上半期報告書、今年こそ直前の記憶だけで書かない
毎年この時期、上半期の報告書や自己評価シートを前に「あれ、4月って何やってたっけ」と固まってしまう人は多いはずです。半年分の議事録やメモは溜まっているのに、見返すのが面倒で、結局ここ2〜3週間の記憶だけで書いてしまう。提出後に「あの案件を書き忘れた」と気づくのも、毎年のことかもしれません。
問題は記憶力ではなく、「6ヶ月分のドキュメントを人力で読み返す」という作業量そのものです。議事録が30本、報告書が10本あったら、見返すだけで半日が消えます。
そこで使えるのが、GeminiとNotebookLMという2つの無料AIツールです。半年分のファイルを投入して「成果・課題・改善点」を一気に抽出し、半期報告書のたたき台まで作れます。この記事では、ファイルを集めるところからNotebookLMで分析し、Geminiで文章化し、Excelの報告書フォーマットに落とし込むまでを、コピペできるプロンプト3本付きで順番に解説します。
6月上旬〜中旬の上半期締めは、まさに今が使いどきです。今年は直前の記憶だけに頼らず、半年分の事実から報告書を組み立てましょう。
GeminiとNotebookLMの役割分担を理解する
最初に押さえたいのが、「なぜ2つのツールを使い分けるのか」です。どちらも無料で使える生成AIですが、得意分野が違います。役割を分けると、作業が一気に速くなります。
ざっくり言うと、NotebookLMが「読む担当」、Geminiが「書く担当」です。半年分のファイルを横断して事実を拾い出すのがNotebookLM、その事実を報告書らしい文章に整えるのがGeminiです。この分担を頭に入れておくと、後のステップで迷いません。
両方とも名前を聞いたことがある程度でも問題ありません。これから操作手順をひとつずつ説明します。NotebookLMの基本操作に不安がある場合は、Google NotebookLM使い方入門で先に全体像をつかんでおくと、この記事の手順がスムーズに進みます。
NotebookLMは「複数ファイルの横断分析」が得意
NotebookLMは、投入したファイル群だけを根拠にして回答するAIです。半年分の議事録や報告書をまとめて入れておけば、「この6ヶ月で達成した成果を挙げて」と聞くだけで、ファイル全体から該当箇所を拾って答えてくれます。
回答に「どのファイルの何ページから引用したか」という出典がつく点も見逃せません。報告書に書く以上、事実の裏取りは欠かせません。出典をたどれば、AIが話を盛っていないか確認できます。
容量も実用上は十分です。2026年6月時点の公式ヘルプによると、無料版でも1ノートブックあたりソースを最大50個まで追加でき、1ファイルは最大200MB、1ソースあたり最大50万語まで扱えます。半年分の議事録なら、この枠で大半が収まります。
Geminiは「文章生成・要約・整形」が得意
一方のGeminiは、文章を書く・要約する・体裁を整えるのが得意です。NotebookLMで抽出した素材を渡して「報告書の文体で3段落にまとめて」「Excelに貼れる表形式にして」と頼むと、提出できる形に仕上げてくれます。
Geminiもファイルを直接読めます。2026年6月時点の公式ヘルプでは、Geminiアプリで1プロンプトあたり最大10ファイルまでアップロードでき、文書・画像は100MBまでが上限です。ファイル数が少なければ、Geminiだけで完結させることもできます。
整理すると、ファイルが多くて横断検索したいならNotebookLM、文章化や整形をしたいならGeminiという使い分けです。次の章から、実際にこの2つを動かしていきます。
事前準備:手元に集めるファイルの種類と投入形式
ツールを開く前に、半年分の材料を1か所に集めます。ここを丁寧にやると、後の分析精度がぐっと上がります。材料が薄いと、AIも薄い答えしか返せません。
集めるのは、上半期(1月〜6月、または4月〜9月など自社の区切り)の議事録、週報・月報、プロジェクトの報告書、メールやチャットで送った進捗連絡などです。Googleドライブのフォルダにまとめておくと、後で投入しやすくなります。
ドライブ上の議事録が散らばっている場合は、NotebookLM × Google Drive連携ガイドを見ながら整理すると、ファイルを1件ずつ探す手間が省けます。
対応ファイル形式3パターン(議事録テキスト・PDF報告書・Googleドキュメント)
実務で出てくるファイルは、だいたい次の3パターンに分かれます。NotebookLMはいずれも投入できます(2026年6月時点の公式ヘルプより)。
| ファイルの種類 | 代表的な形式 | NotebookLMへの入れ方 |
|---|---|---|
| 議事録テキスト | .txt / .md | 「アップロード」からファイル選択 |
| PDF報告書 | .pdf / .docx | 「アップロード」からファイル選択 |
| Googleドキュメント | Gdocs / Gスライド / Gスプレッドシート | 「Googleドライブ」を選んで直接追加 |
