ExcelのF.INV.RT関数の使い方|有意水準から検定の臨界値を直接求める

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「F検定の有意水準5%って、Excelでどう書けばいいんだっけ?」
こんな悩みを持ったことはありませんか?

F.INV関数だと「1から有意水準を引いた値」を渡さないといけなくて、ちょっと面倒ですよね。
有意水準0.05をそのまま渡すだけで臨界値が出てきたら、もっと直感的に使えるのに、と思ったことがあるはずです。

そんなときに使うのがF.INV.RT関数です。
この記事では基本の書き方から実務での活用例まで解説します。
F.INV関数や旧FINV関数との使い分け、F.DIST.RT関数との逆関数関係もあわせて整理しました。

F.INV.RT関数とは?F分布の右側からF値を逆算する関数

F.INV.RT関数(読み方: エフ・インバース・ライトテイル)は、F分布の逆関数を返す関数です。
右側確率を指定すると、その確率に対応するF値を返してくれます。
「INV」は「Inverse(逆)」、「RT」は「Right Tail(右側の裾)」の略です。

たとえば「自由度(3, 20)のF分布で、有意水準5%の臨界値は?」という問いがあったとします。
F.INV.RT関数なら有意水準0.05をそのまま渡すだけで答えが出ます。
F分布表を眺めて目視で探す必要も、計算の前に「1 – 0.05」を準備する必要もありません。

F.INV.RT関数はF.DIST.RT関数の逆関数にあたります。
F.DIST.RTがF値→右側確率の変換だとすると、F.INV.RTは右側確率→F値の変換です。
有意水準から棄却域の境界(臨界値)をサクッと求めたいときに大活躍します。

F.INV.RT関数にできることをまとめると、次のとおりです。

  • 有意水準(右側確率)からF値(臨界値)を直接逆算する
  • F検定の臨界値を求める
  • 一元配置分散分析(ANOVA)の棄却値を算出する
  • 重回帰分析の有意性判定の臨界値を求める
  • F分布表を引く手間をなくす

NOTE

F.INV.RT関数はExcel 2010以降で使えます。
Microsoft 365、Excel 2013〜2024のすべてのバージョンに対応しています。
Excel 2007以前では旧FINV関数を使ってください。動作は同じです。

F.INV.RT関数の書き方(構文と引数)

基本構文

=F.INV.RT(確率, 自由度1, 自由度2)

カッコの中に、右側確率と2つの自由度を指定します。
F.DIST関数とは違って、関数形式(TRUE/FALSE)の引数はありません。

引数の説明

引数必須/任意説明
確率必須F分布の右側確率。0より大きく1より小さい値(0 < p < 1)
自由度1必須分子の自由度。1以上の整数を指定する
自由度2必須分母の自由度。1以上の整数を指定する

3つの引数はすべて必須です。
省略するとエラーになります。

TIP

自由度に小数を入れると、整数部分だけが使われます。
たとえば10.7と指定しても、内部では10として計算されます。

F.INV.RTは右側確率・F.INVは左側確率

ここがF.INV.RT関数の最大のポイントです。
F.INV.RTは右側確率、F.INVは左側累積確率を引数に取ります。

=F.INV.RT(0.05, 3, 20)  → 約3.0984(右側5%のF値)
=F.INV(0.95, 3, 20)     → 約3.0984(左側95%のF値)

2つの式は意味が違うのに、結果はぴったり同じ値になります。
「右側5%」と「左側95%」は、F分布のカーブ上で同じ位置を指しているからです。

TIP

検定では有意水準(右側確率)を扱う場面がほとんどです。
F.INV.RTなら有意水準0.05、0.01をそのまま渡せて直感的です。
F.INVだと「1 – 有意水準」を毎回計算する必要があり、ミスのもとになります。

F.INV.RT関数の基本的な使い方

ここからは具体的な確率と自由度を使って、F.INV.RT関数の動きを確認していきましょう。

有意水準5%の臨界値を求める

自由度(3, 20)の条件で、有意水準5%の臨界値を求めます。

=F.INV.RT(0.05, 3, 20)

結果は約 3.0984 です。
「自由度(3, 20)のF分布で、F値が3.0984を超える確率は5%」という意味です。
言いかえると、検定統計量(F値)がこの3.0984を超えたら「有意水準5%で帰無仮説を棄却」できます。

