ExcelのBINOM.INV関数の使い方|二項分布の逆関数で必要試行回数を逆算する

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「不良率5%の製品を100個検査するとき、95%の確率で何個までに収まる?」。あるいは「成約率30%の営業で、80%の確率で達成できる成約数は?」。確率の方向を逆向きにたどりたい場面ってありますよね。

ExcelのBINOM.DIST関数は「成功回数 → 確率」を求める関数です。その逆向き、つまり「確率 → 成功回数」を求めてくれるのがBINOM.INV関数なんですね。

この記事ではExcelのBINOM.INV関数の使い方を、基本構文から実務活用例まで丁寧に解説します。順方向のBINOM.DIST関数との対比や、旧関数名CRITBINOMとの関係もあわせて紹介しますよ。

ExcelのBINOM.INV関数とは

ExcelのBINOM.INV関数(読み方: バイノム・インバース関数)は、二項分布の逆関数を計算する関数です。具体的には、累積確率が指定した値以上になる最小の成功回数を返してくれます。

関数名は「BINOM(Binomial: 二項)」と「INV(Inverse: 逆)」を組み合わせた名前です。「二項分布の逆関数」という意味ですね。

BINOM.DIST関数は「成功回数を入れて確率を返す」関数です。一方でBINOM.INV関数は「確率を入れて成功回数を返す」関数で、ちょうど方向が逆になります。

ExcelのBINOM.INV関数にできることをまとめると、次のとおりです。

  • 95%の確率で収まる不良品数の上限を求める(品質管理の合格ライン設定)
  • 90%の確率で集まる回答数の下限を求める(アンケートの最低見込み)
  • 80%の確率で達成できる成約数を逆算する(営業KPIの設計)
  • 確率に裏打ちされた業務判断のしきい値を統計的に決められる

NOTE

BINOM.INV関数はExcel 2010以降で利用できます。Excel for Web・Mac・Microsoft 365でも同じように動作しますよ。

順方向のBINOM.DISTとの違い

2つの関数の関係は、表にすると一目でわかります。

関数入力出力
BINOM.DIST成功回数確率(その回数になる確率や、その回数以下の累積確率)
BINOM.INV累積確率(α)成功回数(その確率を達成する最小の成功回数)

「成功回数 → 確率」がBINOM.DIST、「確率 → 成功回数」がBINOM.INVです。同じ二項分布のテーブルを、左右どちらから引くかの違いとイメージするとわかりやすいですよ。

二項分布が成り立つ3つの条件

BINOM.INV関数を使うときも、データが二項分布の前提を満たしている必要があります。

  1. 結果が2択: 各試行の結果は「成功」か「失敗」のどちらか
  2. 成功確率が一定: 毎回の試行で成功する確率が変わらない
  3. 各試行が独立: ある試行の結果が、次の試行の結果に影響しない

製品の検査、アンケートの回収、営業の成約、コイン投げなどはこの3条件を満たす典型的な場面です。前提を満たさないデータに当てはめると正しい結果になりません。

TIP

「日によって成功率が変わる」「前回の結果が次回に影響する」場合は二項分布が成り立ちません。たとえば対象者を選び直さないアンケートなどは独立性が崩れることがあります。

BINOM.INV関数の構文と引数

ExcelのBINOM.INV関数の基本構文は次のとおりです。

=BINOM.INV(試行回数, 成功確率, α)

カッコの中に3つの引数を指定します。すべて必須です。

引数必須/任意説明
試行回数(trials)必須試行の合計回数(0以上の整数)
成功確率(probability_s)必須各試行で成功する確率(0〜1の範囲)
α(alpha)必須基準となる累積確率の値(0〜1の範囲)

