「ASINH関数ってASIN関数と何が違うの?」と迷ったことはありませんか。名前が似ているだけに混同しやすく、使い分けがわからないまま放置している方も多いはずです。
この記事では、ExcelのASINH関数の基本から使い方までを丁寧に解説します。SINH関数との逆算デモや定義式の検算、エラーの注意点もカバーしていますよ。
ASINH関数とは?双曲線逆正弦の基本
ASINH関数は、双曲線正弦(SINH)の逆関数にあたるExcelの数学関数です。
読み方は「アーク・サイン・ハイパーボリック」です。日本語では「逆双曲線正弦(ぎゃくそうきょくせんせいげん)」とも呼ばれます。
ひとことで言うと、「SINHで変換された値を元に戻す」ための関数です。SINHが「入力→出力」の変換だとすると、ASINHは「出力→入力」へ逆算する役割を担います。
対応バージョンはExcel 2007以降、Microsoft 365、Web版です。
ASIN関数との違い
ASINH関数とASIN関数は名前が似ていますが、まったく別の関数です。関数名末尾の「H」はHyperbolic(双曲線)を意味します。「H」があるかどうかで見分けてください。
| 比較項目 | ASINH関数 | ASIN関数 |
|---|---|---|
| 分類 | 逆双曲線関数 | 逆三角関数 |
| 引数の範囲 | すべての実数 | -1〜1のみ |
| 戻り値の範囲 | すべての実数 | -π/2〜π/2 |
| #NUM!エラー | 発生しない | 引数が範囲外で発生 |
ASIN関数は三角関数の逆関数で、引数が-1から1に制限されます。一方、ASINH関数は双曲線関数(ハイパーボリック関数)の逆関数で、引数に制限がありません。この違いを押さえておくと迷わなくなりますよ。
ASINH関数の構文・引数
構文: =ASINH(数値)
=ASINH(数値)
引数は「数値」のひとつだけです。とてもシンプルな構文ですね。
引数は全実数OK — 制限なし
| 引数 | 必須 | 説明 |
|---|---|---|
| 数値 | はい | 逆双曲線正弦を求めたい値。すべての実数を指定可能 |
ASINH関数の最大の特徴は、引数に制限がないことです。正の数、負の数、ゼロ、どんな値でも受け付けます。#NUM!エラーが発生しません。
同じ逆双曲線関数でも、ACOSH関数は「1以上」、ATANH関数は「-1より大きく1未満」と制約があります。ASINH関数だけが制限なしで使えるのがポイントです!
奇関数の性質: ASINH(-x) = -ASINH(x)
ASINH関数は奇関数(きかんすう)です。入力の符号を反転すると、出力の符号も反転します。
=ASINH(-1) → 約 -0.8814(=ASINH(1)の符号反転)
=ASINH(0) → 0
この性質を知っておくと、負の値の結果をすばやく予測できますよ。
ASINH関数の使用例
基本例:代表的な値の計算結果
まずは代表的な値をASINH関数に入れた結果を確認しましょう。
| 数式 | 結果 |
|---|---|
=ASINH(0) | 0 |
=ASINH(1) | 0.881373587 |
=ASINH(-1) | -0.881373587 |
=ASINH(10) | 2.998222950 |
=ASINH(100) | 5.298342366 |
引数が正なら正、負なら負の値が返ります。ゼロを入れるとゼロになるのも奇関数の特徴ですね。
SINH→ASINHで逆算するデモ
ASINH関数がSINH関数の逆関数であることを、実際に確認してみましょう。
次のようにセルを配置します。
| セル | 内容 | 数式 |
|---|---|---|
| A2 | 元の値 | 1 |
| B2 | SINHの結果 | =SINH(A2) |
| C2 | ASINHで逆算 | =ASINH(B2) |
代表的な値を入れた結果はこちらです。
| 元の値(x) | SINH(x) | ASINH(SINH(x)) |
|---|---|---|
| -2 | -3.626860408 | -2 |
| -1 | -1.175201194 | -1 |
| 0 | 0 | 0 |
| 1 | 1.175201194 | 1 |
| 2 | 3.626860408 | 2 |
| 5 | 74.20321058 | 5 |
C列がすべてA列の元の値と一致していますよね。
=ASINH(SINH(A2))
この数式をC列に入れるだけで、逆算が正しく機能していることを確認できます。負の値でもきちんと元に戻るのがASINHの強みですよ。