この3つ以外にも、PowerPoint(.pptx)、CSV、音声ファイル、ウェブページURLなどに対応しています。手元の資料がどんな形式でも、まず投入できると考えて大丈夫です。Googleドキュメント系はドライブから直接つなげるので、ダウンロードし直す必要すらありません。
なお、Googleスプレッドシートは10万トークンに制限される点だけ覚えておきましょう。巨大な集計表は一部しか読まれないことがあります。
ファイルが見当たらないときの代替手段
「議事録なんてまともに残していない」という場合でも、材料はゼロではありません。
メールの送信済みフォルダ、チャットの自分の発言、カレンダーの予定タイトル、Excelのタスク管理表など、半年の動きが分かるものなら何でも材料になります。これらをコピーしてテキストファイルに貼り付け、月ごとに見出しを付けておくだけでも、立派なソースになります。
将来のためにも、議事録を自動で残す仕組みを作っておくのがおすすめです。会議が多い場合は、Google MeetでGeminiを使って議事録を自動作成する方法を参考に蓄積を始めておくと、来期の振り返りが一気に楽になります。
3つのStepで半期報告書をAIで組み立てる
材料が揃ったら、NotebookLMで分析します。ここからはStep 1・2・3で、ファイルから報告書まで一気に進めます。
Step 1:NotebookLMでファイルを投入し成果・課題・改善点を抽出する
ここでやるのは「半年分のファイルから事実を拾い出す」作業です。文章のきれいさは後でGeminiに任せるので、この段階では素材集めに徹します。
ノートブックへのファイル追加手順
操作はシンプルです。1ステップ=1アクションで進めましょう。
- ブラウザで notebooklm.google.com を開く
- 「新規作成」をクリックして空のノートブックを作る
- 「ソースを追加」の画面で、ドライブのファイルは「Googleドライブ」を、ローカルのPDFやテキストは「アップロード」を選ぶ
- 半年分のファイルをまとめて選び、追加する
- 画面下に「ソースの準備ができました」と出たら、分析の準備は完了
ここまで来たら、あとは質問するだけです。チャット欄に次のプロンプトを貼り付けてください。
コピペ可:成果・課題・改善点の抽出プロンプト
このプロンプトは、KPT法(Keep=継続すること・Problem=問題点・Try=次に挑戦すること)の考え方をベースにしています。半期振り返りの定番フレームワークで、課題の整理に向いています。
あなたは私の上半期業務をレビューするアシスタントです。
追加したすべてのソース(議事録・報告書・進捗連絡)を横断して読み、
以下の3つの観点で箇条書きに整理してください。
【成果(Keep)】
- この半年で達成したこと、うまくいったことを5〜8個
- 各項目に、根拠となったファイル名と該当時期を添える
【課題(Problem)】
- うまくいかなかったこと、停滞した案件を3〜5個
- なぜそうなったかの背景も一言で添える
【次に挑戦すること(Try)】
- 課題を踏まえて下半期に取り組むべきことを3〜5個
数値(件数・金額・達成率など)がソースにあれば必ず拾ってください。
推測で書かず、ソースに書かれている事実のみを使ってください。
回答が出たら、出典マークをいくつかクリックして、元のファイルと内容が合っているか確認しましょう。ここで事実を固めておくと、報告書全体の信頼性が上がります。この結果は次のステップで使うので、テキストをコピーしておくかノートブックに保存しておいてください。
Step 2:Geminiで半期サマリーを生成する
NotebookLMで素材が揃ったら、次はGeminiで報告書らしい文章に仕上げます。箇条書きのままでは報告書に貼れないので、文体を整える工程です。
NotebookLMの抽出結果をGeminiに渡す方法
渡し方は2通りあります。難しく考えず、やりやすい方で大丈夫です。
1つ目は、NotebookLMの回答をそのままコピーして、Geminiのチャット欄に貼り付ける方法です。いちばん手軽で、これで十分です。
2つ目は、Geminiにファイルごと渡す方法です。2026年6月時点では、Geminiアプリで1プロンプトあたり最大10ファイルまでアップロードできます。NotebookLMの結果をテキストファイルとして保存しGeminiに添付すれば、より多くの情報を一度に渡せます。ファイルが少ないうちは、コピペで問題ありません。
コピペ可:半期サマリー生成プロンプト
Step 1の抽出結果を貼り付けたうえで、続けて次のプロンプトを入力します。STAR法(状況→課題→行動→結果の流れで実績を整理するフレームワーク)を使い、評価者に伝わりやすい文章にしてもらいます。
上に貼った「成果・課題・次に挑戦すること」をもとに、
上半期報告書のたたき台を作ってください。
# 出力の条件
- 文体は社内報告書向けのです・ます調
- 各成果はSTAR法(状況→課題→行動→結果)の流れで2〜3文にまとめる
- 数値は省略せずそのまま残す
- 全体を「総括(3文)」「主な成果」「課題と下半期の方針」の3パートに分ける
- 誇張表現は避け、事実ベースで簡潔に書く
まず総括から書き始めてください。
