「STDEV.S関数ってSTDEV関数と何が違うの?」。スプレッドシートで標準偏差を調べていると、似た名前の関数がいくつも出てきて混乱しますよね。
結論からいうと、STDEV.S関数とSTDEV関数は同じ計算をする関数です。ただし名前が違う理由があり、使い分けのルールも知っておくと迷わなくなります。
この記事ではSTDEV.S関数の基本から実務での活用例まで解説します。STDEV関数やSTDEV.P関数との違いもあわせて整理しました。
スプレッドシートのSTDEV.S関数とは?標本標準偏差を求める関数
STDEV.S関数(読み方: エスティーデブ・エス関数)は、データの標本標準偏差を返す関数です。「STDEV」は「Standard Deviation(標準偏差)」、「S」は「Sample(標本)」の略です。
標本標準偏差とは、一部のデータから全体のばらつきを推定するための指標です。値が大きいほどデータのばらつきが大きくなります。
たとえば、社員1,000人のうち100人を抽出してアンケートを取ったとします。この100人分のデータは「標本(サンプル)」です。標本から全体のばらつきを推定するときにSTDEV.S関数を使います。
STDEV.S関数にできることをまとめると、次のとおりです。
- データのばらつき(標本標準偏差)を数値で求める
- 複数のデータ群のばらつきを比較する
- 品質管理やテスト結果の分析に活用する
- AVERAGE関数と組み合わせて「平均±標準偏差」の範囲を求める
NOTE
STDEV.S関数はGoogleスプレッドシートの全バージョンで使えます。Excelにも同名の関数があり、動作は同じです。STDEV関数とまったく同じ計算結果になります。
STDEV.S関数の書き方(構文と引数)
基本構文
=STDEV.S(値1, [値2], ...)
カッコの中に、標準偏差を求めたいデータやセル範囲を指定します。
引数の説明
| 引数 | 必須/任意 | 説明 |
|---|---|---|
| 値1 | 必須 | 標準偏差を求めたい最初の値またはセル範囲 |
| 値2, … | 任意 | 追加の値またはセル範囲。最大255個まで指定可能 |
引数にはセル参照、セル範囲、数値を直接指定できます。
TIP
セル範囲内の文字列・TRUE/FALSE・空白セルは自動的に無視されます。数値だけが計算の対象になりますよ。
「標本」標準偏差とは?
STDEV.S関数が返すのは標本標準偏差です。ちょっとむずかしく聞こえますが、考え方はシンプルです。
- 標本: データの一部だけを取り出した場合(例: 全社員のうち100人を抜き出して調査)
- 母集団: データが全部そろっている場合(例: クラス30人全員のテスト結果)
手元のデータが「全体の一部」なら、STDEV.S関数を使います。計算では「n-1」で割ることで、全体のばらつきをより正確に推定します。
データが全員分そろっているなら、STDEV.P関数を使います。この違いについては後半の「使い分け」セクションで詳しく説明しますね。
STDEV.S関数の基本的な使い方
以下の売上データでSTDEV.S関数を使ってみましょう。
B2からB8に7人分の月間売上データ(万円)が入っているとします。
| A列(担当者) | B列(売上) | |
|---|---|---|
| 2行目 | 田中 | 150 |
| 3行目 | 鈴木 | 80 |
| 4行目 | 佐藤 | 200 |
| 5行目 | 山田 | 120 |
| 6行目 | 高橋 | 90 |
| 7行目 | 伊藤 | 170 |
| 8行目 | 渡辺 | 130 |
標準偏差を求める
=STDEV.S(B2:B8)
結果は約 42.8 です。各担当者の売上が平均値(約134.3万円)から、平均して約42.8万円ずれていることを意味します。
検算してみましょう。平均値は(150+80+200+120+90+170+130)/7 = 940/7 ≒ 134.3です。各値と平均の差を2乗して合計し、(n-1)=6で割った値の平方根が標本標準偏差になります。
標準偏差の値をどう読むか
標準偏差の値だけでは「大きい」「小さい」の判断がしにくいですよね。比較対象があると意味が出てきます。
たとえば、2つのチームの売上データを比べてみましょう。
| チーム | 平均売上 | 標準偏差 |
|---|---|---|
| Aチーム | 134万円 | 42.8 |