αの意味を押さえよう

3番目の引数αが、BINOM.INV関数を理解するうえで一番のポイントです。

αは「累積確率がこの値以上になる」基準を意味します。つまり、関数は次の条件を満たす最小の成功回数kを返してくれます。

P(X ≤ k) ≥ α を満たす最小の k

少し難しく見えますが、要は「累積確率がαに達する最初のkを探す」という処理です。手で確率を1つずつ足していく作業を、Excelが代わりにやってくれるイメージですね。

TIP

試行回数や成功回数に小数を指定すると、小数部分は切り捨てられます。たとえば100.7は100として処理されますよ。意図しない丸めを避けるため、整数で指定する習慣をつけましょう。

BINOM.INV関数の基本的な使い方

値を直接入力する方法

もっともシンプルな使い方は、引数に数値を直接入力する方法です。

=BINOM.INV(100, 0.05, 0.95)

この数式は「不良率5%の製品を100個検査したとき、累積確率が95%以上になる最小の不良品数」を返します。結果は 8 ですね。

つまり、100個中95%の確率で不良品は8個以下に収まる、という意味です。検品の合格基準として使えますよ。

セル参照を使う方法

実務ではセルに値を入力して参照する方法のほうが便利です。条件を変えながらシミュレーションできます。

A1に試行回数「100」、B1に成功確率「0.05」、C1にα「0.95」を入力した場合は次のように書きます。

=BINOM.INV(A1, B1, C1)

セル参照にしておけば、試行回数や確率を変えるだけで結果が自動的に再計算されます。品質管理の基準を検討するときに重宝しますよ。

αの値を変えて結果を比較する

同じデータでもαを変えると結果がどう変わるか、見てみましょう。試行回数100・成功確率0.05で固定したケースです。

数式α結果意味
=BINOM.INV(100, 0.05, 0.5)0.5550%の確率で収まる上限
=BINOM.INV(100, 0.05, 0.9)0.9890%の確率で収まる上限
=BINOM.INV(100, 0.05, 0.95)0.95895%の確率で収まる上限
=BINOM.INV(100, 0.05, 0.99)0.991099%の確率で収まる上限

αを大きくするほど、許容する成功回数が増える関係がわかります。これは「より確実に基準内に収めようとすると、許容範囲を広げる必要がある」という直感どおりの結果ですね。

品質基準をどの程度厳しくするかを検討するときの目安になりますよ。

ExcelのBINOM.INV関数の実務活用3パターン

基本がわかったところで、実際の業務で使えるパターンを3つ紹介します。

品質管理——95%の確率で収まる不良品数の上限

製造業の検品工程でよくある場面です。「不良率3%の製品を200個検査したとき、95%の確率で不良品は何個以下か」を判定します。

=BINOM.INV(200, 0.03, 0.95)

結果は 9 です。不良品が9個以下であればロット全体を合格と判定できます。統計的な裏付けにもとづいた品質管理ができますね。

検品マニュアルの合格ラインに記載すれば、検査員ごとのバラつきも防げますよ。

アンケート回答——90%の確率で集まる回答数の下限

アンケートの最低回答見込みを見積もるケースです。「1000人に送って回答率15%のとき、90%の確率で集まる回答数の下限は?」を求めてみましょう。

下限を求めたいときは、αに「1 − 信頼度」を指定するのがコツです。90%の確率で達成される下限なら、α=0.1ですね。

=BINOM.INV(1000, 0.15, 0.1)

結果は 138 です。90%の確率で138件以上の回答が集まる見込み、と説明できます。

「最低限これくらいは期待できる」という見積もり根拠として、企画書や報告書にそのまま転記できますよ。

営業成約——80%の確率で達成できる成約数

「成約率30%の営業担当が月50件商談したとき、80%の確率で達成できる成約数は?」を試算してみましょう。

これも下限の話なので、α=0.2(=1−0.8)で求めます。

=BINOM.INV(50, 0.3, 0.2)

