スプレッドシートで「双曲線逆正弦(逆ハイパボリックサイン)」を計算したいとき、どの関数を使えばいいか迷っていませんか?
SINH関数の逆を求めたいけど、書き方がわからないですよね。
そんなときに使うのがASINH関数です。=ASINH(値) と書くだけで、双曲線逆正弦をかんたんに求められます。
この記事では基本の書き方から、SINH関数との逆関数の関係、LN関数を使った検算方法、データ変換への応用まで紹介します。
スプレッドシートのASINH関数とは?
ASINH関数(読み方: エーサインエイチ、またはアークハイパボリックサイン関数)は、指定した値の双曲線逆正弦を返す関数です。名前の「A」は「Arc(逆)」を意味します。
たとえば =ASINH(1) と入力すると「0.88137…」が返ります。これが1の双曲線逆正弦の値です。
ASINH関数はSINH関数の逆関数にあたります。SINH(0.88137) が約1を返すので、ASINH(1) は約0.88137を返すわけです。
ASINH関数にできることをまとめると、次のとおりです。
- SINH関数の結果から元の値を逆算する
- LN関数と同じ計算結果を式で確認できる
- 負の値を含むデータの対数変換的な処理に使う
- 物理学・工学で双曲線関数の逆問題を解く
NOTE
ASINH関数はGoogleスプレッドシートの全バージョンで使えます。Excelとも完全に互換性があるので、ファイルのやり取りでも安心です。
ASINH関数の書き方(構文と引数)
基本構文
=ASINH(値)
カッコの中に、双曲線逆正弦を求めたい数値を指定します。
引数の説明
| 引数 | 必須/任意 | 説明 |
|---|---|---|
| 値 | 必須 | 双曲線逆正弦を求めたい実数値 |
引数は1つだけです。正の数・負の数・0のどれでも受け付けます。SINH関数とは違い、入力の範囲に制限がないのが特徴ですよ。
TIP
ASIN関数(逆正弦)は引数が-1から1の範囲に制限されますが、ASINH関数にはそのような制限がありません。どんな実数でも渡せます。
ASINH関数の基本的な使い方
代表的な値でASINH関数の動きを確認してみましょう。
正の値を渡す
=ASINH(1)
結果は「0.88137…」です。
もう少し大きい値も見てみます。
=ASINH(10)
結果は「2.99822…」です。入力が大きくなっても、結果はゆるやかに増えていくのが特徴ですね。
0を渡す
=ASINH(0)
結果は「0」です。ASINH(0)=0 は覚えておくと便利です。
負の値を渡す
=ASINH(-1)
結果は「-0.88137…」です。ASINH(1)の符号を反転した値になっています。
これはASINH関数が「奇関数」だからです。ASINH(-x) = -ASINH(x) が常に成り立ちます。
まとめると
代表的な入力値と結果を一覧にまとめます。
| 数式 | 結果 | 備考 |
|---|---|---|
| =ASINH(0) | 0 | 原点は0 |
| =ASINH(1) | 0.88137… | 基本値 |
| =ASINH(2) | 1.44363… | 増加はゆるやか |
| =ASINH(-1) | -0.88137… | 奇関数(符号反転) |
| =ASINH(-2) | -1.44363… | 奇関数(符号反転) |
| =ASINH(10) | 2.99822… | 大きい値でもゆるやかに増加 |
SINH関数は入力が大きくなると結果が急増しますが、ASINH関数はその逆で、ゆるやかに増えていきます。
セル参照を使う
もちろんセル参照も使えます。A1セルに数値が入っていれば、次のように書きます。
=ASINH(A1)
A列に複数の値を入れて、B列にASINH関数を並べれば一括計算もできますよ。
SINH関数との逆関数の関係
ASINH関数はSINH関数の逆関数です。つまり、次の関係が成り立ちます。
ASINH(SINH(x)) = x
SINH(ASINH(x)) = x
実際にスプレッドシートで確認してみましょう。
| 数式 | 結果 |
|---|---|
| =SINH(2) | 3.62686… |
| =ASINH(3.62686) | 2.00000… |
| =ASINH(SINH(2)) | 2 |
SINH(2)の結果をASINHに渡すと、元の「2」に戻ります。逆関数なので当然ですが、検算に便利ですよ。
ASINH関数の数学的な仕組み
定義式とLN関数での検算
ASINH関数は数学的に次のように定義されています。
ASINH(x) = LN(x + SQRT(x^2 + 1))
ここでLNは自然対数(ネイピア数eを底とする対数)です。スプレッドシートではLN関数とSQRT関数を使って同じ計算ができます。
=LN(A1 + SQRT(A1^2 + 1))
この式とASINH(A1)は同じ結果を返します。A1に「1」を入れて確認してみましょう。
| 数式 | 結果 |
|---|---|
| =ASINH(1) | 0.88137… |
| =LN(1+SQRT(1^2+1)) | 0.88137… |
