この記事では、Excelの IMPRODUCT関数 を使って複素数どうしの積(かけ算)を求める方法を、実務目線で解説します。
この記事は次のような方におすすめです。
- 複素数を使う計算をExcelで自動化したい
- IMPRODUCT関数の使い方とエラーの原因を整理したい
- 関連する複素数関数(IMSUM、IMSUB、IMDIVなど)との違いを知りたい
複素数は電気工学・制御工学・信号処理などで登場する数で、普段の事務作業では馴染みが薄いかもしれません。ですが、一度使い方を覚えておくと、技術系の書類作成やシミュレーションで手計算する手間が一気に減ります。
IMPRODUCT関数とは?
読み方と機能
IMPRODUCT関数の読み方は「イマジナリー プロダクト」です。「IM(Imaginary=虚数)」と「PRODUCT(積)」を組み合わせた名前で、指定した複素数どうしの積(かけ算)を返す関数 です。
Excelでは複素数を "3+4i" のような 文字列 として扱うため、通常の *(アスタリスク)では計算できません。IMPRODUCT関数はこの文字列を解釈して、複素数のルールに従ってかけ算してくれます。
複素数を作るにはCOMPLEX関数を併用する
セルに手入力で "3+4i" と書いてもIMPRODUCTで計算できますが、実部と虚部が別々のセルに入っている場合は COMPLEX関数 を使って複素数の形式に整えると扱いやすくなります。
例: =COMPLEX(3,4) → 3+4i
IMPRODUCT関数の構文
=IMPRODUCT( 複素数1, [複素数2], ... )
| 引数 | 必須 | 内容 |
|---|---|---|
| 複素数1 | 必須 | 積を求めたい最初の複素数(”x+yi” または “x+yj” 形式) |
| 複素数2 以降 | 任意 | 2つ目以降の複素数。最大255個まで指定可能 |
- 引数は
"3+4i"のような文字列、もしくは複素数が入ったセル参照のどちらでも指定できます - 虚数単位は
iとjのどちらでも使えますが、1つの計算式内では統一 する必要があります - 実数(例:
5)を指定しても計算可能です。内部的に5+0iとして扱われます
IMPRODUCT関数の使い方(具体例)
例1: 直接値を入力して計算する
=IMPRODUCT("3+4i","-4+6i")
結果: -36+2i
計算の内訳は次の通りです。
(3+4i) × (-4+6i) = -12 + 18i – 16i + 24i² = -12 + 2i – 24 = -36 + 2i
手計算だと符号ミスをしがちですが、IMPRODUCTに任せれば一瞬です。
例2: セル参照で複数の複素数をかけ算する
A1〜A3に複素数が入っているケースです。
| セル | 値 |
|---|---|
| A1 | 2+3i |
| A2 | 1-1i |
| A3 | 4+0i |
=IMPRODUCT(A1,A2,A3)
結果: 20+4i
3つ以上の複素数をまとめてかけ算できるので、段階的な計算を1セルに集約できます。
例3: COMPLEX関数と組み合わせる
実部と虚部が分かれている場合は、COMPLEXとネストするとスッキリ書けます。
=IMPRODUCT(COMPLEX(A1,B1), COMPLEX(A2,B2))
A列に実部、B列に虚部が入っていれば、このままコピーして複数行に展開できます。
実務での活用シーン
複素数の積は、次のような場面で使われます。
- 交流回路のインピーダンス計算: 抵抗・コイル・コンデンサを組み合わせた合成インピーダンスは複素数の積や商で求められます
- 信号処理・フィルタ設計: 伝達関数の合成にかけ算が多用されます
- 制御工学のシミュレーション: 周波数応答の計算で複素数の掛け算を繰り返します
- 学術レポートや社内資料の計算チェック: 手計算の検算用としても便利です
どれも「電卓で叩くと符号ミスで詰む」典型パターンなので、Excelに任せてしまうのが安全です。
よくあるエラーと対処法
| エラー | 原因 | 対処法 |
|---|---|---|
#NUM! | 引数の形式が複素数として解釈できない(例: "3 + 4i" のように空白が入っている) | 空白を取り除き、"3+4i" の形に整える |
#VALUE! | 文字列として数値以外が混ざっている、またはセルが空 | 引数のセルが複素数形式になっているか確認する |
| 虚数単位の混在 | i と j が混ざっている | どちらかに統一する。COMPLEX関数の第3引数で指定可能 |
特に多いのが 全角の + や空白混入 です。外部からコピーしたデータをそのまま使うとハマりやすいので、TRIM関数やSUBSTITUTE関数でクリーニングしてから渡すと安全です。
関連する複素数関数
IMPRODUCTとセットで覚えておくと便利な関数です。
- IMSUM関数: 複素数の和(足し算)
- IMSUB関数: 複素数の差(引き算)
- IMDIV関数: 複素数の商(割り算)
- IMPOWER関数: 複素数のべき乗
- COMPLEX関数: 実部と虚部から複素数を作成
- IMREAL関数: 複素数の実部を取り出す
- IMAGINARY関数: 複素数の虚部を取り出す
四則演算系(IMSUM・IMSUB・IMPRODUCT・IMDIV)を一通り押さえておけば、複素数計算はほぼ自動化できます。
まとめ
IMPRODUCT関数のポイントを振り返ります。
- 機能: 指定した複素数どうしの積を返す
- 構文:
=IMPRODUCT(複素数1, [複素数2], ...)で最大255個まで指定可能 - 入力形式:
"x+yi"または"x+yj"の文字列、もしくはセル参照 - ベストプラクティス: COMPLEX関数と組み合わせると実部・虚部を別管理できて保守性が上がる
- ハマりどころ: 全角記号・空白混入・虚数単位の不統一に注意
手計算で符号ミスに消耗していた複素数のかけ算も、IMPRODUCT関数を使えば一瞬で終わります。IMSUM・IMSUB・IMDIVとあわせて覚えて、複素数計算を丸ごとExcelに任せてしまいましょう。
