「設備投資の収益率を計算したいけど、IRR関数だと結果がなんだかしっくりこない…」そんな経験はありませんか?
IRR関数は便利ですが、実は計算上の前提に少しクセがあります。得られた収益をすべて同じ利率で再投資できる、という仮定で計算するんですよね。現実のビジネスではそうもいかないことが多いはずです。
そこで活躍するのがMIRR関数です。「安全利率」と「危険利率」の2つの利率を使い分けることで、より現実的な投資収益率を求められますよ。
ExcelのMIRR関数とは?
MIRR関数は、キャッシュフローから修正内部収益率(Modified Internal Rate of Return)を求める関数です。
読み方は「モディファイド・インターナル・レート・オブ・リターン」です。MIRRは「Modified IRR」の略で、IRR関数を改良した関数という位置づけになります。
通常のIRR関数は、収益の再投資利率とプロジェクトの割引率を同じ値として計算します。一方、MIRR関数は以下の2つの利率を別々に指定できます。
- 安全利率(finance_rate): 支出したお金の調達コスト(借入金利など)
- 危険利率(reinvest_rate): 得られた収益を再投資するときの利率
この仕組みのおかげで、現実に近い条件で収益率を評価できるのがMIRR関数の強みです。
ExcelのMIRR関数の書き方
基本構文
=MIRR(値, 安全利率, 危険利率)
引数の説明
| 引数 | 必須/省略可 | 説明 |
|---|---|---|
| 値 | 必須 | キャッシュフローを含むセル範囲または配列。正の値(収入)と負の値(支出)を最低1つずつ含む必要があります |
| 安全利率 | 必須 | 支出額(負のキャッシュフロー)に対する利率。資金調達コストにあたります |
| 危険利率 | 必須 | 収益額(正のキャッシュフロー)の再投資利率。運用利回りにあたります |
引数はすべて必須で、省略できるものはありません。「値」に指定するセル範囲には、空白セルは0として扱われますが、文字列が含まれていると無視されるので注意してくださいね。
MIRR関数の基本的な使い方
ここでは、設備投資の収益率を計算する例で基本操作を確認してみましょう。
サンプルデータ
ある設備投資プロジェクトで、初期投資が-500万円、その後5年間のキャッシュフローが次のとおりだとします。
| セル | 内容 | 金額 |
|---|---|---|
| B2 | 初期投資(0年目) | -5,000,000 |
| B3 | 1年目の収益 | 1,200,000 |
| B4 | 2年目の収益 | 1,500,000 |
| B5 | 3年目の収益 | 1,800,000 |
| B6 | 4年目の収益 | 1,600,000 |
| B7 | 5年目の収益 | 1,400,000 |
安全利率(資金調達コスト)を5%、危険利率(再投資利率)を8%とします。
数式の入力
=MIRR(B2:B7, 5%, 8%)
この数式の結果は約11.84%になります。
つまり、この設備投資は年率約12%のリターンが見込めるということですね。数式の中身をもう少し詳しく見てみましょう。
- B2:B7: 初期投資(-500万)と5年間の収益をまとめた範囲
- 5%: 安全利率。銀行借入の金利5%を想定
- 8%: 危険利率。得られた収益は年8%で再運用できると想定
セル参照で利率を指定することもできます。B8に5%、B9に8%を入れておけば =MIRR(B2:B7, B8, B9) と書けますよ。
MIRR関数の実践的な使い方・応用例
複数プロジェクトの比較
投資先を比較するときにMIRR関数が特に役立ちます。たとえば2つのプロジェクトを比べてみましょう。
プロジェクトA(初期投資-300万円、3年間)
| 年 | キャッシュフロー |
|---|---|
| 0年目 | -3,000,000 |
| 1年目 | 1,000,000 |
| 2年目 | 1,200,000 |
| 3年目 | 1,500,000 |
プロジェクトB(初期投資-300万円、3年間)
| 年 | キャッシュフロー |
|---|---|
| 0年目 | -3,000,000 |
| 1年目 | 200,000 |
| 2年目 | 500,000 |
| 3年目 | 2,800,000 |
安全利率4%、危険利率7%で比較すると次のようになります。
=MIRR(D2:D5, 4%, 7%) → プロジェクトA: 約9.41%
=MIRR(E2:E5, 4%, 7%) → プロジェクトB: 約5.91%
プロジェクトAのほうがMIRRが高いので、収益性ではAが優れていると判断できます。早い時期にキャッシュが回収できるプロジェクトのほうが、再投資の効果が大きくなるためですね。
PMT関数と組み合わせたローン返済シミュレーション
設備投資の資金をローンで調達する場合、PMT関数で月々の返済額を計算し、MIRR関数で投資全体の収益率を把握する、という使い分けもできますよ。
よくあるエラーと対処法
#DIV/0!エラー
最もよく見るエラーです。以下の場合に発生します。
- キャッシュフローに正の値と負の値が両方含まれていない: MIRR関数は収入(正)と支出(負)の両方が必要です。すべて正の値やすべて負の値だけでは計算できません
- 値の範囲が空: データが入っていないセル範囲を指定するとこのエラーになります
対処法としては、キャッシュフローの範囲に正と負の値が最低1つずつ含まれているか確認してください。
#VALUE!エラー
安全利率や危険利率に数値以外の値(文字列など)を指定すると発生します。利率のセルに「5%」と文字で入力するのではなく、数値として0.05を入れるか、セルの表示形式をパーセントに設定してくださいね。
#NAME?エラー
関数名のスペルミスが原因です。「MIRR」を「MIR」や「MIIR」と入力していないか確認しましょう。
ExcelのMIRR関数とIRR関数の違い・使い分け
MIRR関数を理解するうえで、IRR関数との違いを押さえておくことが大切です。
| 比較項目 | MIRR関数 | IRR関数 |
|---|---|---|
| 再投資利率 | 別途指定できる(危険利率) | プロジェクトのIRRと同率で再投資する前提 |
| 資金調達コスト | 別途指定できる(安全利率) | 考慮しない |
| 計算結果の数 | 常に1つ | 複数の解が存在する場合がある |
| 現実への近さ | より現実的 | やや楽観的になりやすい |
| 対応バージョン | Excel 2007以降 | Excel 2007以降 |
どちらを使うべき?
- IRR関数が向いているケース: キャッシュフローが単純で、ざっくりした収益率の目安がほしいとき
- MIRR関数が向いているケース: 借入金利と運用利回りが異なる場合や、より正確な投資評価を行いたいとき
実務では、まずIRR関数でざっくり計算し、詳細な検討にMIRR関数を使う、という流れが多いですよ。
RATE関数やNPER関数と合わせて覚えておくと、財務分析の幅がぐっと広がります。
まとめ
ExcelのMIRR関数は、安全利率と危険利率を別々に設定できる、現実的な投資収益率の計算に適した関数です。
ポイントをおさらいしましょう。
- MIRR関数の構文は
=MIRR(値, 安全利率, 危険利率)で、引数は3つとも必須 - 安全利率は資金調達コスト、危険利率は再投資利率を指定する
- IRR関数より現実に即した収益率が求められる
- キャッシュフローには正の値と負の値の両方が必要(片方だけだと#DIV/0!エラー)
- 複数の投資案件を比較するときに特に便利
設備投資やプロジェクトの評価をExcelで行う方は、ぜひMIRR関数を活用してみてください。IRR関数とセットで使いこなせると、投資判断の精度が一段と上がりますよ。