定義式 LN(x+SQRT(x²+1)) でExcel検算
ASINH関数の数学的な定義式は次のとおりです。
ASINH(x) = LN(x + SQRT(x² + 1))
この定義式をExcelのセル式で書き換えると、こうなります。
=LN(A2+SQRT(A2^2+1))
ちょっとむずかしく見えますが、やっていることはシンプルです。「xにx²+1の平方根を足して、自然対数を取る」だけですよ。
ACOSH関数の定義式がSQRT(x²-1)であるのに対し、ASINHはSQRT(x²+1)です。「-1」と「+1」の違いに注目してください。+1なのでルートの中身が必ず正になり、引数に制限がない理由がここにあります。
実際にASINH関数の結果と比較してみましょう。
| 数値(x) | =ASINH(x) | =LN(x+SQRT(x^2+1)) | 一致 |
|---|---|---|---|
| 0 | 0 | 0 | Yes |
| 1 | 0.881373587 | 0.881373587 | Yes |
| -1 | -0.881373587 | -0.881373587 | Yes |
| 10 | 2.998222950 | 2.998222950 | Yes |
すべての値で完全に一致しています。定義式を知っておくと、ASINH関数が使えない古い環境でも同じ計算ができるので覚えておくと便利ですよ。
エラーと注意点
ASINH関数は引数の制限がないため、#NUM!エラーが発生しません。これが最大の安心ポイントです。
発生しうるエラーは以下の2種類だけです。
#VALUE!エラー
原因: 引数に文字列など、数値として認識できないデータを指定した場合に発生します。
=ASINH("abc") → #VALUE!エラー
対処法: 引数のセルに数値が入っているか確認してください。セル参照を使っている場合は、参照先が文字列になっていないかチェックしましょう。
#NAME?エラー
原因: 関数名のスペルミスで発生します。
=ASNH(1) → #NAME?エラー(「I」が抜けている)
=ASINNH(1) → #NAME?エラー(「N」が多い)
対処法: 正しいスペルは ASINH です。入力時にオートコンプリートから選択すると確実ですよ。
#NUM!が出ないことの確認
ACOSH関数やATANH関数では引数の範囲外で#NUM!エラーが出ますが、ASINHでは出ません。
=ASINH(-999999) → 正常に計算される
=ASINH(0) → 0(正常)
=ASINH(999999) → 正常に計算される
どんな数値を入れても数値が返ります。データの範囲チェックが不要なので、大量のデータに対して安心して使えますよ。
双曲線関数シリーズ一覧
ASINH関数は双曲線関数ファミリーのひとつです。関連する関数をまとめました。
| 関数 | 分類 | 説明 | 引数の制限 |
|---|---|---|---|
| SINH | 双曲線関数 | 双曲線正弦を返す | なし |
| COSH | 双曲線関数 | 双曲線余弦を返す | なし |
| TANH | 双曲線関数 | 双曲線正接を返す | なし |
| ASINH | 逆双曲線関数 | SINHの逆算 | なし |
| ACOSH | 逆双曲線関数 | COSHの逆算 | 1以上 |
| ATANH | 逆双曲線関数 | TANHの逆算 | -1〜1(境界含まず) |
| COTH | 双曲線関数 | 双曲線余接を返す | 0以外 |
| ACOTH | 逆双曲線関数 | COTHの逆算 | 絶対値1より大 |
| SECH | 双曲線関数 | 双曲線正割を返す | なし |
| CSCH | 双曲線関数 | 双曲線余割を返す | 0以外 |
逆双曲線関数のうち、引数に制限がないのはASINHだけです。ACOSH・ATANHと比べて使いやすい関数だと言えますね。
まとめ
ExcelのASINH関数について解説しました。要点を振り返りましょう。
- ASINH関数はSINH関数の逆関数で、
=ASINH(数値)と書く - 引数はすべての実数が指定可能で、
#NUM!エラーが出ない - 定義式は
LN(x+SQRT(x²+1))で、Excelで再現して検算できる - 奇関数の性質を持ち、
ASINH(-x) = -ASINH(x)が成り立つ - ASIN関数とは名前が似ているだけで、引数の範囲も分類もまったく異なる
双曲線関数ファミリーの他の関数もあわせてチェックすると、理解が深まりますよ。
