「35年ローンで利息はトータルいくら払うんだろう?」と気になったことはありませんか。Excelなら、CUMIPMT関数を使えばその答えを一瞬で出せます。毎月の返済額を計算するPMT関数は知っていても、累計利息まで求める方法は意外と知られていません。この記事では、住宅ローンを例にした3つの実例で、CUMIPMT関数の使い方を丁寧に解説します。
CUMIPMT関数とは?累計利息支払額を求めるExcel財務関数
CUMIPMT(読み方:キューム・アイ・ピー・エム・ティー)は、Excelの財務関数のひとつです。「Cumulative Interest Payment(累計利息支払額)」の略で、ローンの指定期間内に支払う利息の合計を求めます。
元利均等返済(毎月同額を返済する方式)を前提としています。住宅ローンや自動車ローンなど、一般的な銀行ローンはほぼこの方式なので、幅広い場面で使えます。
毎月の利息(IPMT)との違い
CUMIPMT と似た関数に IPMT関数 があります。違いはシンプルです。
| 関数 | 計算できること |
|---|---|
| IPMT | 1回分の支払い利息(例:第3回目の利息) |
| CUMIPMT | 複数回分の利息合計(例:1〜36回目の利息合計) |
「今月の利息はいくら?」という場面ではIPMTが便利です。「1年間の利息合計は?」「35年間の総利息は?」という場面ではCUMIPMTを使いましょう。
CUMIPMT関数の書式と引数の解説
=CUMIPMT(利率, 期間内支払回数, 現在価値, 開始期, 終了期, 支払期日)
引数は6つあります。表で整理しておきましょう。
| 引数 | 英語名 | 内容 |
|---|---|---|
| 利率 | rate | 1支払期間あたりの利率。年利なら÷12が必要 |
| 期間内支払回数 | nper | 総支払回数。35年月払いなら 35×12=420 |
| 現在価値 | pv | 借入元本。正の値で入力する |
| 開始期 | start_period | 計算を始める支払い回数番号(1〜) |
| 終了期 | end_period | 計算を終える支払い回数番号 |
| 支払期日 | type | 0=期末払い(通常)、1=期首払い |
年利を月利に変換する方法
「利率」引数は1支払期間あたりの利率を入れます。月払いなら「年利÷12」にするのが必須です。ここを忘れると計算結果が大幅に狂うので注意してください。
' 月払い:年利1.5%を月利に変換
利率 = 1.5% / 12 = 0.125%
年利と支払い頻度の変換をまとめると次のようになります。
| 支払い頻度 | 利率の変換 | 期間の変換 |
|---|---|---|
| 月払い | 年利 ÷ 12 | 年数 × 12 |
| 半年払い | 年利 ÷ 2 | 年数 × 2 |
| 四半期払い | 年利 ÷ 4 | 年数 × 4 |
年利と実効年利の変換が必要な場面では NOMINAL関数 も参考にしてみてください。
type引数(0と1)の使い分け
通常の銀行ローンは月末払いなので type=0 を使います。家賃や設備リースのような前払い型は type=1 です。迷ったら0を入れておけばほとんどのケースで問題ありません。
基本の使い方①|全期間の累計利息を計算する
住宅ローンの例で手順を確認しましょう。
条件設定
| 項目 | 値 | セル |
|---|---|---|
| 年利 | 1.5% | B1 |
| 借入期間(年) | 35 | B2 |
| 借入元本(円) | 30,000,000 | B3 |
数式(35年間の総累計利息)
=CUMIPMT(B1/12, B2*12, B3, 1, B2*12, 0)
引数を整理するとこうなります。
B1/12:月利(年利÷12)B2*12:総支払回数(35年×12か月=420回)B3:元本3,000万円1:第1回からB2*12:第420回まで(全期間)0:期末払い
この数式で約−857万円という結果が得られます(年利1.5%、35年、3,000万円の場合)。毎月の返済額は約91,855円、総返済額は約38,579,100円です。元本との差額が累計利息になりますよ。
なぜマイナスなの?