別の自由度でも試してみましょう。

=F.INV.RT(0.05, 9, 11)

結果は約 2.8962 です。
これは拠点A(10件)と拠点B(12件)のF検定で使う臨界値ですね。
あとの実務例で詳しく扱います。

有意水準を変えて臨界値を比較する

同じ自由度(3, 20)で、有意水準を変えるとF値がどう変わるか見てみましょう。

確率(右側)F.INV.RT(確率, 3, 20)意味
0.500.8663F分布の中央値
0.102.3801有意水準10%の臨界値
0.053.0984有意水準5%の臨界値
0.0253.8587有意水準2.5%の臨界値(両側5%)
0.014.9382有意水準1%の臨界値

確率が小さくなる(=有意水準が厳しくなる)ほど、F値が大きくなります。
検定の基準が厳しくなるほど臨界値が高くなる、ということですね。

TIP

両側検定の臨界値が必要な場合は、確率0.025を渡します。
片側検定の有意水準5%なら0.05、両側検定の有意水準5%なら0.025です。

F.DIST.RT関数との逆関数関係を確認する

F.INV.RT関数はF.DIST.RT関数の逆関数です。
次の式で元の値に戻ることを確認できます。

=F.DIST.RT(F.INV.RT(0.05, 3, 20), 3, 20)

結果は 0.05 になります。
F.INV.RTで確率→F値に変換し、F.DIST.RTでF値→確率に戻しているわけです。

逆方向でも同じです。

=F.INV.RT(F.DIST.RT(3.0984, 3, 20), 3, 20)

結果は約 3.0984 に戻ります。
この関係を覚えておくと、2つの関数の使い分けで迷わなくなります。

F.INV.RT関数の実践的な使い方・応用例

F検定の臨界値を求める

「拠点Aと拠点Bの売上のばらつきに差があるか」を判定するのがF検定です。
t検定を使う前に、等分散性を確認したいときによく使います。

たとえば拠点A(10件)と拠点B(12件)の売上データがあるとします。
VAR.S関数で分散を求めたところ、分散A = 250、分散B = 100 でした。

F値は「大きいほうの分散 / 小さいほうの分散」で求めます。

=250 / 100

結果は 2.5 です。
これがF検定で計算したF値(検定統計量)になります。

次に、有意水準5%の臨界値を求めます。
自由度1 = サンプル数A – 1 = 9、自由度2 = サンプル数B – 1 = 11 です。

=F.INV.RT(0.05, 9, 11)

結果は約 2.8962 です。
計算したF値2.5は、この臨界値2.8962を下回っています。
そのため「ばらつきに統計的な差があるとはいえない」と判断できますね。
等分散を仮定したt検定を使ってよい、ということです。

一元配置分散分析(ANOVA)の臨界値

3つ以上のグループに平均の差があるかを調べるのが分散分析(ANOVA)です。
F.INV.RT関数はANOVAの臨界値を手動で求めるときに使えます。

拠点A・B・Cの月間売上(各5件ずつ、合計15件)を分析する例です。
分散分析表を作成した結果、次の値が得られたとします。

変動要因自由度分散
グループ間2600
グループ内12200

F値 = グループ間分散 / グループ内分散 = 600 / 200 = 3.0 です。
次に、有意水準5%の臨界値を求めます。

=F.INV.RT(0.05, 2, 12)

結果は約 3.8853 です。
計算したF値3.0は、この臨界値3.8853を下回っています。
そのため「3拠点の平均に有意な差があるとはいえない」と判断できますね。

ANOVAでの自由度の決め方は次のとおりです。

検定の種類自由度1自由度2
F検定(等分散性)n1 – 1n2 – 1
一元配置ANOVAグループ数 – 1全データ数 – グループ数
重回帰のF検定説明変数の数 kn – k – 1

重回帰分析の有意性判定の臨界値

回帰分析の結果で「このモデルが統計的に意味を持つか」を判断するときにもF.INV.RTを使います。

たとえば説明変数3つ、サンプル数30の重回帰分析でF値が5.2だったとします。
自由度1 = 説明変数の数 = 3、自由度2 = サンプル数 – 説明変数の数 – 1 = 26 です。

=F.INV.RT(0.05, 3, 26)