| Bチーム | 134万円 | 15.0 |
平均売上は同じでも、Bチームのほうがばらつきが小さいことがわかります。Bチームは全員が安定して成果を出しているということですね。
TIP
標準偏差を平均値で割った値を変動係数(CV)(データのばらつきを相対的に比較する指標)と呼びます。
=STDEV.S(B2:B8)/AVERAGE(B2:B8)で求められますよ。単位が違うデータ同士のばらつきも比較できて便利です。
STDEV.S関数の実践的な使い方・応用例
「平均±標準偏差」の範囲で標準的なラインを出す
データの約68%は「平均±標準偏差」の範囲に収まるといわれています。この性質を使って「標準的な範囲」を求めてみましょう。
=AVERAGE(B2:B8) - STDEV.S(B2:B8)
=AVERAGE(B2:B8) + STDEV.S(B2:B8)
結果は約 91.5〜177.0 です。この範囲から外れている担当者は「特に成績が良い」か「改善が必要」と判断できます。
条件付き書式で外れ値をハイライトする
平均から標準偏差の2倍以上離れたデータを自動でハイライトすると、外れ値がひと目でわかります。
- B2:B8を選択する
- 「表示形式」→「条件付き書式」を開く
- 「カスタム数式」を選び、以下の数式を入力する
平均+2σ(シグマ)を超えるデータを赤にする場合:
=B2 > AVERAGE($B$2:$B$8) + 2*STDEV.S($B$2:$B$8)
平均-2σを下回るデータも赤にする場合:
=B2 < AVERAGE($B$2:$B$8) - 2*STDEV.S($B$2:$B$8)
これで、統計的に普通の範囲から大きく外れたデータが自動で色付けされます。品質管理や営業成績のモニタリングに活用してみてください。
偏差値を計算する
偏差値は「平均を50、標準偏差を10」に換算した指標です。STDEV.S関数とAVERAGE関数を組み合わせて求められます。
=50 + 10 * (B2 - AVERAGE($B$2:$B$8)) / STDEV.S($B$2:$B$8)
たとえば平均134.3万円、標準偏差42.8のデータで売上200万円なら、偏差値は約65.4です。自分の位置を直感的に把握できるので便利ですよ。
TIP
STDEV.S関数の結果が0のとき(全員同じ値のとき)、この数式は#DIV/0!エラーになります。IFERROR関数で囲んでおくと安心です。
よくあるエラーと対処法
#DIV/0!エラー
STDEV.S関数で最もよく見るエラーです。以下の原因が考えられます。
| 原因 | 対策 |
|---|---|
| 数値データが1個しかない | 2個以上の数値データを指定する |
| 範囲内に数値が含まれていない | 文字列ばかりの範囲を指定していないか確認する |
標準偏差を計算するには最低2個の数値が必要です。1個しかないと「ばらつき」を求められないためエラーになります。
#VALUE!エラー
引数に文字列を直接入力すると発生します。
=STDEV.S("100", "200") → #VALUE!エラー
=STDEV.S(100, 200) → 正常に計算される
セル範囲内に文字列がある場合は自動で無視されるので安心してください。文字列を直接引数として渡した場合にのみ発生するエラーです。
#NAME?エラー
関数名のスペルミスで発生します。「STDEV.S」のピリオドを忘れて「STDEVS」と入力すると、このエラーが出ます。
=STDEVS(B2:B8) → #NAME?エラー
=STDEV.S(B2:B8) → 正常に計算される
ピリオドの位置に注意してくださいね。
結果が0になるケース
すべてのデータが同じ値の場合、標準偏差は0になります。これはエラーではなく「ばらつきがまったくない」という正しい結果です。
TIP
期待した結果にならないときは、セル範囲に文字列が混ざっていないか確認してください。STDEV.S関数は文字列を無視するため、データ件数が想定より少なくなっている可能性があります。COUNT関数で数値の個数を確認するのがおすすめですよ。
STDEV関数・STDEV.P関数との違い・使い分け
STDEV.S関数とSTDEV関数の違い
結論からいうと、STDEV.S関数とSTDEV関数はまったく同じ関数です。
| 項目 | STDEV.S | STDEV |
|---|---|---|
