「ExcelのACOTH関数って、どんなときに使うの?」と疑問に思う方は多いですよね。双曲線関数の名前自体がむずかしそうで、つい敬遠してしまいがちです。でも、引数の制約を知らずに使うと#NUM!エラーが出て手が止まってしまいます。
この記事では、ExcelのACOTH関数の基本から実践的な使い方までを丁寧に解説します。COTH関数との逆算デモやエラー回避テクニックもカバーしますよ。
ExcelのACOTH関数とは?
ACOTH関数は、双曲線余接(COTH)の逆関数にあたるExcelの数学関数です。
読み方は「アーク・コタンジェント・ハイパーボリック」です。日本語では「逆双曲線余接」とも呼ばれます。
ひとことで言うと、「COTHで変換された値を元に戻す」ための関数です。COTHが「入力から出力」への変換だとすると、ACOTHは「出力から入力」へ逆算する役割を担います。
対応バージョンはExcel 2013以降とMicrosoft 365です。
COTH関数との逆関数の関係
ACOTHを理解するには、まずCOTH関数との関係を押さえましょう。
COTH関数は双曲線余接(ハイパーボリック・コタンジェント)を返す関数です。たとえば=COTH(1)と入力すると、約1.3130が返ります。
ACOTH関数はこの逆の計算をします。=ACOTH(1.313035285)と入力すると、元の値「1」が返ってきますよ。
ACOTH(COTH(x)) = x が成り立つ
逆関数の関係をひとことで表すと、次の等式になります。
ACOTH(COTH(x)) = x
COTHで変換した結果をACOTHに渡すと、必ず元の値に戻ります。「行って帰ってくる」イメージですね。
この性質は、あとで紹介する逆算テーブルで実際に確認できます。
ACOTH関数の書き方(構文と引数)
基本構文
=ACOTH(数値)
引数は「数値」のひとつだけです。とてもシンプルな構文ですね。
引数の詳細
| 引数 | 必須 | 説明 |
|---|---|---|
| 数値 | はい | 逆双曲線余接を求めたい値。絶対値が1より大きい実数を指定 |
ACOTH関数の最大のポイントは引数の制約です。絶対値が1より大きい数値しか受け付けません。つまり、x > 1 または x < -1 の範囲だけが有効です。
-1から1の範囲(-1 <= x <= 1)を指定すると#NUM!エラーになります。
なぜこの制約があるのでしょうか。ACOTH関数の定義式にはLN((x+1)/(x-1))が含まれています。|x|が1以下だと分母がゼロになったり、対数の中身が負になったりして、実数の範囲では計算できないためです。
ACOTH関数の基本的な使い方
ここでは、COTH関数の出力値をACOTHで元に戻す「逆算テーブル」を作ってみましょう。
Excelで逆算テーブルを作る手順
次のようにセルを配置します。
| セル | 内容 | 数式 |
|---|---|---|
| A2 | 元の値 | 1 |
| B2 | COTHの結果 | =COTH(A2) |
| C2 | ACOTHで逆算 | =ACOTH(B2) |
A列に元の値を入力し、B列でCOTH変換します。C列でACOTH逆算を行います。
代表的な値を入れた結果はこちらです。
| 元の値(x) | COTH(x) | ACOTH(COTH(x)) |
|---|---|---|
| 0.5 | 2.163953414 | 0.5 |
| 1 | 1.313035285 | 1 |
| 2 | 1.037314720 | 2 |
| 3 | 1.004969823 | 3 |
| 5 | 1.000090804 | 5 |
ACOTH(COTH(x))で元の値が戻ることを確認
表のC列を見ると、すべてA列の元の値と一致していますよね。
=ACOTH(COTH(A2))
この数式をC列に入れるだけで、逆算が正しく機能していることを確認できます。COTHとACOTHがペアの関係であることが一目でわかりますよ。
COTHの戻り値はxが大きくなるほど1に近づく点も注目です。x=5のときCOTH(x)は約1.00009で、ほぼ1です。
ACOTH関数の実践的な活用例
定義式 (1/2)*LN((x+1)/(x-1)) をExcelで再現する
ACOTH関数の数学的な定義式は次のとおりです。
ACOTH(x) = (1/2) * LN((x+1)/(x-1))
この定義式をExcelのセル式で書き換えてみましょう。
=0.5*LN((A2+1)/(A2-1))
LN関数は自然対数(底がeの対数)を返す関数です。
ちょっとむずかしく見えますが、やっていることはシンプルです。「(x+1)/(x-1)の自然対数を取って、2で割る」だけですよ。
ACOTH関数の結果と完全一致を確認
実際にACOTH関数の結果と定義式の結果を比較してみましょう。
| 数値(x) | =ACOTH(x) | =0.5*LN((x+1)/(x-1)) | 一致 |
|---|---|---|---|
| 2 | 0.549306144 | 0.549306144 | Yes |
| 3 | 0.346573590 | 0.346573590 | Yes |
| 5 | 0.202732554 | 0.202732554 | Yes |
| 10 | 0.100335348 | 0.100335348 | Yes |
