「満期に利息が一括で支払われる割引債、今の時点で未収利息はいくらだろう?」と悩んだことはありませんか。手計算だと日数の数え方や年の日数(360日・365日・366日)でブレが出やすく、銘柄ごとに集計するのも一苦労ですよね。そんなときはExcelのACCRINTM関数を使えば、引数を5つ指定するだけで未収利息を一発で求められますよ。
この記事では、ACCRINTM関数の基本的な使い方を解説します。実務での活用パターン、よく似たACCRINT関数との違い、エラー対処法までまとめて紹介しますよ。
ExcelのACCRINTM関数とは?
ACCRINTM関数は、満期時に利息が一括で支払われる証券の未収利息を計算するExcelの財務関数です。
読み方は「アクルード・インタレスト・アット・マチュリティ」です。英語の「Accrued Interest at Maturity」の略で、直訳すると「満期時の未収利息」を意味します。
対象となるのは、ゼロクーポン債や割引債、割引短期国債(TB)など、満期まで利息の支払いがない証券です。こうした証券では途中で利息が入ってきません。そのため「今の時点でいくら利息が溜まっているか」を期末決算や中間時点で把握する場面で活用しますよ。
内部的には、次の計算式で未収利息を求めています。
未収利息 = 額面 × 利率 × YEARFRAC(発行日, 受渡日, 基準)
YEARFRAC関数は2つの日付間の年数を返す関数です。基準日数の設定によって結果が変わるため、ACCRINTM関数でも「基準」引数が重要になってきます。
対応バージョンはExcel 2007以降およびMicrosoft 365です。Excel for the webでも使えますよ。
ACCRINTM関数の書き方(構文と引数)
基本構文
=ACCRINTM(発行日, 受渡日, 利率, 額面, [基準])
引数は全部で5つあります。最後の「基準」だけ省略可能で、省略時は0(NASD方式)として扱われます。
引数の説明
| 引数 | 必須 | 説明 |
|---|---|---|
| 発行日 | はい | 証券の発行日 |
| 受渡日 | はい | 証券の受渡日(満期日や評価日) |
| 利率 | はい | 証券の年利率(例: 5%なら 0.05) |
| 額面 | はい | 証券の額面価格 |
| 基準 | いいえ | 基準日数の計算方式(0〜4、省略時は0) |
日付を指定するときはDATE関数を使うのがおすすめです。文字列で日付を入力すると、環境によってはエラーになることがあります。利率は必ず小数で指定してくださいね(5%なら0.05)。
基準日数の種類
「基準」引数で指定できる値は次の5種類です。
| 基準 | 計算方式 | 特徴 |
|---|---|---|
| 0(省略時) | 30日/360日(NASD方式) | 米国標準。各月を30日とみなす |
| 1 | 実際の日数/実際の日数 | 最も正確。閏年は366日で計算 |
| 2 | 実際の日数/360日 | 米国短期国債やマネーマーケットで使用 |
| 3 | 実際の日数/365日 | 日本の国債で広く使われる |
| 4 | 30日/360日(ヨーロッパ方式) | 欧州標準。月末処理がNASD方式と異なる |
基準の選び方で計算結果が変わるため、取引先の契約条件や社内ルールに合わせて選んでください。
ACCRINTM関数の基本的な使い方
額面100万円、年利5%の割引債について、発行日から受渡日までの未収利息を求めてみましょう。
条件:
- 発行日: 2024年4月1日
- 受渡日: 2024年10月1日
- 利率: 5%
- 額面: 1,000,000円
- 基準: 3(実際の日数/365日)
=ACCRINTM(DATE(2024,4,1),DATE(2024,10,1),0.05,1000000,3)
結果: 25,068円
計算の流れはこうなります。2024年4月1日から10月1日までは183日間です。基準3では年を365日として計算するため、年数は183÷365≒0.50137になります。これに額面100万円と利率5%を掛けると、25,068円が求められますよ。
セル参照を使う場合は次のように書きます。
=ACCRINTM(A2,B2,C2,D2,E2)
セルに値を入れておけば、条件を変えたときに数式を修正しなくて済むので便利です。複数の証券をまとめて管理するときも、この書き方で下にコピーするだけで一括計算できます。
ACCRINTM関数の実務活用パターン
基準日数による計算結果の比較
同じ条件でも、基準の設定によって結果が変わります。実務では「どの基準を使うか」が重要なので、違いを把握しておきましょう。
条件は先ほどと同じです(発行日2024/4/1、受渡日2024/10/1、利率5%、額面100万円)。次の表は、基準だけを変えたときの結果をまとめたものです。
| 基準 | 計算方式 | 結果 |
|---|---|---|
| 0 | 30日/360日(NASD) | 25,000円 |
| 1 | 実際/実際 | 25,000円 |