結果は約 2.9752 です。
計算したF値5.2は、この臨界値2.9752を大きく超えています。
そのため「この回帰モデルは統計的に有意」と判断できますね。

有意水準→臨界値の早見表

実務でよく使う組み合わせをまとめておきます。

自由度(分子, 分母)有意水準5%有意水準2.5%有意水準1%
(1, 10)4.96466.936710.0443
(2, 12)3.88535.09596.9266
(3, 20)3.09843.85874.9382
(3, 26)2.97523.66974.6366
(5, 20)2.71093.28914.1027
(9, 11)2.89623.58794.6315

数式は =F.INV.RT(有意水準, 分子, 分母) です。
有意水準5%なら0.05、2.5%なら0.025、1%なら0.01をそのまま渡します。
F.INVと違って、引き算の手間がない点がポイントですね。

TIP

F.INVを使う場合は、有意水準を1から引いた値を渡す必要があります。
=F.INV(0.95, 3, 20) と書いても、結果は同じ約3.0984になります。
検定の臨界値計算ではF.INV.RTのほうが直感的です。

よくあるエラーと対処法

#NUM!エラー(確率が範囲外・自由度が1未満)

F.INV.RT関数で最もよく見るエラーです。以下の原因が考えられます。

原因対策
確率に0や1、負の値を指定した0より大きく1より小さい値を指定する
自由度1または自由度2が1未満自由度は1以上の整数を指定する
自由度が0または負の値セルの式を見直して、正の値が入るように修正する
=F.INV.RT(0, 3, 20)      → #NUM!エラー(確率が0)
=F.INV.RT(1, 3, 20)      → #NUM!エラー(確率が1)
=F.INV.RT(-0.05, 3, 20)  → #NUM!エラー(確率が負)
=F.INV.RT(0.05, 0, 20)   → #NUM!エラー(自由度1が0)
=F.INV.RT(0.05, 3, 20)   → 正常(約3.0984)

確率が0 < p < 1の範囲、自由度が1以上であることを覚えておけば対処は簡単です。

#VALUE!エラー(文字列を渡した)

引数に数値以外の文字列を指定すると発生します。

=F.INV.RT("abc", 3, 20)  → #VALUE!エラー

セル参照を使う場合は、参照先に数値が入っているかを確認してください。
空白セルが文字列扱いになっている場合もエラーが出やすいです。

F.INV.RTとF.INVを混同するミス

エラーは出ないけど結果が大きく変わる、という最大の落とし穴です。
有意水準5%の臨界値を求めるとき、どちらに何を渡すかを間違えると検定結果がひっくり返ります。

=F.INV.RT(0.05, 3, 20)  → 約3.0984(正しい: 有意水準5%の臨界値)
=F.INV(0.05, 3, 20)     → 約0.1707(間違い: これは左側5%点)
=F.INV(0.95, 3, 20)     → 約3.0984(正しい: F.INVなら0.95を渡す)

迷ったら「有意水準をそのまま渡せるF.INV.RT」を使うのが安全です。
あるいは、F.INVを使う場合は「1 - 有意水準 を渡す」と覚えてくださいね。

WARNING

旧FINV関数(ピリオドなし)はF.INV.RTと同じく右側確率を取ります。
ですがF.INV関数(中黒「.」あり、RTなし)は左側確率です。名前が似ているのに動作が違うので要注意です。

F.INV・F.DIST.RT・F.TEST・旧FINV関数との違い・使い分け

F分布関連関数の使い分け早見表

F分布関連には、用途の違う関数がいくつかあります。
求めたい値や検定の種類に合わせて選びます。

関数返す値引数の確率主な用途
F.DISTF値以下になる累積確率 または PDF左側確率・PDF描画
F.DIST.RTF値以上になる確率(右側)検定のp値計算
F.INV累積確率 → F値(左側の逆関数)左側左側臨界値の算出
F.INV.RT確率 → F値(右側の逆関数)右側有意水準から臨界値を直接求める
F.TESTデータ範囲から直接F検定のp値(両側)データ配列から一発で計算