| 計算結果 | 標本標準偏差 | 標本標準偏差 |
| 割る数 | n – 1 | n – 1 |
| 結果の違い | なし(完全に同じ) | なし(完全に同じ) |
ではなぜ2つの名前があるのでしょうか。もともとスプレッドシートには「STDEV」と「STDEVP」がありました。しかし「標本」と「母集団」の区別がわかりにくいという声がありました。そこで「STDEV.S」(Sample)と「STDEV.P」(Population)という対称的な名前が追加されたのです。
つまりSTDEV.Sは「STDEVの新しい名前」です。どちらを使っても結果は変わりません。
どちらを使えばいいか
新規で数式を書くならSTDEV.S関数がおすすめです。理由は以下のとおりです。
- STDEV.P関数と名前の対称性があり、使い分けがわかりやすい
- 「S = Sample(標本)」という意味が名前に含まれている
- 既存のSTDEV関数は今後も使えるので、書き換える必要はない
すでにSTDEV関数を使っている数式をわざわざ修正する必要はありませんよ。
STDEV.S関数とSTDEV.P関数の違い
STDEV.S関数とSTDEV.P関数は、計算方法が異なります。
| 項目 | STDEV.S | STDEV.P |
|---|---|---|
| 正式名称 | 標本標準偏差 | 母集団の標準偏差 |
| 割る数 | n – 1 | n |
| 使う場面 | データが全体の一部のとき | データが全部そろっているとき |
| 結果 | やや大きくなる | やや小さくなる |
同じデータでもSTDEV.S関数のほうが値がやや大きくなります。これは一部のデータから全体を推定するための補正です。
どちらを使うか迷ったら
以下の基準で判断してみてください。
- STDEV.S関数を使う場面: アンケート結果(回答者は全体の一部)、サンプル検査、一部の顧客データの分析
- STDEV.P関数を使う場面: クラス全員のテスト結果、全社員の評価データ、全店舗の月間売上
迷ったらSTDEV.S関数を選んでおけば安全です。n-1で割るほうが推定値として保守的になるため、判断を誤るリスクが低くなりますよ。
NOTE
データ件数が30を超えると、STDEV.S関数とSTDEV.P関数の差はほとんどなくなります。どちらを使っても実務上の問題はありません。
VAR.S関数との関係
VAR関数(VAR.S関数)は標本分散を返す関数です。分散と標準偏差の関係は以下のとおりです。
- 分散 = 標準偏差の2乗
- 標準偏差 = 分散の平方根(ルート)
つまり =STDEV.S(B2:B8) と =SQRT(VAR(B2:B8)) は同じ結果になります。
| 関数 | 返す値 | 単位 |
|---|---|---|
| VAR / VAR.S | 分散(標本分散) | 元データの2乗 |
| STDEV / STDEV.S | 標準偏差(標本標準偏差) | 元データと同じ |
標準偏差は元データと同じ単位なので直感的に理解しやすいです。実務ではSTDEV.S関数(標準偏差)を使うのが一般的ですよ。
関連関数の一覧
| 関数 | 説明 | 計算方法 |
|---|---|---|
| STDEV | 標本標準偏差 | n-1で割る |
| STDEV.S | STDEVと同じ(新名称) | n-1で割る |
| STDEV.P | 母集団の標準偏差 | nで割る |
| STDEVP | STDEV.Pの旧名称 | nで割る |
| VAR | 標本分散 | n-1で割る |
| VAR.P | 母分散 | nで割る |
まとめ
STDEV.S関数は、データの標本標準偏差を返す関数です。STDEV関数とまったく同じ計算をします。
この記事のポイント
- 構文は
=STDEV.S(値1, [値2], ...)で、セル範囲を指定するだけ - STDEV.S関数とSTDEV関数は同じ関数。「S = Sample(標本)」の意味
- 新規で書くならSTDEV.S関数がおすすめ(STDEV.Pとの対称性がわかりやすい)
- データが「全体の一部」→ STDEV.S関数、「全部そろっている」→ STDEV.P関数
- 迷ったらSTDEV.S関数を選んでおけば安全
関連する統計関数
STDEV.S関数の使い方がわかったら、以下の関数もあわせて覚えてみてください。データ分析の幅が広がりますよ。