結果は 12 です。50件商談すれば、80%の確率で12件以上は成約できる見込みになります。

KPIの目標値を「届きそうなライン」に設定するときに役立ちますよ。「達成不可能な目標」を避けつつ、「楽すぎない目標」を設定する根拠資料になります。

TIP

「上限」を求めたいときはα=0.95や0.99のように大きい値、「下限」を求めたいときはα=0.05や0.1のように小さい値を指定します。意味の取り違いを防ぐため、セルの隣にαと信頼度の対応表を書いておくと安心ですよ。

BINOM.DISTとBINOM.INVを行き来する

BINOM.INVで求めた結果は、BINOM.DISTで検算できます。お互いに逆向きの関数なので、つなげて使うと理解が深まりますよ。

たとえば =BINOM.INV(100, 0.05, 0.95) の結果が 8 だったとします。これをBINOM.DISTに渡してみましょう。

=BINOM.DIST(8, 100, 0.05, TRUE)

結果は約 0.9369(93.7%) です。「8個以下になる累積確率は93.7%」という意味ですね。

ここで「あれ、95%じゃないの?」と思った方は鋭いです。BINOM.INVは「累積確率がα以上になる最小の成功回数」を返します。そのため、k=7だと95%未満、k=8で初めて95%以上になる、という挙動になります。

参考までに、k=7で確認してみましょう。

=BINOM.DIST(7, 100, 0.05, TRUE)

結果は約 0.8720(87.2%) です。確かに95%に届いていません。だからBINOM.INVは8を返してくれたんですね。

NOTE

BINOM.INVが返す値は「αちょうどの確率になる成功回数」ではなく、「α以上を最初に満たす成功回数」です。離散的な分布なので、ぴったりαになる回数は基本的に存在しません。

CRITBINOM関数(旧名)との関係

ExcelにはCRITBINOMという関数もあります。これはBINOM.INVの旧関数名で、Excel 2007以前から使われていました。

Excel 2010で関数名がBINOM.INVに変更されました。CRITBINOMは互換性のために残されていますが、互換性関数という分類になっています。

=CRITBINOM(100, 0.05, 0.95)   ← 旧関数名(互換性のため残存)
=BINOM.INV(100, 0.05, 0.95)   ← 新関数名(推奨)

どちらを使っても計算結果はまったく同じです。違いは関数の世代だけですよ。

項目CRITBINOM(互換性関数)BINOM.INV
登場バージョンExcel 2007以前Excel 2010以降
分類互換性関数統計関数
構文=CRITBINOM(試行回数, 成功率, α)=BINOM.INV(試行回数, 成功確率, α)
計算結果同じ同じ
将来の削除リスクありなし

新しくシートを作るときはBINOM.INV関数を使いましょう。既存シートにCRITBINOMがあれば、置き換えを検討するのがおすすめです。

TIP

既存シートを置き換えるときは「Ctrl+H」で CRITBINOM(BINOM.INV( に一括置換すると安全です。カッコまで含めて検索するのがコツですよ。詳しくはCRITBINOM関数の解説記事も参考にしてください。

二項分布関連の関数ファミリー

Excelには、二項分布に関連する関数がいくつかあります。役割の違いを表にまとめておきますね。

関数入出力の方向主な用途
BINOM.DIST成功回数 → 確率ちょうどx回 / x回以下の確率を計算
BINOM.DIST.RANGE成功回数の範囲 → 確率「s回以上s2回以下」の確率を一発計算
BINOM.INV累積確率 → 成功回数確率からしきい値を逆算(本記事)
CRITBINOM累積確率 → 成功回数BINOM.INVの旧名(互換性関数)
COMBINn, r → 組み合わせ数二項分布の数学的な検算用

使い分けのポイントはシンプルです。

  • 成功回数から確率を知りたい → BINOM.DIST / BINOM.DIST.RANGE
  • 確率から成功回数を逆算したい → BINOM.INV
  • 古いブックの保守 → CRITBINOM(基本はBINOM.INVに置き換え推奨)