どちらも同じ値ですね。ASINH関数の結果が正しいか不安なときは、LN関数を使った式で検算できます。
TIP
LN関数は自然対数を返す関数です。SQRT関数は平方根を返す関数です。どちらもスプレッドシートの標準関数として使えますよ。
なぜLN関数と関係があるのか
SINH関数の定義式 SINH(x) = (e^x - e^(-x)) / 2 を逆に解くと、自然対数の式が出てきます。双曲線関数はもともと指数関数(e^x)をベースに作られているため、その逆関数が対数関数になるのは自然なことです。
実務での活用例
負の値を含むデータの対数変換
ASINH関数が実務で役立つのは、データの「対数変換的な処理」です。
通常の対数関数(LN関数やLOG関数)は、正の値しか扱えません。0や負の値を渡すとエラーになります。
| 数式 | 結果 |
|---|---|
| =LN(100) | 4.60517… |
| =LN(0) | #NUM! エラー |
| =LN(-50) | #NUM! エラー |
一方、ASINH関数はすべての実数を受け付けます。
| 数式 | 結果 |
|---|---|
| =ASINH(100) | 5.29834… |
| =ASINH(0) | 0 |
| =ASINH(-50) | -4.60527… |
しかも、大きい値に対してはLN関数と似た挙動をします。ASINH(x) は x が大きいほど LN(2x) に近づくという性質があります。
この特徴を使えば、売上データの増減(マイナスを含む)をグラフで見やすくしたいときにASINH関数が活躍します。極端に大きな値を圧縮しつつ、負の値やゼロもエラーなく変換できますよ。
SINH値から元の値を逆算する
SINH関数で計算した結果から、元の入力値を求めたい場面があります。
たとえば、カテナリー曲線の弧の長さがわかっていて、元のxの値を逆算したいケースです。
弧の長さ = a × SINH(x / a)
この式から x を求めるには、ASINH関数を使います。
x = a × ASINH(弧の長さ / a)
パラメータa=10として、弧の長さが11.75201のときの x を求めてみます。
=10*ASINH(11.75201/10)
結果は「10.00000…」です。SINH関数の記事で紹介した例の逆算ができていますね。
よくあるエラーと対処法
ASINH関数でよくあるトラブルをまとめます。
| 症状 | 原因 | 対処法 |
|---|---|---|
| #VALUE! エラー | 引数に文字列を渡した | 数値またはセル参照を指定する |
| ASIN関数と結果が違う | 関数を間違えている | ASINは逆正弦(三角関数)、ASINHは双曲線逆正弦。目的に合った方を使う |
| SINH関数と組み合わせて元に戻らない | 丸め誤差 | 小数点以下の桁数が多い場合はROUND関数で丸める |
文字列を渡したとき
=ASINH("abc")
結果は #VALUE! エラーです。引数には必ず数値を渡してください。セル参照の場合は、参照先が数値であることを確認しましょう。
ASIN関数と間違えたとき
ASIN関数とASINH関数は名前が似ていますが、まったく別の関数です。
=ASIN(0.5) → 0.52359...(逆正弦。引数は-1〜1のみ)
=ASINH(0.5) → 0.48121...(双曲線逆正弦。引数の制限なし)
ASIN関数は引数が-1から1の範囲外だとエラーになります。範囲外の値を渡したいときはASINH関数を使ってください。
似た関数との違い・使い分け
| 関数 | 動作 | 引数の範囲 | 用途 |
|---|---|---|---|
| ASINH | 双曲線逆正弦を返す | 制限なし | SINH逆算・データ変換 |
| ACOSH | 双曲線逆余弦を返す | 1以上 | COSH逆算 |
| ATANH | 双曲線逆正接を返す | -1〜1(端点除く) | TANH逆算 |
| ASIN | 逆正弦を返す | -1〜1 | 三角関数の角度を求める |
| SINH | 双曲線正弦を返す | 制限なし | カテナリー曲線・物理計算 |
| LN | 自然対数を返す | 正の値のみ | 対数変換・成長率計算 |
ASINH・ACOSH・ATANHは双曲線関数の逆関数の仲間です。引数の範囲がそれぞれ違う点に注意してください。
ASINHだけが引数に制限がないので、最も使いやすい双曲線逆関数といえます。
まとめ
ASINH関数は、指定した値の双曲線逆正弦(逆ハイパボリックサイン)を返す関数です。
ポイントを整理します。
- 構文は
=ASINH(値)で、引数は任意の実数値 - SINH関数の逆関数で、ASINH(SINH(x))=x が成り立つ
- 定義式は LN(x + SQRT(x^2+1)) で、LN関数で検算できる
- 負の値やゼロを含むデータの対数変換的な処理に便利
- ASIN関数(三角関数)とは別の関数なので間違えないように注意
まずは =ASINH(1) で0.88137が返ることを確認してみてください。