すべての値で完全に一致していますね。ACOTH関数は内部でこの定義式と同じ計算を行っています。
定義式を知っておくと、ACOTH関数が使えない古い環境でも同じ計算を再現できるので便利です。
ATANH関数との数学的な関係
ACOTH関数はATANH関数(逆双曲線正接)と密接な関係があります。
数学的に、次の等式が成り立ちます。
ACOTH(x) = ATANH(1/x) (|x| > 1のとき)
つまり、ACOTH(5)とATANH(1/5)は同じ値を返します。Excelで確認してみましょう。
| 数値(x) | =ACOTH(x) | =ATANH(1/x) | 一致 |
|---|---|---|---|
| 2 | 0.549306144 | 0.549306144 | Yes |
| 5 | 0.202732554 | 0.202732554 | Yes |
| 10 | 0.100335348 | 0.100335348 | Yes |
ATANH関数で代替できることを知っておくと、数式の書き方にバリエーションが広がりますよ。
ACOTH関数のよくあるエラーと対処法
ACOTH関数で発生しやすいエラーは2種類です。
#NUM!エラー
原因: 引数の絶対値が1以下の値を指定した場合に発生します。
=ACOTH(0.5) → #NUM!エラー
=ACOTH(1) → #NUM!エラー
=ACOTH(0) → #NUM!エラー
=ACOTH(-1) → #NUM!エラー
x=1やx=-1でもエラーになる点に注意してください。「1より大きい」であって「1以上」ではありません。
対処法: IF関数とABS関数(絶対値を返す関数)を組み合わせて事前チェックしましょう。
=IF(ABS(A2)>1, ACOTH(A2), "絶対値が1より大きい値を入力")
この数式なら、条件を満たさないときはメッセージを表示してエラーを回避できますよ。
#VALUE!エラー
原因: 引数に文字列など、数値として認識できないデータを指定した場合に発生します。
=ACOTH("abc") → #VALUE!エラー
対処法: 引数のセルに数値が入っているか確認してください。ISNUMBER関数で事前チェックもできます。
=IF(ISNUMBER(A2), ACOTH(A2), "数値を入力してください")
よくある入力ミス:ACOT関数との混同
ACOT関数(逆余接)とACOTH関数(逆双曲線余接)は名前が似ていますが、まったく別の関数です。
| 関数 | 分類 | 引数の範囲 | 戻り値 | ||
|---|---|---|---|---|---|
| ACOT | 逆三角関数 | すべての実数 | 0からπ(ラジアン) | ||
| ACOTH | 逆双曲線関数 | x | > 1 | 実数 |
ACOT関数は三角関数のコタンジェントの逆関数です。ACOTH関数は双曲線関数のコタンジェントの逆関数です。名前の末尾に「H」が付くかどうかで使い分けてくださいね。
ACOTH関数と関連する双曲線関数の使い分け
ACOTH関数と混同しやすい関数を比較表にまとめました。
| 関数 | 分類 | 引数の範囲 | 戻り値の範囲 | 用途 | ||
|---|---|---|---|---|---|---|
| ACOTH | 逆双曲線関数 | x | > 1 | 0を除く実数 | COTHの逆算 | |
| ACOSH | 逆双曲線関数 | 1以上 | 0以上の実数 | COSHの逆算 | ||
| ATANH | 逆双曲線関数 | -1 < x < 1 | すべての実数 | TANHの逆算 | ||
| COTH | 双曲線関数 | 0以外 | y | > 1 | 双曲線余接の計算 | |
| COSH | 双曲線関数 | すべての実数 | 1以上 | 双曲線余弦の計算 | ||
| CSCH | 双曲線関数 | 0以外 | すべての実数 | 双曲線余割の計算 | ||
| TANH | 双曲線関数 | すべての実数 | -1 < y < 1 | 双曲線正接の計算 | ||
| SINH | 双曲線関数 | すべての実数 | すべての実数 | 双曲線正弦の計算 |
ポイントは引数の範囲の違いです。ACOTHは「絶対値が1より大きい」、ATANHは「-1から1の間」と、ちょうど相補的(お互いの範囲を補い合う)な関係になっています。
逆双曲線関数のファミリーとしてはACOTH・ACOSH・ATANHの3つがよく使われます。それぞれCOTH・COSH・TANHの逆算に対応しているので、セットで覚えておくと迷いにくいですよ。
まとめ
ExcelのACOTH関数について解説しました。要点を振り返りましょう。
- ACOTH関数はCOTH関数の逆関数で、
=ACOTH(数値)と書く - 引数は絶対値が1より大きい実数のみ。|x| <= 1だと
#NUM!エラーになる - 定義式は
(1/2)*LN((x+1)/(x-1))で、Excelで再現して検算できる ACOTH(x) = ATANH(1/x)の関係でATANH関数でも代替可能- ACOT関数(逆三角関数)とは名前が似ているだけで別の関数
双曲線関数ファミリーの他の関数もあわせてチェックすると、理解が深まりますよ。
Googleスプレッドシートでも同じACOTH関数が使えます。スプレッドシート版の解説はこちらの記事を参考にしてください。