出てきた文章は、そのまま提出するのではなく、必ず自分の言葉で見直してください。AIは事実関係を取り違えることがあります。特に数値と固有名詞は、元のファイルと突き合わせて確認しましょう。Geminiの調査機能をさらに活用したい場合は、Gemini Deep Researchの使い方も合わせて読むと、業界動向の補足調査などに応用できます。
Excelの半期報告書フォーマットに転記する
最後に、Geminiが作った文章をExcelの報告書フォーマットに落とし込みます。多くの会社では所定の様式に記入して提出するはずです。表形式に整えておけば、コピペ一発で様式に貼れます。
コピペ可:Excel転記用プロンプト(列見出し・記入例付き)
Step 2のサマリーに続けて、次のプロンプトを入力します。列見出しと記入例を具体的に指定するのがコツです。曖昧に頼むと列がずれるので、ここは細かく指定します。
上で作成した報告書の内容を、Excelに貼れる表形式(タブ区切り)に変換してください。
# 列の構成(この順番・見出しで固定)
項目区分 / 取り組み内容 / 状況(S)/ 課題(T)/ 行動(A)/ 結果(R)/ 自己評価
# 記入例(この粒度に揃えてください)
成果 新規取引先の開拓 既存顧客が減少している状況 新規顧客獲得が急務の課題 月10件の新規訪問を継続 下期に3社と契約締結 A
# 条件
- 1行=1つの取り組み
- 「自己評価」はS/A/B/Cの4段階で、根拠が弱いものはBにする
- 数値は省略しない
- ヘッダー行を1行目に入れる
出力されたタブ区切りのテキストをコピーし、Excelのセルに貼り付けると、自動的に列が分かれて表になります。あとは自社の様式に合わせて列を並べ替えれば完成です。
転記後の表をExcelでさらに集計・分析したい場合は、GeminiでExcel・スプレッドシートを分析する方法が役立ちます。件数の集計やグラフ化までつなげられます。日次・週次の定型レポートを自動化したい場合はGASとGeminiでスプレッドシートのデータを自動要約する仕組みも参考にしてください。
転記後の確認・修正ポイントと機密情報の扱い
貼り付けて終わり、にしないことが大事です。提出前に、次の3点だけは必ず目視で確認してください。
- 数値・日付・取引先名などの固有情報が、元ファイルと一致しているか
- AIが「達成」と書いたものが、本当に達成済みか(進行中を完了と誤認していないか)
- 自己評価の段階が、自分の実感と大きくずれていないか
AIが作るのはあくまで「たたき台」です。事実確認と評価の最終判断は、必ず自分で行いましょう。
機密情報の扱いについて
このワークフローでは社内ドキュメントをAIに投入するので、機密情報の取り扱いには注意が必要です。まず、アカウントの種類でデータの扱いが変わります。2026年6月時点の公式ヘルプによると、個人アカウント(無料)では、フィードバックを送らない限り入力内容が学習に使われません。会社のGoogle Workspace / Workspace for Educationアカウントでは、アップロード・質問・回答が「人間のレビュアーに確認されることも、AIモデルの学習に使われることもない」と公式に明示されています。可能であれば、会社のWorkspaceアカウントで使うのが安全です。
また、NotebookLMの認証取得状況(ISO・SOCなどのコンプライアンス認証)はプランや時期によって変わります。高度なコンプライアンス要件が求められるデータを扱う場合は、投入する前に自社の情報システム部門とGoogleの最新のコンプライアンス情報を確認してください。
実務上は、次の3点を守って運用しましょう。
1. 顧客の個人情報・契約金額・未公表の機密案件は、投入前にマスキングするか除外する
2. 会社にAI利用ルールがある場合は、必ずそれに従う
3. 判断に迷う情報は、上長や情報システム部門に確認してから投入する
まとめ:3ステップでたたき台が完成する
上半期の振り返りは、6ヶ月分のドキュメントという「材料」さえ集めれば、AIで一気にたたき台まで進められます。最後に流れをおさらいしましょう。
- 事前準備:半年分の議事録・報告書をドライブやフォルダに集める
- Step 1:NotebookLMに投入し、成果・課題・改善点を抽出する
- Step 2:抽出結果をGeminiに渡し、報告書の文章に整える
- Step 3:Excel転記用プロンプトで表形式にし、自社の様式に貼る
ポイントは、NotebookLMで「事実を拾い」、Geminiで「文章に整える」という役割分担です。そして最後は必ず自分の目で事実確認をすること。これだけで、直前の記憶頼みだった報告書が、半年分の事実に基づいたものに変わります。
上半期振り返りのこのAIワークフローは、来期以降も使い回せます。今期に議事録の蓄積も整えておけば、次の振り返りはもっと短時間で終わります。まずは手元のファイルを1か所に集めるところから始めてみましょう。
半期報告書の作成でほかにも困りごとがあれば、GeminiでExcel・スプレッドシートを分析する方法やGoogle NotebookLM使い方入門も合わせてご覧ください。