Excelの財務関数は「支払い=現金の流出=マイナス」として計算します。これはキャッシュフローの符号ルールと呼ばれる共通ルールです。表示には ABS関数(絶対値)でプラスに変換するのがおすすめです。
=ABS(CUMIPMT(B1/12, B2*12, B3, 1, B2*12, 0))
' → 約 8,579,100(プラス表示)
応用例②③|特定期間・残り返済分の利息を求める
②1〜3年目(第1〜36回)の利息合計
「最初の3年間で利息をいくら払うのか知りたい」というケースです。start_period と end_period を変えるだけです。
=CUMIPMT(B1/12, B2*12, B3, 1, 36, 0)
同じ条件(年利1.5%、3,000万円)だと約−131万円になります。返済初期は元金充当比率が低く、利息が多め。第1回目の利息だけで37,500円(3,000万円×0.125%)にもなります。
③10年経過後、残りの利息予測(第121〜420回)
「あと残りの25年間でいくら利息が発生するか」を確認したいときはこうです。
=CUMIPMT(B1/12, B2*12, B3, 121, 420, 0)
' 第121回(11年目)〜第420回(35年目末)
繰り上げ返済を検討するときに、残り利息を把握するのに使ってみてください。
CUMIPMT vs CUMPRINC|元金累計と利息累計の違いを比較
CUMPRINC(キューム・プリンク)は「累計元金返済額」を求める関数です。構文はCUMIPMTと全く同じで、引数の順番も同一です。
同条件での対比表
Microsoft公式のサンプル値(年利8%・10年・元本10万ドル)で比べてみましょう。
| 計算対象 | 数式 | 1年目の値 |
|---|---|---|
| 累計利息(CUMIPMT) | =CUMIPMT(0.08/12, 120, 100000, 1, 12, 0) | 約 −7,969ドル |
| 累計元金(CUMPRINC) | =CUMPRINC(0.08/12, 120, 100000, 1, 12, 0) | 約 −3,778ドル |
| 合計(総支払額) | CUMIPMT + CUMPRINC | 約 −11,747ドル |
この関係式が成り立ちます。
累計利息(CUMIPMT)+ 累計元金(CUMPRINC)= 総支払額(PMT × 支払回数)
返済を「利息コスト」と「元金返済」に分解して把握したいときに、2つの関数を組み合わせるのが便利ですよ。
| 関数 | 使う場面 |
|---|---|
| CUMIPMT | 利息コストの把握・節税計算(住宅ローン控除など) |
| CUMPRINC | ローン残債の確認・繰り上げ返済の計画 |
よくあるエラーと対処法
①#NUM!エラーの主な原因
#NUM!エラー(数値エラー)が出たときは、引数の値が不正な場合がほとんどです。
| 原因 | 誤った入力例 | 正しい入力 |
|---|---|---|
| 元本をマイナスで入力 | pv = -30000000 | pv = 30000000(正の値) |
| 開始期 > 終了期 | start=24, end=12 | start ≤ end |
| 利率が0以下 | rate = 0 | 正の値が必要 |
| typeが0・1以外 | type = 2 | 0か1のみ有効 |
PMT関数では元本にマイナスを使う書き方もありますが、CUMIPMTは元本を正の値で入力するルールです。混同しやすいので注意してください。
②結果がマイナスのまま集計すると起きるミス
CUMIPMTの結果はマイナスです。プラスの数値と足し算するときは、符号の扱いに気をつけましょう。
' NG:マイナスの累計利息を別のプラス値と足す
=CUMIPMT(...) + 別の費用 → 利息が引かれる計算になる
' OK:ABS関数でプラスに変換してから合算
=ABS(CUMIPMT(...)) + 別の費用
複数のCUMIPMT同士を合算するときは、どちらもマイナスなのでそのままSUMできます。
=CUMIPMT(...) + CUMIPMT(...) → 正しく動作する(どちらもマイナス)
③月利変換し忘れによる計算ミス
年利をそのまま rate に渡しても、#NUM!エラーにはなりません。しかし計算結果が実際の何百倍にもなる致命的な誤りです。
' NG:年利1.5%を月利に変換しないまま入力
=CUMIPMT(1.5%, 420, 30000000, 1, 420, 0)
' → エラーにはならないが、計算結果が大幅に狂う
' OK:月利に変換(÷12)
=CUMIPMT(1.5%/12, 420, 30000000, 1, 420, 0)
月払いなら必ず÷12を忘れずに入力してください。
関連財務関数のまとめ|PMT・IPMT・CUMPRINC・RATE・NPERとの使い分け
CUMIPMT をより活かすために、関連する財務関数も整理しておきましょう。
| 関数 | できること | 記事リンク |
|---|---|---|
| PMT | 毎月の返済額を求める | ローン計算の基本 |
| IPMT | 特定1回分の利息を求める | 月次利息内訳 |
| CUMPRINC | 期間内の累計元金返済額を求める | 残債・繰り上げ返済 |
| RATE | 利率(年利)を逆算する | 借入条件の確認 |
| NPER | 返済回数を逆算する | 完済時期の試算 |
使い分けの目安です。
「毎月いくら払う?」 → PMT
「今月の利息は?」 → IPMT
「1年間の利息合計は?」 → CUMIPMT
「ローン残高は?」 → 元本 − CUMPRINC
「年利はいくら?」 → RATE
「あと何回払う?」 → NPER
財務関数はどれもセットで使うことが多いです。PMT関数の記事と合わせて読んでおくと、Excelでの返済シミュレーション全体の流れが掴みやすくなりますよ。
