つで償却費を計算できる
- 現行定額法では残存価額を1円に設定する(2007年4月以降取得の資産)
- 固定資産一覧表にSLN関数を入れれば、複数資産の管理が効率化できる
- DB関数(定率法)・DDB関数(二重定率法)との違いを理解して使い分ける
- 税務書類と一致しない場合は、端数処理・月数按分・残存価額の設定を確認する
減価償却についてさらに詳しく知りたい方は、AMORDEGRC関数(フランス式定額法)の解説記事もあわせてご覧ください。
固定資産の管理や予算策定で減価償却費が必要になったら、ぜひSLN関数を活用してみてください。
