「ExcelのCOSH関数って何に使うの?」と疑問に思ったことはありませんか。数学の教科書で見かける双曲線余弦と言われても、ピンとこないですよね。でも実は、送電線や吊り橋ケーブルの形状計算など、実務で役立つ場面があるんです。
この記事では、ExcelのCOSH関数の使い方を基本から丁寧に解説します。定義式の検算、偶関数の性質確認、カテナリー曲線の計算表づくりまでカバーしますよ。
COSH関数とは?読み方と基本
COSH関数は、双曲線余弦(ハイパーボリックコサイン)を返すExcelの数学関数です。
読み方は「コッシュ」または「コサイン・ハイパーボリック」です。英語の「Cosine Hyperbolic」の頭文字に由来します。
ひとことで言うと、「入力した数値に対する双曲線余弦の値を求める」関数です。Excel 2007以降のすべてのバージョンで使えます。Microsoft 365・Excel 2024 / 2021 / 2019 / 2016に対応しています。
COSH関数の構文と引数
構文はとてもシンプルです。
=COSH(数値)
引数はひとつだけで、任意の実数を指定できます。
| 引数 | 必須 | 説明 |
|---|---|---|
| 数値 | はい | 双曲線余弦を求めたい任意の実数 |
0やマイナスの値も指定できます。引数の制約が少ないので、使いやすい関数ですよ。
双曲線余弦(ハイパーボリックコサイン)の数学的定義
COSH関数の数学的な定義式は次のとおりです。
cosh(x) = (e^x + e^(-x)) / 2
ここで e はネイピア数(約2.71828)です。定義域は全実数、値域は1以上です。
ちょっとむずかしく見えますが、やっていることはシンプルです。「e のx乗と、e のマイナスx乗を足して、2で割る」だけですよ。
代表的な値も確認しておきましょう。
COSH(0)= 1COSH(1)≒ 1.543COSH(4)≒ 27.308
xが0のときに最小値の1をとり、xが大きくなるほど急激に増加する特徴があります。
COSH関数の基本的な使い方
実際にExcelでCOSH関数を使ってみましょう。
セルに入力してみる
まずは基本の入力方法です。セルに直接数式を入力します。
=COSH(1)
Enterキーを押すと、結果は「1.543080634」と表示されます。
セル参照も使えます。A2に数値を入れておいて、B2に次の数式を入力してみてください。
=COSH(A2)
A列の値を変えるだけで、さまざまな入力に対するCOSH値を一覧できますよ。
EXP関数で定義式を検算する
定義式 (e^x + e^(-x)) / 2 をExcelで再現して、COSH関数の結果と一致するか確かめましょう。
EXP関数は、e のべき乗を返す関数です。これを使うと定義式を次のように書けます。
=(EXP(A2)+EXP(-A2))/2
COSH関数の結果と比較した表がこちらです。
| 数値(x) | =COSH(x) | =(EXP(x)+EXP(-x))/2 | 一致 |
|---|---|---|---|
| 0 | 1 | 1 | Yes |
| 1 | 1.543080634 | 1.543080634 | Yes |
| 2 | 3.762195691 | 3.762195691 | Yes |
| 4 | 27.30823284 | 27.30823284 | Yes |
すべての値で完全に一致していますね。COSH関数が定義式どおりに計算していることを確認できました。
定義式を覚えておくと、COSH関数の仕組みを理解しやすくなります。
COSH関数の特性を理解する
COSH関数には、実務で知っておくと役立つ特性があります。ここでは2つ紹介しますね。
偶関数の性質:xと-xで値が等しい
COSH関数は偶関数です。偶関数とは、プラスの値とマイナスの値を入れても同じ結果を返す関数のことです。
数式で書くと cosh(-x) = cosh(x) となります。
実際にExcelで確認してみましょう。
| x | COSH(x) | COSH(-x) | 一致 |
|---|---|---|---|
| 1 | 1.543080634 | 1.543080634 | Yes |
| 2 | 3.762195691 | 3.762195691 | Yes |
| 3 | 10.06766200 | 10.06766200 | Yes |
=COSH(A2)=COSH(-A2)
この数式を入力するとTRUEが返ります。符号を変えても結果が変わらないことを確かめてみてください。
定義式 (e^x + e^(-x)) / 2 を見れば理由がわかります。xと-xを入れ替えても、足し算なので結果が同じになるわけですね。
COSH vs COS:双曲線関数と三角関数の違い
名前が似ているCOS関数と混同しやすいので、違いを整理しておきましょう。
| 比較項目 | COSH(双曲線余弦) | COS(三角関数の余弦) |
|---|---|---|
| 数学的な基盤 | 双曲線 | 単位円 |
| 値域 | 1以上 | -1から1 |
| 周期性 | なし | あり(2π周期) |
| x=0のとき | 1 | 1 |
COSHは値が1以上で、xが大きくなるほど増加し続けます。一方、COSは-1から1の範囲を周期的に繰り返します。
用途もまったく違います。COSは角度の計算に使い、COSHはケーブル形状や物理の計算に使うのが一般的です。数式を入力するときは、関数名を間違えないように注意してくださいね。
