【Excel】TINV関数の使い方|t分布の逆関数で信頼区間や棄却域を求める方法

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「Excelで信頼区間の臨界値(t値)をサクッと求めたい」「両側検定の棄却域はどう計算するの?」と悩んでいませんか。そんなときに頼れるのが TINV関数です。

TINV関数は、t分布の 逆関数 として、両側確率(p値)と自由度から t値を返してくれる統計関数です。Excel 2010以降では互換性関数に分類されていますが、現在のExcelでも問題なく動作します。

この記事では、TINV関数の構文から始めて、95%信頼区間の臨界値計算、両側検定の棄却域算出まで、実務で使えるパターンを中心に解説します。新関数 T.INV / T.INV.2T との違いや、対の関係にある ExcelのTDIST関数 との使い分けも整理します。t分布の関数群を一気に理解していきましょう。

ExcelのTINV関数とは?

TINV関数は、スチューデントの t分布の逆関数 を計算する統計関数です。読み方は「ティーインバース」で、語源は T-Distribution Inverse(t分布の逆関数)です。

ざっくり言うと、「両側確率(p値)と自由度を渡すと、対応する t値を返してくれる関数」です。たとえば「95%信頼区間で使う臨界値(t値)が欲しい」というケースで活躍します。「両側検定で棄却するかどうかの境界線(クリティカル値)が欲しい」というシーンも同じく TINV の出番です。

Excel 2007以前から提供されている古参の関数ですが、Excel 2010以降は分類が変わりました。現在は 互換性関数(Compatibility Functions) に分類されています。後継として T.INV 関数と T.INV.2T 関数が用意されていますが、TINV関数も後方互換のため引き続き動作します。

ちなみに、t値から確率(p値)を求める逆向きの計算をしたいときは ExcelのTDIST関数 を使います。TDIST と TINV はちょうど対になる関数なので、セットで覚えておくと便利です。

TINV関数の書き方(構文と引数)

TINV関数の構文はとてもシンプルで、引数は2つだけです。

=TINV(probability, degrees_freedom)
引数意味制約
probability両側確率(有意水準α)0より大きく1未満
degrees_freedom自由度(サンプル数 − 1 など)1以上の整数(小数は切り捨て)

ここで一番大事なポイントは、第1引数の probability が 両側確率 であることです。片側ではありません。たとえば「両側5%」を計算したいなら 0.05 をそのまま渡します。

戻り値は常に 正の t値 です。t分布は0を中心に左右対称なので、両側の臨界値は ±(戻り値)と解釈してください。

TINV関数の基本的な使い方

まずはシンプルな例で動きを確認しましょう。「両側確率 0.05、自由度 20」のときの t値を求めます。

=TINV(0.05, 20)

結果は 約 2.086 になります。これは「t分布(自由度20)で、両側に2.5%ずつ(合計5%)の確率を持つ境界の t値」を意味します。グラフで言うと、t = -2.086 より左の面積と t = 2.086 より右の面積を合計すると、ちょうど0.05になるイメージです。

念のため、対の関係にある TDIST関数で逆向きの計算もしてみましょう。

=TDIST(2.086, 20, 2)

こちらは 約 0.05 が返ります。TINV と TDIST がちょうど逆向きの計算になっていることが確認できますね。

【実務例】95%信頼区間の臨界値を求める

TINV関数の最も典型的な使い方が、信頼区間の臨界値(t値)の計算です。

「サンプルから推定した平均値が、母集団の真の平均値からどれくらいの範囲に収まるか」を示すのが信頼区間です。95%信頼区間なら、有意水準αは 0.05(両側)になります。

たとえば「サンプル数25(自由度24)で95%信頼区間の臨界値」を求めるなら、次のようになります。

=TINV(0.05, 24)

結果は 約 2.064 です。これを使って信頼区間を求める数式は次のとおりです。

信頼区間 = 標本平均 ± TINV(α, df) × 標準誤差
標準誤差 = 標本標準偏差 ÷ √(サンプル数)

セルA1に標本平均、A2に標本標準偏差、A3にサンプル数が入っているとします。このとき、95%信頼区間の上限と下限は次のように書けます。

上限:=A1 + TINV(0.05, A3-1) * A2 / SQRT(A3)
下限:=A1 - TINV(0.05, A3-1) * A2 / SQRT(A3)

信頼水準と TINV の第1引数の対応は次の早見表をどうぞ。

信頼水準有意水準α(両側)TINV 第1引数
90%0.100.10
95%0.050.05
99%0.010.01

母標準偏差が既知の場合は ExcelのSTDEVP関数 で計算します。ただし t分布を使う場面では、通常は標本標準偏差(STDEV.S)を使うのが自然です。

【実務例】両側検定の棄却域(クリティカル値)を求める

仮説検定でも TINV関数は活躍します。両側検定では、検定統計量 t が 臨界値(クリティカル値) より外側にあれば帰無仮説を棄却します。

たとえば「有意水準 5%・両側検定・自由度 30」のときの臨界値は次のように求めます。

=TINV(0.05, 30)