| 2 | 実際/360日 | 25,417円 |
| 3 | 実際/365日 | 25,068円 |
| 4 | 30日/360日(欧州) | 25,000円 |
基準0・1・4はいずれも25,000円ですが、基準2は25,417円、基準3は25,068円と差が出ます。基準2が最も高くなるのは、実際の日数(183日)を360日で割るため年数が大きく算出されるからです。基準1と基準3の差は、2024年が閏年のため基準1では年を366日、基準3は常に365日で計算することによるものです。
額面が大きくなるほどこの差が金額に響くため、取引条件で指定された方式に合わせてくださいね。
期末決算での未収利息計上
経理実務では、期末日時点でまだ受け取っていない利息を「未収収益」として計上する必要があります。割引債やゼロクーポン債を保有している場合、ACCRINTM関数で発行日から決算日までの経過利息を一発で求められますよ。
例えば、3月決算の会社が次の割引債を保有しているとします。
- 発行日: 2025年7月1日
- 決算日(受渡日に指定): 2026年3月31日
- 利率: 3%
- 額面: 5,000,000円
- 基準: 3(実際/365日)
=ACCRINTM(DATE(2025,7,1),DATE(2026,3,31),0.03,5000000,3)
決算日までの経過利息を「未収収益」として仕訳するときの参考になります。
複数の証券を一覧で管理する
複数の証券の未収利息をまとめて計算するなら、表形式で管理するのが効率的です。
A列に銘柄名、B列に発行日、C列に受渡日、D列に利率、E列に額面、F列に基準を入力しておき、G列に次の数式を入れます。
=ACCRINTM(B2,C2,D2,E2,F2)
G列を下にコピーすれば、全証券の未収利息が一括で計算できます。さらに、SUM関数でG列を合計すれば、ポートフォリオ全体の未収利息額もすぐに把握できますよ。
ACCRINT関数との違い・使い分け
ACCRINTM関数と名前がよく似たACCRINT関数があります。どちらも未収利息を求める関数ですが、対象とする証券が異なります。
| 比較項目 | ACCRINTM | ACCRINT |
|---|---|---|
| 対象 | 満期一括利払い証券 | 定期利払い証券 |
| 利息の支払い | 満期時に1回だけ | 年1回・半年ごとなど定期的 |
| 引数の数 | 5個 | 7〜8個 |
| 頻度の引数 | なし | あり(年1/2/4回) |
| 代表的な証券 | 割引債、割引短期国債(TB) | 利付国債、社債 |
ポイントは「利息が定期的に支払われるかどうか」です。
- 満期まで利息の支払いがない → ACCRINTM関数
- 半年ごと・年1回など定期的に利息が支払われる → ACCRINT関数
ACCRINT関数には「頻度」という引数があり、年何回利息が支払われるかを指定します。ACCRINTM関数にはこの引数がありません。満期に一括で支払われるため、頻度を指定する必要がないからです。
迷ったら「その証券は途中で利息をもらえるか?」と考えてみてください。途中でもらえるならACCRINT、満期まで待つならACCRINTMです。
関連する財務関数として、証券の利率を求めるINTRATE関数も合わせて覚えておくと便利ですよ。
ACCRINTM関数でよくあるエラーと対処法
ACCRINTM関数で発生しやすいエラーと対処法をまとめました。
#NUM! エラー
次のいずれかに該当すると #NUM! エラーになります。
- 発行日 ≧ 受渡日 → 発行日は受渡日より前の日付にする
- 利率 ≦ 0 → 利率は0より大きい値を指定する
- 額面 ≦ 0 → 額面は0より大きい値を指定する
- 基準が0〜4以外 → 0、1、2、3、4のいずれかを指定する
特に「発行日と受渡日が逆になっている」ケースは見落としやすいので、確認してみてくださいね。セル参照で日付を取得しているときは、データ入力ミスもチェックしましょう。
#VALUE! エラー
日付として認識できない値を指定すると #VALUE! エラーが返ります。日付の引数にはDATE関数やセル参照を使い、文字列を直接入力するのは避けましょう。
例えば "2024/4/1" のような文字列をそのまま渡すと、環境によってはエラーになります。DATE関数で DATE(2024,4,1) と書くか、日付として書式設定されたセルを参照するのが確実です。
まとめ
ExcelのACCRINTM関数は、満期時に一括で利息が支払われる証券の未収利息を計算する関数です。
この記事のポイントをおさらいします。
- 構文は
=ACCRINTM(発行日, 受渡日, 利率, 額面, [基準]) - 対象はゼロクーポン債や割引債など、満期一括利払いの証券
- 基準日数(0〜4)の選び方で計算結果が変わる
- 期末決算の未収収益計上やポートフォリオ管理で活躍する
- 定期利払い証券にはACCRINT関数を使う
基準の設定を間違えると金額にズレが出るので、取引条件をよく確認してから使ってみてくださいね。