双曲線関数ファミリーとの比較・使い分け
COSH関数は、双曲線関数ファミリーのひとつです。仲間の関数との違いを押さえておきましょう。
SINH・TANH・COSHを一覧で比較
| 関数 | 名称 | 定義式 | 値域 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| COSH | 双曲線余弦 | (e^x + e^(-x)) / 2 | [1, +∞) | カテナリー曲線 |
| SINH | 双曲線正弦 | (e^x – e^(-x)) / 2 | (-∞, +∞) | 物理シミュレーション |
| TANH | 双曲線正接 | SINH(x) / COSH(x) | (-1, 1) | 正規化・活性化関数 |
3つの関数には重要な恒等式があります。
COSH(x)^2 - SINH(x)^2 = 1
三角関数の cos²(x) + sin²(x) = 1 と似た構造ですね。符号が引き算になっている点が双曲線関数の特徴です。
また、COSHの微分はSINHになります。d/dx cosh(x) = sinh(x) という関係があるので、微分を扱うシーンではセットで覚えておくと便利ですよ。
ACOSHとの逆関数の関係
ACOSH関数は、COSH関数の逆関数です。COSHで変換した値を元に戻す役割を持ちます。
ACOSH(COSH(x)) = x
たとえば =COSH(2) は約3.762を返しますが、=ACOSH(3.762195691) と入力すると元の2に戻ります。「行って帰ってくる」イメージですね。
COSHが「入力→出力」の変換だとすると、ACOSHは「出力→入力」への逆算です。カテナリー曲線の逆問題を解くときなどに活躍します。
実践活用:カテナリー曲線をExcelで計算する
ここからは実践的な使い方です。COSH関数の代表的な応用例であるカテナリー曲線をExcelで再現してみましょう。
カテナリー曲線とは
カテナリー曲線(懸垂線)とは、両端を固定したロープやチェーンが自重で垂れ下がるときに描く曲線のことです。送電線の形状がこれにあたります。吊り橋のケーブルもカテナリーに近い形状を描きます。
数式は次のとおりです。
y = a × cosh(x / a)
a はケーブルの張力に関するパラメータです。x は水平位置、y は高さを表します。
COSH関数を使った計算表の作り方
パラメータ a = 1 として、カテナリー曲線の計算表を作ってみましょう。
A列に水平位置xを並べ、B列にCOSH関数を入力します。
=COSH(A2)
a = 1 の場合は y = cosh(x) なので、シンプルな数式で済みますよ。
完成した計算表はこちらです。
| 水平位置(x) | 高さ y = cosh(x) |
|---|---|
| -3 | 10.068 |
| -2 | 3.762 |
| -1 | 1.543 |
| 0 | 1.000 |
| 1 | 1.543 |
| 2 | 3.762 |
| 3 | 10.068 |
偶関数の性質どおり、xがプラスでもマイナスでも同じ高さになっていますね。中央(x=0)が最も低く、両端に向かって急激に高くなります。
この表をもとに散布図グラフを作成すると、U字型のカテナリー曲線を目で確認できます。Excelの「挿入」タブから「散布図」を選ぶだけで作成できますよ。
パラメータ a の値を変えると、曲線のカーブが変わります。a が大きいほどなだらかに、小さいほど急な曲線になります。いくつかの値で試してみてください。
エラーと回避策
COSH関数で発生するエラーは主に2種類です。それぞれの原因と対処法を確認しましょう。
#VALUE! / #NUM!エラーの原因と対処
#VALUE!エラー
引数に文字列など、数値として認識できないデータを指定すると発生します。
=COSH("abc") → #VALUE!エラー
対処法はシンプルです。引数のセルに数値が入っているか確認してください。ISNUMBER関数(セルの値が数値かどうかを判定する関数)で事前チェックもできます。
=IF(ISNUMBER(A2), COSH(A2), "数値を入力してください")
#NUM!エラー
引数が約709.78を超えると、計算結果が大きすぎてオーバーフローが起きます。
=COSH(710) → #NUM!エラー
これはExcelが扱える数値の上限を超えてしまうためです。xが大きい場合、定義式の e^x の項が支配的になるので、次の近似式で代替できます。
=EXP(A2)/2
xが十分大きいとき(目安として10以上)、e^(-x) はほぼ0になります。そのため (e^x + e^(-x))/2 ≒ e^x/2 で十分な精度が得られますよ。
なお、IMCOSH関数は複素数版のCOSH関数です。実数の計算にはCOSH関数を使ってくださいね。
まとめ
ExcelのCOSH関数について解説しました。要点を振り返りましょう。
- COSH関数は双曲線余弦を返す関数で、
=COSH(数値)と書く - 定義式は
(e^x + e^(-x)) / 2。EXP関数で検算できる - 偶関数なので、xと-xで同じ値を返す
- 双曲線関数ファミリー(SINH・TANH)とセットで覚えると理解しやすい
- ACOSH関数は逆関数で、COSHの結果を元に戻せる
- カテナリー曲線の計算にそのまま使える実践的な関数
双曲線関数ファミリーの他の関数もあわせてチェックしてみてください。
