「広告費をいくらまで減らすと売上がゼロになるのか」「固定費はいくらなのか」——こうした分析を電卓で計算していませんか。ExcelのINTERCEPT関数を使えば、過去のデータから線形回帰直線の切片を一発で求められます。この記事では、INTERCEPT関数の基本からSLOPE関数と組み合わせた予測モデルの作り方、売上予測やコスト分析での実務活用まで、同僚に教える感覚で解説します。
INTERCEPT関数とは?線形回帰の切片を求める統計関数
INTERCEPT関数(読み方: インターセプト関数)は、既知のxとyのデータから、線形回帰直線の切片(y軸との交点) を求める統計関数です。
中学校で習った直線の式「y = a + bx」を思い出してください。この式の a が切片 で、INTERCEPT関数が返す値です。ちなみに b(傾き)はSLOPE関数で求めます。
実務では、次のような場面で役立ちます。
- 売上予測: 広告費がゼロでも発生する基礎売上を算出
- コスト分析: 生産量ゼロのときの固定費を推定
- 損益分岐点分析: 変動費と固定費を分離
INTERCEPT関数の構文と引数
構文はシンプルで、引数は2つだけです。
=INTERCEPT( 既知のy, 既知のx )
| 引数 | 必須 | 説明 |
|---|---|---|
| 既知のy | 必須 | 従属変数(結果)のデータ範囲。例: 売上、コスト |
| 既知のx | 必須 | 独立変数(原因)のデータ範囲。例: 広告費、生産量 |
引数指定のルール
- 既知のyと既知のxは 同じ個数 でなければ
#N/Aエラーが返ります - 文字列・論理値・空白セルは自動的に無視されます
- 数値の「0」は計算対象に含まれます
- データが1組しかない場合は
#DIV/0!エラーになります
INTERCEPT関数の基本的な使い方
例1: 広告費と売上から基礎売上を求める
月ごとの広告費(A列)と売上(B列)のデータがあるとします。
| 月 | 広告費(A列) | 売上(B列) |
|---|---|---|
| 1月 | 10万円 | 120万円 |
| 2月 | 15万円 | 145万円 |
| 3月 | 20万円 | 175万円 |
| 4月 | 25万円 | 200万円 |
| 5月 | 30万円 | 230万円 |
広告費がゼロだったときの売上(基礎売上)を知りたい場合、次のように入力します。
=INTERCEPT(B2:B6, A2:A6)
結果: 約66(万円)
これは「広告を一切打たなくても月66万円の売上が見込める」という意味になります。既存顧客からのリピートや口コミ経由の売上と解釈できます。
例2: 生産量とコストから固定費を求める
同じ要領で、生産量を既知のx、総コストを既知のyに指定すれば、生産量ゼロのときのコスト=固定費 が求められます。
=INTERCEPT(総コスト範囲, 生産量範囲)
変動費と固定費を分離できるので、原価企画や値付けの根拠づくりに直結します。
SLOPE関数との組み合わせで予測モデルを作る
INTERCEPT関数の真価は、SLOPE関数と組み合わせたときに発揮されます。2つを組み合わせれば、任意のxに対するyを予測する式が作れます。
予測値 y = INTERCEPT(既知のy, 既知のx) + SLOPE(既知のy, 既知のx) * x
例えば、広告費を40万円にしたときの売上予測は次のように書けます。
=INTERCEPT(B2:B6, A2:A6) + SLOPE(B2:B6, A2:A6) * 40
これで「広告費40万円 → 売上約260万円」のように、意思決定に使える数字が一発で出ます。
なお、単純に予測値だけが欲しい場合は FORECAST.LINEAR関数 を使うと1行で済みます。使い分けの目安は以下の通りです。
- INTERCEPT + SLOPE: 切片と傾きを明示して予測式を見せたい(レポート・提案書向き)
- FORECAST.LINEAR: とにかく予測値だけ欲しい(ダッシュボード向き)
予測の信頼性を確認する:RSQ・CORREL関数
INTERCEPT関数で切片を求めても、そもそも xとyに線形の関係があるか を確認しないと予測はあてになりません。次の関数を併用しましょう。
- RSQ関数: 決定係数(R²)を返す。1に近いほど回帰直線の当てはまりが良い
- CORREL関数: 相関係数を返す。±1に近いほど強い線形関係がある
目安として、RSQが0.7以上なら実務で使える精度と言われています。0.5を下回る場合は、線形回帰自体が不適切な可能性があるため、散布図を描いて関係性を目視確認してください。
よくあるエラーと対処法
| エラー | 原因 | 対処 |
|---|---|---|
#N/A | 既知のyと既知のxのデータ数が違う | 両方の範囲を同じ行数に揃える |
#DIV/0! | データが1組しかない、またはxの値がすべて同じ | データを2組以上用意し、xに変動を持たせる |
#VALUE! | 引数にテキストや参照エラーが含まれる | データ範囲に不正な値がないか確認 |
| 予測が外れる | xとyが線形関係でない | RSQ関数で決定係数を確認し、必要なら別の手法を検討 |
外れ値に注意
線形回帰は外れ値の影響を強く受けます。1つだけ飛び抜けた値があると切片が大きくズレるため、INTERCEPT関数を使う前に散布図で外れ値の有無を確認する習慣をつけましょう。
まとめ:INTERCEPT関数は予測分析の第一歩
INTERCEPT関数は単体で使うより、SLOPE関数・RSQ関数・CORREL関数とセットで使う ことで真価を発揮します。
- 構文は
=INTERCEPT(既知のy, 既知のx)のシンプルな2引数 - 線形回帰直線の切片(y軸との交点)を返す
- 売上予測・固定費推定・損益分岐点分析で実務活用できる
- SLOPE関数と組み合わせれば予測式が作れる
- 使う前にRSQ・CORRELで線形関係の強さを必ず確認する
回帰分析は難しそうに見えますが、INTERCEPT関数を入口にすれば誰でも扱えます。まずは手元の月次データで試してみてください。
関数一覧
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