実務シナリオ別の使い分けは次のとおりです。

  • 有意水準から臨界値を直接求めたい: F.INV.RT(例: 自由度(3, 20)・5%水準なら =F.INV.RT(0.05, 3, 20)
  • 左側累積確率から臨界値を求めたい: F.INV
  • 検定のp値を素早く求めたい: F.DIST.RT
  • F分布のカーブをグラフにしたい: F.DIST(x, df1, df2, FALSE)
  • データ範囲から直接F検定したい: F.TEST

TIP

F.INV.RTとF.INVは「同じ位置のF値を、右側と左側どちらで指定するか」の違いだけです。
F.INV.RT(p, df1, df2) = F.INV(1-p, df1, df2) の関係が常に成り立ちます。

旧FINV関数との互換性

旧FINV関数(Excel 2007以前)は、F.INV.RT関数と同じ動作です。
どちらも右側確率を引数に取ります。

項目F.INV.RT(新)FINV(旧)
引数(確率, df1, df2)(確率, df1, df2)
確率の意味右側確率右側確率
導入バージョンExcel 2010Excel 2003以前

引数の意味も結果も同じなので、移行は関数名を置き換えるだけで完了します。

旧関数から新関数への置き換えは次のとおりです。

旧書き方新書き方
=FINV(0.05, 3, 20)=F.INV.RT(0.05, 3, 20)
=FINV(0.01, 9, 11)=F.INV.RT(0.01, 9, 11)

TIP

旧FINVを使った既存ファイルがある場合、F.INV.RTへの移行は単純な置換でOKです。
一方、F.INVへ移行する場合は確率を「1 – 元の値」に書き換える必要があります。
既存ファイルの保守を考えるなら、F.INV.RTのほうが移行コストは低いです。

他の分布の逆関数(T.INV.2T / CHISQ.INV.RT / NORM.INV)との比較

F.INV.RT以外にも、確率分布の逆関数はいくつかあります。
扱う分布が違うので、検定の種類に応じて使い分けます。

関数対応する分布主な用途
F.INV.RTF分布(右側)分散の比較・分散分析の臨界値
T.INV.2Tt分布(両側)少数サンプルの平均差検定
CHISQ.INV.RTカイ二乗分布(右側)カテゴリデータの偏り検定の臨界値
NORM.INV正規分布連続データの確率計算の逆算

使い分けの基準はシンプルです。

  • 分散(ばらつき)を比べたい → F.INV.RT
  • 少数サンプルの平均差を検定したい → T.INV.2T
  • カテゴリデータの偏りを調べたい → CHISQ.INV.RT
  • 連続データの位置から値を逆算したい → NORM.INV

関連関数の一覧

関数説明
F.DISTF分布の左側累積確率または確率密度
F.DIST.RTF分布の右側累積確率
F.INVF分布の逆関数(確率→F値)。左側
F.INV.RTF分布の逆関数(確率→F値)。右側
F.TESTデータ範囲から直接F検定のp値(両側)
FINVF.INV.RTの旧名(右側確率)
T.DISTt分布の左側確率(少サンプルの平均差検定)
T.TESTt検定のp値を直接計算
VAR.S標本分散(F値の計算で使う)
STDEV.S標本標準偏差
AVERAGE標本平均

まとめ

F.INV.RT関数は、F分布の右側確率からF値(臨界値)を逆算する関数です。

この記事のポイント

  • 構文は =F.INV.RT(確率, 自由度1, 自由度2) の3つの引数を指定する
  • 確率は右側確率(0 < p < 1)。有意水準をそのまま渡せて直感的
  • 有意水準5%の臨界値は =F.INV.RT(0.05, df1, df2) で求められる
  • F.INVを使う場合は =F.INV(0.95, df1, df2) と「1 – 有意水準」を渡す必要がある
  • 自由度1は分子(n1-1 や グループ数-1 など)、自由度2は分母(n2-1 や 全データ数-グループ数 など)
  • F検定・一元配置ANOVA・重回帰モデルの臨界値計算で活躍する
  • F.INV.RTはF.DIST.RTの逆関数。F.DIST.RT(F.INV.RT(p), ...) = p の関係が常に成り立つ
  • 旧FINV関数と動作が同じなので、移行は関数名の置換だけでOK
  • 確率に0や1を渡すと#NUM!エラー。F.INVと混同して引数を逆にしないように注意

F.INV.RT関数の使い方がわかったら、以下の関数もあわせて覚えてみてください。
データ分析の幅が広がりますよ。

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