結果は 約 2.042 です。検定統計量 t を計算したとき、その絶対値が 2.042 を超えていれば「有意差あり」と判定できます。

判定の数式例(B1に検定統計量 t が入っている場合)。

=IF(ABS(B1) > TINV(0.05, 30), "棄却", "採択")

ここで気をつけたいのが 片側検定 で TINV関数を使うときです。TINV は両側確率を前提にしています。そのため片側検定で使う場合は 有意水準を2倍 して渡す必要があります。

検定の種類有意水準TINV 第1引数
両側検定 5%0.050.05
両側検定 1%0.010.01
片側検定 5%0.050.10(=2α)
片側検定 1%0.010.02(=2α)

片側検定の場合は、新関数の T.INV.RT を使うほうが「右側」とそのまま指定できて直感的です。

T.INV / T.INV.2T との違い・使い分け

Excel 2010以降では、TINV関数の後継として T.INV と T.INV.2T が追加されました。3つの関数の違いを表で整理します。

関数入力する確率戻り値TINV との関係
TINV(p, df)両側確率正の t値旧関数(互換性関数)
T.INV.2T(p, df)両側確率正の t値TINV と完全互換
T.INV(p, df)左側累積確率負または正の t値動作が異なる

具体例で比較してみます(自由度20のケース)。

=TINV(0.05, 20)        → 約 2.086
=T.INV.2T(0.05, 20)    → 約 2.086(TINVと同じ)
=T.INV(0.025, 20)      → 約 -2.086(左側下側のt値)
=T.INV(0.975, 20)      → 約  2.086(左側上側のt値)

数学的な関係は TINV(p, df) = T.INV(1 - p/2, df) = T.INV.2T(p, df) となります。

使い分けの目安:

  • 既存ファイルとの互換性を保ちたい → TINV
  • これから新規作成するファイル → T.INV.2T(両側)または T.INV(左側)
  • 「左側」「右側」を明示的に区別したい → T.INV / T.INV.RT を使い分ける

ちなみに正規分布版の逆関数は ExcelのNORMSINV関数ExcelのNORMINV関数 です。サンプル数が多い場合は t分布が正規分布に近づきます。そのため近似的に正規分布の逆関数で代用するケースもあります。

TDIST関数・TTEST関数との使い分け

t分布関連の関数は3つセットで覚えると整理しやすくなります。

関数入力出力用途
TDISTt値 + 自由度 + 片側/両側確率(p値)検定統計量から p値を求めたい
TINV両側確率 + 自由度t値(正の値)信頼区間や棄却域の臨界値が欲しい
TTEST2つのデータ配列確率(p値)データから直接 p値が欲しい

ExcelのTDIST関数 と TINV関数は、まさに「p値 ↔ t値」の逆向き関数の関係です。

=TDIST(2.086, 20, 2) → 約 0.05
=TINV(0.05, 20)      → 約 2.086

一方、TTEST関数(新: T.TEST)は2群のデータ配列を渡すだけで使えます。内部で平均・分散・t値を計算して直接 p値を返してくれる便利関数です。データから検定したいなら TTEST、臨界値が欲しいなら TINV、と覚えておけば迷いません。

ExcelのNORMSDIST関数 など正規分布関数群とあわせて使うことで、統計検定の幅が一気に広がります。

TINV関数のよくあるエラーと対処法

TINV関数で遭遇しやすいエラーと、その原因・対処をまとめます。

エラー原因対処
#NUM!probability が0以下、または1以上0 < p < 1 の範囲にする
#NUM!degrees_freedom が1未満自由度は1以上にする
#VALUE!引数に文字列が混入セル参照先が数値か確認する
結果が想定外(小さい値)片側検定で2倍にせず渡している片側のときは α×2 を渡す
結果が想定外(負の値が欲しい)T.INV と TINV を混同左側累積なら T.INV、両側なら TINV

特に多いのは、片側検定で「α=0.05」をそのまま TINV に渡してしまうケースです。TINV は両側を期待しているので、片側0.05相当を求めたいなら 0.10 を渡す必要があります。混乱しやすいポイントなので注意しましょう。片側検定では新関数の T.INV.RT を使うか、コメントで意図を明示しておくと安心です。

まとめ

TINV関数のポイントを最後に整理しておきましょう。

  • TINV関数は t分布の逆関数。両側確率と自由度から t値を返す
  • 構文は TINV(probability, degrees_freedom) の2引数
  • probability は 両側確率 を渡す(片側のときは2倍する)
  • 戻り値は常に 正の t値(t分布は左右対称なので±で解釈)
  • 95%信頼区間の臨界値 → =TINV(0.05, df)
  • 両側検定5%の棄却域 → =TINV(0.05, df)
  • 互換性関数だが現在も動作する。新規なら T.INV.2T が同じ動作
  • T.INV は 左側累積確率 の逆関数で動作が異なるので注意
  • 対の関係にある ExcelのTDIST関数 とセットで覚えると理解が深まる

信頼区間の計算や仮説検定で「臨界値がほしい」と思ったら、TINV関数を思い出してください。サンプル数が大きい場合は t分布が正規分布にほぼ一致します。その場合は ExcelのNORMSINV関数ExcelのNORMINV関数 で代用しても結果はほぼ同じになります。t分布関数群を使い分けて、統計分析の精度を上げていきましょう。

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