確率の方向(順方向か逆方向か)を意識すれば、迷わず関数を選べるようになりますよ。

よくあるエラーと対処法

ExcelのBINOM.INV関数でつまずきやすいポイントをまとめました。

エラー原因対処法
#NUM!試行回数が0未満0以上の整数を指定する
#NUM!成功確率が0〜1の範囲外0〜1の小数で指定する(5%なら0.05)
#NUM!αが0〜1の範囲外0〜1の小数で指定する
#VALUE!引数に文字列が入った数値またはセル参照を指定する

引数の範囲を確認すれば解決できることがほとんどです。順番に見ていきましょう。

#NUM!エラー(成功確率やαが0〜1の範囲外)

成功確率とαは0から1の間で指定します。パーセント表記の数値(5や95)をそのまま入れるのはよくあるミスです。

=BINOM.INV(100, 5, 0.95)      ← #NUM! エラー(成功確率は0.05)
=BINOM.INV(100, 0.05, 95)     ← #NUM! エラー(αは0.95)
=BINOM.INV(100, 0.05, 0.95)   ← OK(結果: 8)

「%表記の数値÷100」で小数に変換してから指定しましょう。

#VALUE!エラー(引数に文字列が入った)

数値であるべき引数に文字列が入ると #VALUE! エラーになります。

=BINOM.INV("百", 0.05, 0.95)   ← #VALUE! エラー

セル参照を使うときは、参照先が数値であることを確認してください。文字列型として入力された数値('100 のような形式)も同じエラーになります。

結果が直感と合わないとき

αを0.95に指定したのに、対応する累積確率が95%ぴったりにならない、というケースがあります。これはエラーではなく、二項分布が離散的な分布だからです。

「α以上を初めて満たす最小の成功回数」を返すという仕様を思い出してください。前のセクションで紹介したように、BINOM.DISTで検算するとつかみやすいですよ。

Googleスプレッドシートとの違い

ExcelのBINOM.INV関数は、Googleスプレッドシートにも同じ名前・同じ構文で用意されています。

=BINOM.INV(100, 0.05, 0.95)

この数式はExcel・スプレッドシートどちらの環境でも同じ結果を返します。Googleスプレッドシートでも旧関数名のCRITBINOMが使えるので、どちらの関数名でも動作しますよ。

ExcelとGoogleスプレッドシートを併用している方も安心です。BINOM.INVで統一しておけば、データを行き来させても計算結果がぶれません。

まとめ

ExcelのBINOM.INV関数は、累積二項分布が指定した確率以上になる最小の成功回数を返す関数です。つまり二項分布の逆関数ですね。

  • 構文: =BINOM.INV(試行回数, 成功確率, α) で、3つの引数すべてが必須
  • αは0〜1の範囲で指定し、大きいほど返される成功回数も大きくなる
  • BINOM.DIST関数が「成功回数→確率」、BINOM.INVは「確率→成功回数」と方向が逆
  • 品質管理の合格ライン、アンケート回答下限、営業KPI設計などに幅広く活用できる
  • 「上限」はα=0.95や0.99、「下限」はα=0.05や0.1で指定するのがコツ
  • 旧関数のCRITBINOMとは計算結果が完全に同じ。新規シートではBINOM.INVを使う
  • 範囲指定で確率を出したいときはBINOM.DIST.RANGE関数が便利

「この成功確率なら、何回くらいで目標を達成できる?」という問いに、関数1つで根拠を持って答えられるようになります。確率を逆向きに使えるようになると、業務判断のしきい値設計がぐっとラクになりますよ。

二項分布関連の関数はセットで覚えると理解が一気に深まります。順方向のBINOM.DIST関数、範囲指定のBINOM.DIST.RANGE関数もあわせてチェックしてみてくださいね。

関数の一覧は「アルファベット順 Excel関数一覧」からご覧いただけます。

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